怪傑ゾロ
日本をはじめ世界中で大ヒットしたTVシリーズ“怪傑ゾロ”が、スティーブン・スピルバーグの手で映画化されることになりました。主役はスペインのマッチョ俳優アントニオ・バンデラス("エビータ")が決定しているほか、共演者は“サバイビング・ピカソ”での熱演が光ったアンソニー・ホプキンスが候補にあがっており、彼にぞっこんのスピルバーグはさっそく脚本をロンドンの彼の元へ送るなど獲得工作に乗り出しています。ローレンス・オリビエ("ハムレット")や故リチャード・バートン("クレオパトラ")同様、女王から「サー」の称号を与えられたイギリス人俳優ホプキンスの役柄は、バンデラス扮する仮面をつけた若き正義の使者ゾロへサーベルさばきを伝授する年老いたゾロと、椎間板ヘルニアの手術を受けたばかりの彼にとって至難の役作りとなりそうです。芥川龍之介の原作を脚色した“リメインズ・オブ・ザ・デイ”での優しい執事役から、アカデミー賞を受賞した“羊達の沈黙”の狂気の殺人鬼まで、幅広い演技力が専門家筋で評判の彼は、今月上旬カナダで新作“ブックウォーム(読書家)”を撮り終え、いったんイギリスに戻った後、前述の“・・・ピカソ”の宣伝キャンペーンが待ち受けています。製作スタジオであるワーナーブラザーズの専用ジェットでスェーデン、スペイン、イタリア、フランス、ドイツと飛び回る予定です。そして、今売り出し中のバンデラスとのコンビ・・・・・・実現すれば完成が待ち遠しい作品ですね!
キング・プロジェクト
今やハリウッドのキング的存在となった感のあるスティーブン・スピルバーグ監督が、ついに自社ドリームワークス・スタジオ第1回監督作品を発表し話題を呼んでいます。有名なレコード・レーベルだけでなく、“ヴァンパイアー”などの映画の製作者としても有名なデビッド・ゲフィンと、ディズニー繁栄の立役者ジェフリー・キャッツェンバーグとのパートナーシップで創設したこのスタジオ、新バットマン役のジョージ・クルーニー主演のアクション作品“ピースメーカー”やドキュメンタリー・タッチのTV犯罪ドラマ“ハイ・インシデント”製作と出足好調なところへ、いよいよのエース登板で賑わっているようです。現在“ジュラシック・パーク”の続編“ロスト・ワールド”を撮影中のスティーブンのハートを射止めた企画は、同監督作品のアカデミー賞映画“シンドラーズ・リスト”を書いた脚本家スティーブ・ザイリアンによる“アミスタッド”という作品で、原題の“ブラック・ミュートニー(黒い反乱)”が示すとおり、1839年に黒人奴隷船アミスタッドで起こった史実に基づいています。シンクという勇者の率いる奴隷40人は反乱を起こしアフリカへ戻ろうとするのですが、結局捕らえられて建国時代の米法に従い裁かれ、前大統領クインシー・アダムスの援助で最高裁まで持ってゆくまでのいきさつを描いた感性溢れるドラマ。“シンドラー・・・”でユダヤ人のホロコーストの苦しみを壮大に描いた黄金コンビが、今度は奴隷時代の黒人弾圧の歴史をどう描くかが見物でしょう。一方、キングといえば、大ヒットしたディズニーのアニメ映画“ライオン・キング”がブロードウェイ・ミュージカルとして舞台化され、来年の秋からブロードウェイのメッカ、アムステルダム劇場で公演されることになりました。アニメ・バージョンで大好評だったエルトン・ジョンとティム・ライス作詞作曲の音楽へ加え、ミュージカル用の新曲やアニメ映画に触発されて完成された“リズム・オブ・ザ・プライド・ランド”アルバムの中からも選曲されるなど、曲目は15曲にものぼるそうです。“ジャングル大帝”のマネと非難されながら、大人も感激する娯楽映画として大成功した“ライオン・キング"、あのシンバが舞台で蘇る日が待ち遠しいですね!
