Aリスト俳優主演のビッグ・バジェット(大型予算)企画といえば、従来スタジオ重役が涎(よだれ)を垂らすほど魅力的な事業でしたが、最近は大作低迷の影響からか、その黄金プロジェクトも企画段階で没になる傾向さえ出てきています。そこで、今回の新企画情報は座礁中の企画も含めてお届けしましょう。 ![]()
(1998年1月16日)
新企画情報
ウィズアウト・ピアー/タイガー・ウッズ物語
ケーブルTV局ショータイム製作、人種差別や最愛の父親の病気と闘いながら、スーパースターの地位を築いたゴルフ界の風雲児の自伝映画です。一昔前世界中で話題騒然だったTVシリーズ“ルーツ”で奴隷クンタ・キンテを熱演したラバー・バートン監督の下、1月20日からサンディエゴでクランクイン。
アイ・アム・レジェンド
このアーノルド・シュワルツェネッガー主演作は“テルマ&ルイーズ”や“ブラック・レイン”などの名作を手がけたリドリー・スコット監督の本格的アクション映画という下馬評でしたが、“バットマンとロビン”に始まり“ファーザーズ・デイ"、"マッド・シティー”と連続して転け続ける大作に悩むワーナーブラザーズ・スタジオは、1億ドルを越える予算と“老いたアクション・ヒーロー”アーノルドのスター・パワー後退を懸念し、2,000万ドルの予算カットを指令しました。それをきっかけに、妥協を許さないスコット監督の熱も冷め・・・・・といった状態で、現在宙に浮いたまま。大株主であるタイム・ワーナー社からのプレッシャーもあり、起死回生のヒットが欲しいWBスタジオだけに特に慎重なのかもしれません。
マトリックス
キアヌ・リーブス、ローレンス・フィッシュバーン("イベント・ホライゾン")主演のSF映画。200年後の地球を舞台に、キアヌ扮する救世主が興廃した世界を救う冒険アクション。2月初旬オーストラリアでクランクインの予定です。
![]()
![]()
マーシャル・ロー
爆弾テロに怯えるニューヨーク、ブルックリンへ派遣された陸軍士官(ブルース・ウィリス)の勇気を描いた20世紀フォックス製作のアクション映画。ブルースはその他、患者である少年犯罪者に撃たれたことから、自分の人生を見つめ直す、問題児専門の精神分析医役を演じる“シックス・センス”へも興味を示しています。
エイジ・オブ・アクエリアス
ハリソン・フォード(写真中央)主演、“フィールド・オブ・ドリームス”のフィル・アルデン・ロビンソン脚本監督、“イングリッシュ・ペイシェント”のクリスティン・スコット・トーマス共演ということで大変期待されながら、レバノンやボズニア戦線で活躍する人命救助部隊のドラマという映画内容の地味さの割には高額な9,000万ドルという製作予算も手伝って、遂に暗礁に乗り上げてしまいました。“デビル”の前例の如く、自分の役を大々的に書き換えてしまうハリソンだけに、製作スタジオのユニバーサルとしては、かつての“ウォーター・ワールド”の悪夢が消え去っていないのかも・・・・・・ハリソンといえば、ハリウッドの騒音を嫌い、ワイオミング州ジャクソンホールという片田舎にある350万平方メートルの広大な牧場に家族と住んでいるので有名ですが、彼の妻であり、10歳の息子と7歳の娘の母親であるメリッサ・マチソン(写真左)が、ハリウッド有数の脚本家であることは余り知られていません。彼女は昨年末に公開されたスコセッシ監督の意欲作“クンダン”では、脚本を担当しただけでなく共同製作者としても参加し、チベットの街を再現したロケ地モロッコと子供達が学校に通うニューヨークを往復するというハード・スケジュールをこなしたスーパー・ウーマンでもあるのです。ちなみに、1982年に永遠の名作“E・T”を書いたメリッサは、スピルバーグ監督との固い約束で続編を絶対に書かないそうです。
ハロウィーン7/リベンジ・オブ・ローリー・ストロード
