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(2017年11月)          


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オリジン

by Dan Brown


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 ダン・ブラウンの新作は「インフェルノ」に次ぐ「ロバート・ラングドン・シリーズ」第5弾です。ハーバード大学の象徴学者ラングドンが今回訪れるのは、スペインのビルバオにあるグッゲンハイム美術館です。アメリカのソロモン・R・グッゲンハイム財団が設立したグッゲンハイム美術館の一つであり、近現代美術が専門というだけで、これまでの4作とはやや趣(おもむき)が違います。

 科学の概念を変えるという新発見の発表会に出席するためビルバオ・グッゲンハイム美術館へ到着したラングドンは、自分がなぜそこにいるの知らされていません。それは他の数百人のゲストも同じです。彼らが受け取った招待状へは、ただ「土曜日の夜。そこに来てほしい。私を信じて」としか書かれていませんでした。たったそれだけの招待状が世界中のVIPにスペインへ駆けつけさせたホストであるエドモンド・カーシュは、ラングドンにとって20年ほど前のハーバード大学で最初の教え子の1人でもあるのです。そのカーシュが人類の存在の基本的な疑問へ答える重大な発表とは何か?

 続いて登場するのが、見知らぬ街のパブでトニック・ウォーターのグラスを傾ける海軍提督ルイス・アヴィラ、非常にミステリアスな人物です。彼はいったい何者なのか?・・・・・・そこで再びビルバオ・グッゲンハイム美術館へ戻り、イベントが始まるとラングドンと数百人のゲストは完全にプレゼンテーションへ魅了されます。しかし、「綿密に編成された夕べ」は突如としてカオスの渦に飲み込まれ、カーシュの貴重な新発見が失われる危機と直面するのです。その結果、ラングドンは美術館のディレクター、アンブラ・ビダルとビルバオからの脱出を余儀なくされます。

 カーシュの秘密を解き放つパスワードを見つけるべくバルセロナへ逃げた2人は、極限的な宗教と隠された歴史の昏(くら)い廊下を探索しつつ、スペイン王宮そのものから発していると思われる全知の力を持った敵を避けねばなりません。そして、現代美術と謎のシンボルが描かれたトレイルで、ラングドンとビダルはカーシュの衝撃的な新発見と結びつく最終的な手掛りを発見するのです。

 長年、我々の目から逃れてきた驚くべき事実とは?・・・・・・相変わらず読み応えのある「ダン・ブラウン・ノベル」ですが、ロバート・ラングドン・シリーズのピークはやはり「ダ・ヴィンチ・コード」でしょう。それと比べると本著を含めた他の4作が見劣りするのはしかたありません。ただ、新作を待ち望んでいたブラウン・ファンが満足できる内容であることは確かです。こいつが悪人だと思いながら読んでいると、いやこっちだというように、しばらくあっちやこっちや推理を楽しみながら、最後はそういうことをやめて物語の流れに身を委ねてみると、なかなか楽しい読書を満喫できます。邦訳が出るのはもう少し先だと思いますが、ブラウン・ファンはぜひお見逃しなく!


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