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(2017年4月)          


Extreme Prey
エクストリーム・プレイ

by John Sandford


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 ジョン・サンドフォードといえば「プレイ・シリーズ(ルーカス・ダヴェンポート・シリーズ)」や「ヴァージル・フラワーズ・シリーズ」、そして「キッド・シリーズ」などいくつかのベストセラー・シリーズがある中、本著は文庫本(ペーパーバック)が今月4日に発売されるプレイ・シリーズの最新作です(次作の単行本は、やはり今月25日全米発売)。これまでの舞台がほとんどミネソタやウィスコンシンの田舎であったのに対し、本著はアイオワを中心として物語が展開します。

 アイオワで幕を開けた後、いったんウィスコンシンのダヴェンポートの自宅(キャビン)へ舞台を移し、前作「ギャザリング・プレイ(2015年)」の後、もはや警察の仕事からは身を引いている彼のところにミネソタ州知事の右腕ニール・ミットフォードが電話を入れ、有無を言わさずアイオワへ呼び出します。というのも、ミネソタ州知事エルマー・ヘンダーソンは米大統領選の副大統領候補として立候補しており、その選挙運動との関連でダヴェンポートにある調査を依頼するためです。

 ヘンダーソンが危惧したのは、何者かが彼の対抗馬であるミカエラ・ボウデンを脅迫しており、その相手はボウデンの暗殺も計画していることが浮上したため、事態は急転します。暗殺を阻止しようとするものがいれば、それはボウデン本人でなくともターゲットを意味するのです。こうして政治絡みの暗殺がテーマとなる本著は、単行本(ハードカバー)が文庫本より1年早い去年(2016年)の4月に発売されているため、買った読者は実際の大統領選をリアル・タイムで体感しながら読んだことになります。また、日本人の読者であればアイオワの田舎町での選挙戦が疑似体験できるのではないでしょうか?

 あと、本著ではフラワーズやキッドといった他のシリーズの主人公がオールスター・キャストで登場します。ただし、これも「サンドフォード・ノベル」では珍しくありません。そもそも、フラワーズ・シリーズなどダヴェンポートの部下という設定でシリーズが始まり、その関係でフラワーズからダヴェンポートへ指示を仰ぐシーンとかはサンドフォード・ファンならお馴染みでしょう。いっぽう、キッド・シリーズも「ハッカーの報酬(1989年)」から数冊しか出ていませんが、最近はますます他のシリーズへ登場させたり、サンドフォードの頭の中で全体としてのイメージが膨らんできているようです。

 もう1つ、本著ではダヴェンポートが初めて警察官のバッジを付けずに事件と立ち向かいます。警察の仕事からは身を引いたことへ後悔はしていない彼も、さすがにバッジがないのは上便なようです。しかしながら、バッジがあるのとないのとでは喋る人間も喋らなくなると実感しつつ、もはや以前ほど法律の束縛を受けることがありません。立ち向かう相手は相手で田舎町の過激派でイラクからの帰還兵が混ざっていたり、やはりこれまでとやや違います。

 結局、シリーズ通算26作目で装いも新たに展開する本著では、ダヴェンポートが予想していなかった新しいポジションの申し出を受けるのですが、そうなってくると次作「ゴールデン・プレイ」も今から楽しみです。


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(2017年4月)

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