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(1997年11月16日)          




マラソン・ロケ

トム・クルーズ、ニコール・キッドマン夫妻主演のスリラー、“アイズ・ワイド・シャット”といえば、昨年10月のクランクイン以来、1年近く撮影が続いています。極秘のベールで包まれたロケは、さらに長引きクリスマス寸前までかかりそうな気配です。“2001年宇宙の旅”の名監督スタンリー・キューブリックが“フル・メタル・ジャケット”から10年ぶりで監督するこの映画、クルーズ夫妻演じる精神科医夫婦と2人の患者との異様な関係を描いたサスペンス映画で、キューブリックの厳格な秘密主義によって詳しい内容は一切不明。大道具担当スタッフとして参加する友人からのEメールだと、神経質なほどの秘密厳守令が布(し)かれたセット内はいつも緊張感が張りつめ、製作スタジオのワーナーブラザーズ重役へも、読み終えた脚本を送り返すよう通達する徹底ぶりだといいます。ばかりか、トムとニコールはアカデミー賞授賞式とダイアナ妃の葬式に出席した以外、ロンドンのパインウッド・スタジオへ缶詰状態の撮影を続けている上、この映画の編集が完全に終了するまで、2人は他の作品との契約をキューブリック監督から禁じられているそうです。新人監督(ニュー・ブリード)が台頭するハリウッドで頑固なまでに自分のスタイルを通し、なお多くの大スターはその作品へ挙(こぞ)って出演を熱望するキューブリック監督、この新作でどんな世界が見られるのか楽しみですね! なお、内部情報によれば今回の共演で気をよくしたトムとニコールは、1942年度作“アイ・マリード・ア・ウィッチ”の現代版リメイクをプロデュースおよび共演の構想中だとか。往年のスター、フレデリック・マーチが主演してヒットしたこの作品、内容は魔女裁判で有名なマサチューセッツ州セーラムを舞台に、魔女の疑いをかけられて焼き殺された女性とその父親が、タイム・トラベルの末、殺人者の子孫へ復讐を遂げるというもので、現在ソニー傘下のコロンビアが企画中。





ハリウッド・オリジナル・スニーカー

世界的に有名なスポーツ・シューズ、アパレル企業として君臨するナイキやリーボックは、その独自のロゴを掲げてスニーカー市場を席巻していますが、そこへ殴り込みをかけたのは何と大手映画スタジオ2社だから驚きます。まず、ワーナーブラザーズが自社製作のアクション作品“スティール”で主演したNBAロサンゼルス・レイカーズのスーパースター、シャキール・オニールと、彼がスポンサー契約を交しているリーボックからの認可付きで契約、彼のイメージを前面に押し出したWBスポーツ・ブランドをデビューさせました。 価格は写真のバスケットボール・シューズが39ドル95セントと、100ドル以上の商品がザラで高騰する一方のスニーカー戦線へ、破格のディスカウント作戦で参戦する構えです。販売網も比較的安い商品を扱う庶民的な流通チェーン“ターゲット"などを主体にマーケッティングを繰り広げ、スニーカー・シェア40パーセントを誇るナイキの牙城へ食い込む戦略と見られます。その他にも、同じくNBAニューヨーク・ニックスのエース、パトリック・ユーイングやメジャー・リーグ、シカゴ・ホワイトソックスの主砲アルバート・ベルなどとも契約し、彼らのイメージを活かした格安商品戦略でスポーツ界への進出を企てるWBスポーツです。一方、昨年9月に史上最高額の3億5千万ドルでメジャーの名門ロサンゼルス・ドジャースを購入、フォックス・ネットワークで好調なNFL試合のTV中継と2本立てで本格的なスポーツ・エンターテイメント業へ挑むのは、ニューズウィーク社が抱えるフォックス・スポーツ。その子会社である20世紀フォックス・スタジオは最近“ティン・カップ"、"プリティー・ウーマン"、"沈黙の艦隊”などの大物プロデューサー、アーノン・ミルシャンと組み、15年間の映画製作契約を2億ドルで交し、注目を集めています。というのも、ミルシャン氏の製作会社ニュー・リージェンシー・プロダクションがスポーツ用品メーカー“ピューマ”の筆頭株主であることから、20世紀フォックス製作の映画、特にスポーツ関係の映画へピューマ製品を大幅に登場させるのは間違いありません。プロダクト・プレイスメント(商品設定)という新しい分野の事業が誕生したぐらい、映画の場面へ商品をどう登場させるかは重要ですが、フォックス社とミルシャン氏の提携は今までナイキ("バック・トゥー・ザ・フューチャー")やリーボック("エージェント")に独占されていた映画関連スポーツ商品市場への進出を見越した契約だろうというのが、もっぱらの噂です。ところで、なぜ大手スタジオが急にスポーツ商品市場へ色気を出し始めたかといえば、これまたNBAの超スーパースター、マイケル・ジョーダンの影響抜きには考えられません。彼が主演したワーナー製作“スペース・ジャム”はアメリカだけで9千万ドルの興業収益を上げ世界的なヒット作となりましたが、その関連商品は全米チェーンのワーナーブラザーズ・ショップ(先日、東京ショップがオープン)で映画の売上にも増して当たり、その収益たるや何と10億ドルという凄まじさ。これに目をつけたのがWBスポーツとフォックス・スポーツというわけです。加えて、アパレルを本業とするトミー・ヒルフィガー、ドナ・カランといった流行りのブランドまで進出し始めたスニーカー業界は戦国時代の感があります。「スポーツこそエンターテイメント」の時代なのでしょうか?