今では“トゥルー・ライズ”や“ワンダとダイヤと優しい奴ら”などの好演が光るジェイミー・リー・カーティス(写真右)も、17年前は「スクリーム・クイーン」のニックネームどおり“ハロウィーン2”のヒロインでした。そのローリー役が今では18歳の息子のいる母親で、名前を変え、私立女子校の寮長をしている設定のホラー映画。昨年大ヒットした“スクリーム”とその続編の成功に便乗した感もありますが、ともあれ中年美女カーティスの「叫びぶり」が見ものです。
世界で大ヒット中の“トゥモロー・ネバー・ダイ”は、アルバート・ブロッコリーがイアン・フレミングの人気小説を映画化した“007は殺しの番号”以来、彼のメガ・フランチャイズ・シリーズ第18作、35年目を迎えます。一時はアクションのマンネリ化やティモシー・ダルトンの不評で低迷していたのが、最近はピアース・ブロズナンが好調であるばかりか、新参ソニー・スタジオまで新ボンド・シリーズを企画中。この調子では、エージェント007号がお気に入りのウォッカ・マティーニを飲み続ける日々は、まだまだ続きそうです。ソニー陣営の場合、ショーン・コネリーへ3度目のカムバックを誘いかけると同時、“ID4”そして今夏最大の期待作“ゴジラ”の監督製作チーム、ローランド・エメリッヒとディーン・デブリンにも食指を伸ばしているとか・・・・・・当然ながら、世界中の007ファンには、わが「ハリウッド最前線」のウェブマスター、ヨコチンのように初期のオリジナル小説から馴染むベビー・ブーマー層からサイバー・エイジのヤング・ボンド・マニアまで幅広く、インターネット上でも面白いボンド関連ページは数多くあるので、僕が検索した興味あるサイトをいくつか紹介したいと思います。まず、映画のハイライトや写真だけでなく、自ら007になるロール・プレイング・ゲームや映画で登場する製品各社(BMW、エリクソン携帯電話など)へのリンクなどを楽しめる豪華版オフィシャル・サイトは特にお勧め。製作スタジオであるMGM/UAのページは、ボンド関連商品のオンライン販売中心というイメージで、少々ガッカリしました。映画スタジオが多いL・A郊外バーバンク市にあるイアン・フレミング財団のページでは、生みの親フレミングの足跡や、1968年ディズニーが映画化した彼のもう1つの童話名作“チキ・チキ・バン・バン”を捩(もじ)って“ミスター・キス・キス・バン・バン”と題したウェブ・マガジンを読むこともできます。個人ページで面白いのはニューヨーク州バッファロー市の大学生ナビン・ジャインのサイト、マルチメディア・ツールを活かしたページでありながら結構厳しいブロズナン批判があったり、「今のボンド映画は昔の007映画の'90年代風パロディーにすぎない」などというイギリス人から寄せられたコメントもあって、やや趣(おもむき)の異なるボンド・マニア・ページといえるでしょう。本格的マニアの喜びそうなのは、歴代の007映画で見つけた数々の失敗やミス、NG、エラー、誤った情報などを満載したジェームス・ボンド・ムービー・フォルト・ページや、ボンド不可欠の小道具である自動車兵器専門ページ、そして興味深いトレビア・クイズで自分の“007度”を試せるクイズランド・ボンド・トレビア・クイズなどがあります。そこでトレビア・クイズを2つ・・・・・・その1:「007号ジェームス・ボンドの正式な軍位は?」、その2:「ジェームス・ボンドの名前の由来は?」(答はコラム最後を見て下さい)・・・・・・また、一番ユニークなのが「地理30071:ボンド映画の各国々に及ぼすインパクトと経済地図」、「ビジネス30074:ボンド映画の世界的マーケティング」、「英語300710:ボンド映画と007小説の比較」と、単位を取るためのれっきとした大学講座を持つ東カリブ海大学のページで、そこにはフレミングがジャマイカをこよなく愛し、多くのボンド・シリーズを生み出してきた地という背景を窺(うかが)えます。ともあれ、これだけいろいろなボンド・マニア・サイトがあるということは、我々がたとえこの世を去っても“女王陛下の秘密諜報部員”だけは次世代の間で脈々と生き残ってゆくかもしれませんね!?