小粒の強み
オリバー・ストーン監督("プラトゥーン")作品“Uターン”の撮影が、主演のニック・ノルティー("マルホーランド・フォールズ")、ショーン・ペン("デッドマン・ウォーキング")、ジェニファー・ロペス("ジャック")を中心として順調に進んでいます。出演予定だったシャロン・ストーンはギャラ交渉決裂で不参加ながら、1、500万ドルという低予算企画でこれだけのキャストが集まったのは、ストーン監督の名前だけでなく脚本の充実度を物語るものでしょう。ニックによれば、大物俳優もギャラを妥協しない限り中身の濃い作品と巡り会えない現状らしく、彼が製作費600万ドルの“QアンドA”に出演した時、ヒット作“48時間”で共演して以来の親友エディー・マーフィーは「自分も小規模でいいから納得のゆく作品に出てみたい」と漏らしたそうです。ただ、「この映画の予算は君のギャラより安いんだぜ」と言ったニックへ、エディーは返す言葉がなかったとか。僕自身、思うのは、大手スタジオが6、000万ドル規模の映画を製作する場合、スターや有名監督への報酬を先行させる結果、どうしても内容は薄くなってしまうケースが多く、売れっ子スター達も自分の才能の幅を広げるという意識より、ついギャラの額面が先行しがちです。当のニックは素晴らしい映画“プリンス・オブ・タイド”でバーバラ・ストライサンドと共演して絶賛を浴びて以来、やはり数本の不作高額予算映画に出演していますが、最近は小規模ながら内容のある作品へ参加して気をはいています。製作費530万ドルのドラマ“マザーナイト(母なる夜)”の後、同じく530万ドルで製作されたアラン・ルドルフ監督作品“アフターグロー(残光)”をカナダで撮り終えたばかり、現在も500万ドルクラスの企画“アフリクション(苦悩)”をポール・シュレーダー監督("ヤクザ")と製作準備に入っています。僕たち独立プロデューサーにとって、ニックのような考えのスターが増えてくれることは大きな励みです。
ギブソン情報
ニューヨークのタクシー・ドライバー
注目を浴びた新進監督エド・バーンズ作品“彼女は最高”で監督自らタクシー運転手を演じたり、最近公開されたスタローン主演作品“デイライト”では市のタクシー・リムジン協会のイメージ・アップと、このところニューヨークのタクシーが何かと話題になってきました。そこへ今度は、メル・ギブソンが現在撮影中のアクション・スリラー“陰謀のセオリー”でFBIの陰謀に巻き込まれるタクシー・ドライバーを演じ、ニューヨーカーの目を奪っています。役作りのため彼は数日間タクシーを運転し、実際に客を拾ったものの、すぐ正体がバレてトレーニングにならなかったそうです。
由緒ある裸馬レース
昨年大成功を収めた歴史大作“ブレイブ・ハート”の影響か、メルは現在、イタリアのシエナに伝わる歴史的な裸馬レース“パリオ”という題材へ魅せられているらしく、今夏家族と“ブレイブ・ハート”の撮影監督を担当したジョン・トール同伴で現地を訪れ、この1、000年の歴史を持つ由緒あるレースを見学しました。シエナの街の「ピアザ・デル・キャンポ」という赤レンガ造りの広場で行われるこのレースは、近隣の17村が裸馬レースで競争する熱気溢れる行事で、彼が15年来暖めてきた構想だそうです。
ダンベル代わりのオスカー2個
ロサンゼルスのマリブ海岸に住むメルが肝を冷やす事件がありました。というのは、数ヶ月前の山火事でマリブが脅かされた時、ちょうど家族はニューヨークへ撮影見学に来ていたため無事でしたが、念のため近所の友人に頼んで大事な家財道具や写真などを救出してもらったところ、ハッと気がつくと“ブレイブ・ハート”で受賞した作品および監督のオスカー像2個を頼み忘れていたのです。結局、山火事はギブソン家を逸れて事なきを得たものの、以後メルは1個8オンス(約230g)のオスカーをダンベル代わりに身近に置いておく、とジョーク半分で言っています。
大洪水予報!
今週撮影を終了したばかりの“ハードレイン”のセットでは、主演のクリスチャン・スレーター("ブロークン・アロー")、モーガン・フリーマン("セブン")や共演のランディー・クエイド("ID4")が、数ケ月も続いた「水浸し」の毎日から解放されると気勢を上げています。というのも、キャストはロサンゼルス近郊の砂漠の街パームデールにあったB-1爆撃機工場の跡地へ作られた、フットボール競技場ほどある深さ1.5メートルの撮影用タンクの中か上で毎日暮らした上、ユニバーサルの大失敗作“ウォーター・ワールド”の二の舞とならないよう、製作スタジオのパラマウントからの厳しい条件下でのスケジュールだったからです。ヒット作“スピード”で一緒にプロデュースして以来のコンビ、マーク・ゴードン("ブロークン・アロー")とイアン・ブライス("ツイスター")が製作するこのイベント映画は、現金輸送車強盗事件と時を同じくして起こる大洪水を背景にしたスリラーで、主演のクリスチャンがジェット・スキーで半分水没した高校を駆け巡るシーンなど、目を見張るスタントもいっぱいあります。もっとも恐怖だった撮影シーンは、クリスチャンの入った牢屋が洪水のため水没してゆく場面。だんだんとタンクの中へ沈められるセットの牢屋で迫真の演技を見せたクリスチャンは、過酷な水中撮影をこなせたのも2年前からの禁煙のおかげと、健康体に感謝していました。
Merry Christmas
from Hollywood! |
(1996年12月16日)
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