待望のLW4!

以前、お伝えしたとおり、メル・ギブソンがようやく重い腰を上げた“リーサル・ウェポン4"、その後、企画のほうは着々と進んでいます。精神不安定ながら陽気な独身の白人刑事マーティンと引退間際のベテラン黒人刑事ロジャー、この不均衡なコンビの巻き起こすハイ・パワー・アクションを売り物に、ハリウッドきってのドル箱バディー映画となったこのシリーズが最後にお目見えしたのは1992年の第3部、数年振りのカムバックとなれば、やはりスタッフも気合いが入っているようです。監督は勿論リチャード・ドナーが続投し、脚本は“暗殺者”で注目されて以来、メルの最新ヒット“陰謀のセオリー”や現在ヒット中の“L・Aコンフィデンシャル"を手がけ、いまハリウッドで最もノッてるブライアン・ヘルグランドが担当。出演は相棒役のダニー・グラバーをはじめ、第3部でお馴染みの“お喋りのチビ男”ジョー・ペッシ("カジノ")、女性刑事レネ・ルッソ("バディー")も勢揃いします。そこへ売れっ子コメディアンのクリス・ロック("ビバリーヒルズ・ニンジャ")を刑事役で迎え、その刑事が(第1作で誘拐された)ロジャーの娘を妊娠させてしまうサブ・プロットや、前作で恋に落ちたローナ(レネ)とはベビーが誕生して父親業を兼ねるマーティンなど、今までと一味違う展開になるもよう・・・・・・オリジナルから10周年を記念して来年公開予定の“リーサル・ウェポン4"、プロデュースも兼ねるドナー監督は何と3人の脚本家へ腕を競わせ、その中のいい部分だけを拾った上でヘルグランドへ最終稿を依頼する凝りようです。はみ出し刑事メルのパパぶりが見ものの“LW4”は、いよいよ年明けの1月8日クランクインします。なお、メルといえば現在シカゴで撮影たけなわのパラマウント製作“ペイバック”も、やはり“陰謀の・・・”で意気投合したブライアンが書いたギャング映画です。