ボンド・マニア
ファッション界は西風?
ジョン・トラボルタが主演した1980年のヒット作“アーバン・カウボーイ”以来、長らく鳴りを潜めていたカウボーイ・ファッションながら、今春のパリコレのトレンドや今年公開予定のウェスタン映画からすると、久しぶりに復活の兆しが見えます。まず、今話題の過激派英国人デザイナー、アレキサンダー・マックイーンが、何とカントリー歌手ドリー・パートン("マグノリアの花たち")をテーマに創作したという“ホルスター付革スカート”をジバンシーの新春コレクションで発表、それに感化されたのか、バレンチーノも純白の“フロンティア風ウェスタン・ドレス”を披露し、ニューヨーク・ファッション界をリードするアナ・スイまでが、トレードマークの“ロックンロール・デザイン”へカウボーイ調のバンダナ・プリントを取り入れるというほどのフィーバーぶりです。一方のハリウッドでも、ロバート・レッドフォード(写真)主演のモダン・ウェスタン映画“モンタナの風に抱かれて”をアウトフィット(衣装担当)したラングラー社が、ジーンズ・ファション復活に熱を入れているほか、'70年代の人気TV・ウエスタン“ワイルド・ワイルド・ウェスト”の映画版でウィル・スミス("MIB")と共演するジョージ・クルーニー("ピースメーカー")などは、創業120年という老舗ジャスティン(ケビン・コスナー主演“ポストマン”もアウトフィット)のカウボーイ・ブーツを特注し、今から主演のTV番組“緊急救命室”で履くという気の入れようです。大ヒットした“MIB”でウィルとトミー・リー・ジョーンズがかけたレイバンのサングラスが売れ行き倍増したことを考えると、これもヒット間違いなしの“ワイルド・・・”の“ブーツ効果”は案外大きいかもしれません。こうしたトレンド性を裏付けるかのごとく、人気バンドU2のエッジ、カントリー・ウェスタン歌手シェリル・クロウのカウボーイ・ハット、そして黒人グループ、ソルト&ペッパーのカウガール・ファッションと、音楽界もウェスタン・ファッションの台頭が目立ってきています。偶然にも、西部劇の代名詞“ロデオ”で始まるハリウッド・スター御用達のファッション街“ロデオ・ドライブ”、今年は「アーバン(都会派)ウェスタン」ファッション旋風が巻き起こりそうな気配です。
映画音楽といえば、主題歌や挿入歌、そしてテーマ・ミュージックを盛り込んだサントラ版を思い浮かべますが、それ自体、脳裏に残る緊迫場面、感涙を呼んだロマンチックなシーン、また壮大なクライマックスでのオーケストラを駆使した音楽効果で映画を印象づける貴重な芸術といえます。バックに流れる音楽の善し悪しで、観客の感情は左右されるばかりか、映画という媒体のビジュアルな要素を、より一層引き立ててくれるのも、その場面に適したミュージックを生み出してくれる作曲家のおかげというわけです。そんな1人がマイケル・ケイマン、名作“ピンク・フロイド/ザ・ウォール(1982年)”や“未来世紀ブラジル(1985年)”をはじめ、“ダイ・ハード”シリーズや“リーサル・ウェポン”シリーズなどのアクション作品から“ロビン・フッド(1991年)"、"三銃士(1993年)”などの歴史もの、そして“101(1996年)”や“ジャック(1996年)”といったコメディー映画まで、幅広い音楽センスで作品を盛り上げているハリウッド有数の映画音楽作家です。高校音楽教育の内情を描いてヒットした感動作“陽のあたる教室(1995年)”の音楽担当をきっかけに、彼は全米の高校へ楽器を寄付する運動が趣旨の“ミスター・オランダの陽のあたる教室基金”を設立したり、映画業界を基盤とした音楽教育の普及にその素晴らしいビジョンで貢献しています。現在、ケイマンの取り組んでいる映画は“リーサル・ウェポン4”と“アベンジャーズ”ですが、特に後者は世界中の(40代後半から50代初めの)ベビー・ブーマー層へは懐かしい往年の人気イギリスTV番組を映画化したもので、ユマ・サーマン("バットマン&ロビン")とレイフ・ファインズ(イングリッシュ・ペイシェント")扮するレトロ調スパイ、エマ・ピールとジョナサン・スティードが活躍するスタイリッシュな作品なので、力の入り方が違うようです。新しい分野での「映画音楽の天才」の腕前を、こうご期待! そして、今度映画を鑑賞する際は、陰の立て役者“音楽効果”にも気をつけて見て(聞いて?)下さいね。