コンビ復活、その2

ジョン・トラボルタ
 
ロバート・デュバル

“LW(リーサル・ウェポン)4”とは、また違ったクールなコンビが復活します。昨年の秀作“フェノミナン”で共演し、渋い演技を魅せてくれたジョン・トラボルタとロバート・デュバルは、“シンドラーのリスト"、"ミッション・インポッシブル”そして次期ドリームワークス作品“アミスタッド”などの脚本家スティーブ・ザイリアンが脚本監督する裁判ドラマ“シビル・アクション”で再び共演することになりました。汚染廃棄物処理を巡る訴訟でジョン扮する傷害専門弁護士は大企業と真っ向から立ち向かい、相手側の辣腕顧問弁護士を演じるのがデュバルです。当初、この役柄はポール・ニューマンやマーロン・ブランドへ打診されながら、結局デュバルで落ち着きました。他にもH・ウィリアム・メイシー("ファーゴ")やキャサリン・クインラン("ブレイクダウン")などの名脇役が出演し、先月(10月)の21日からロサンゼルス、ボストンで撮影中。何かと話題の多い主演2人の近況をお知らせすると、まず自ら自家用飛行機のパイロットで息子をジェットと名付けたほど飛行機ファンのトラボルタは、最近プロペラ機が主役の寓話を出版して多才振りを発揮しています。また、20年来の友人である女性歌手カーリー・サイモンの最新アルバム“フィルム・ノアール”で、彼女と見事なデュエットを披露したばかりか、グラミー賞やオスカーも受賞したカーリーの新しいミュージック・ビデオ“トゥー・スリーピー・ピープル”へ出演するかもしれません。ますます幅を広げる彼の芸術性が、このところ注目の的です。ちなみに、この“フィルム・ノアール”アルバムは、マーチン・スコセッシ監督("カジノ")が推進する“壊滅寸前のクラシック映画救済運動”でも一役買う予定。一方“ゴッドファーザー”でファミリーの専属弁護士を演じて以来、“テンダー・マーシー”のオスカー受賞など、名優の名を欲しいままにしてきたデュバルは、500万ドルの自費を投じて“アポストル”を製作し、最近オクトーバー・フィルムと600万ドルで配給契約を結びました。彼が13年間暖めてきたこのペット・プロジェクトは、過去のある牧師が再び自分自身の評価を取り戻す課程の人間ドラマで、どのスタジオからも敬遠された曰くつきです。それだけに自力で製作した喜びもひとしおらしく、勢いづいた彼は他のペット企画でも積極的な動きを見せています。1995年までアルゼンチンのタンゴ・ダンサーと結婚していたデュバルが、長年作りたいと考えてきたタンゴ映画を自らの主演監督で製作するほか、“アポストル”で共演した親友のビリー・ボブ・ソーントン("スリング・ブレイド")と大物カントリー・シンガー、マール・ハガードの自伝映画を企画するなど、今年66歳のベテラン俳優と彼の映画製作会社ブッチャーズ・ラン・プロダクションは、このところ目を見張るほど活気が漲(みなぎ)っているようです。





銀幕 vs ブラウン管?

日本でも話題のTV番組“Xファイル”でクールなFBIエージェントを演じるデビッド・デュカブニーの映画デビューとして注目された“プレイング・ゴッド”は、先月(10月)末の封切り以来、期待はずれの悲惨な結果で終わっています。ディズニー傘下のタッチストーンが自信満々で公開し、デュカブニー自身TVのトーク・ショーなどで大々的なPRに務めたにもかかわらず、劇場ごとの平均収益は1,400ドルという悲惨な状況でした。最近、人気女優のティア・レオーニ("バッドボーイズ")と電撃結婚し、製作会社がロケ地をカナダのバンクーバーからティア主演のTV番組を収録するロサンゼルスへ移さなければ“Xファイル”は降りるなどと息巻いていましたが、思惑外れのスクリーン・デビューに考えを変えるかもしれませんね。同じく、世界中で放映されている人気TVシリーズ“ヘラクレス/伝説の冒険”の主演ケビン・ソーボも、初主演映画“カル/征服者”は見事にコケました。TVの人気が、そのまま映画で通用しないことを、今更ながらハリウッド映画界へ痛感させるようなエピソードです。新バットマンに抜擢され、ドリームワークス初の映画“ピースメーカー”で主演するジョージ・クルーニーも人気TV番組“ER/救急病院”出身なのは有名ですが、ルックスといい演技力といいスターの素質十分な彼をして、いきなりスーパー・スターダムへのし上がるまでには至ってません。製作予算7,000万ドルの話題作“ピース・・・”の国内収益が、期待を大きく下回る3,600万ドル前後という結果は、それを物語っています。“茶の間”で人気があっても、同じ俳優を見るため、わざわざお金を出して劇場へ足を運ぶかどうかは別問題です。'80年代にハワイの探偵シリーズ“マグナムP・I”で人気絶頂だったトム・セレック("ミスター・ベースボール")が、映画界では今いち大スターと成りきれず、現在アメリカ一の人気番組“フレンズ”の主演6人全員が、それぞれ映画デビューを飾って失敗した最近の例もあります。もちろん失敗ばかりとは限らず、同じ探偵もので“こちらブルームーン探偵所”出身のブルース・ウィリスが“ダイハード”というハマリ役に巡り会い一躍スーパースターとなり、ロビン・ウィリアムスは("ミセス・ダウト")'70年代の人気コメディー番組“モーク&ミンディー”の変な宇宙人役から独特な喜劇スタイルで大スターへ転身しました。“Xファイル”ファンの1人として、淡泊な中にどことなくクールさを漂わせた俳優デビッド・デュカブニーが、これに懲りず映画スターへの道を突き進んで欲しいものです。ちなみに、彼と相棒ジリアン・アンダーソン主演の映画版“Xファイル”のほうは撮影も順調なようで、毎年“クリフハンガー(断崖絶壁に立つスリル感)”が評判のTVシーズン最終回の続きから映画は幕を開ける洒落た仕組みだとか!




(1997年11月16日)

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