ハリウッド・シンフォニー
リサイクル・フィーバー
世はリサイクル時代、去年“スターウォーズ”の再版が1億4千万ドルという破格の興行収益を上げ、その続編“帝国の逆襲"、"ジェダイの復讐”2作の再版は更に1億ドルを稼ぎだしました。これらの大ヒットで気をよくしたハリウッドへ、このところリサイクル・フィーバーの波が押し寄せています。火点け役の20世紀フォックス・スタジオを初め、どのスタジオも挙(こぞ)って再版企画に余念がありません。まず、昨年“ゴッドファーザー”3部作を25周年再上映し、まずまずの反響を得たパラマウントは、噂されていた“サタデイナイト・フィーバー(1977年)”の20周年再上映をRレーティング(17歳以下は両親同伴)がネックとなり断念しました。しかし、同じくジョン・トラボルタ主演のミュージカル“グリース(1978年)”を、今年の3月27日に20周年再上映します。これらの再版は、どこのスタジオも初公開から15年以上経過した話題作を3週間くらいの予定で上映し、2百万ドル前後の劇場収益が目標となっているようです。ふつう大都市を中心に50館から100館程度の小規模なマーケティングで、客層はそれらのオリジナル映画を見ながら青春時代を過ごした40代後半のベビー・ブーマー、および30歳以下の映画ファンがターゲット。しかし、全世界で4億ドルの収益を上げた“グリース”の場合、初演当時はティーンエイジャーだった世代が家族連れで見られる市場性を買われ、1500館の上映と“スターウォーズ"(初演時の収益3億2千万ドル)並の特別扱いを受けています。ハリウッド映画界最高の稼ぎ時である感謝祭(11月末)に「タイト・ジーンズ、バッド・ボーイズ、クール・ガールズ!」というキャッチフレーズで2分間の派手な予告編を流すなど、早くも宣伝を始めたパラマウントは、向こう3ケ月間で8百万ドル近い宣伝広告予算を組み、春の公開ウィークエンドに1千万ドルから3千万ドルの収益を見込んでいるもよう。その他、小規模な配給会社ライブが作夏10周年再上映した“ダーティー・ダンシング”も3週間で40万ドルを稼ぎだし、アニメの世界ではディズニーが、5千万ドルの収益を上げた“101匹ワンちゃん大行進(1991年)”の再上映に続いて、昨年は“白雪姫と7人のこびと”の再々上映と“リトル・マーメイド”の再上映で成功しました。昨年、旧コロンビア・スタジオのヒット作を多く抱えるソニーが“未知との遭遇”20周年再上映を試みスピルバーグ監督から蹴られたものの、今年は“オリバー!"(マーク・レスター主演)30周年、“追憶"(バーバラ・ストライサンド主演)25周年、“オール・ザ・キングスメン"(ブロードリック・クロフォード主演)50周年他、大量の再上映計画があります。また、今年後半の可能性として“2001年宇宙の旅(1968年)"、"時計じかけのオレンジ(1971年)”などのキューブリック監督作や“ビートルズ/イエローサブマリン(1968年)”といった若い世代受けしそうな候補作を検討中とか。しかし、こうした“リサイクル・フィーバー”も、ただ古いヒット映画を再上映すればいいというものではなく、“スターウォーズ”のように上映のタイミングや質の向上が重要です。観客の興味をそそるべく、映像や音楽のデジタル化などの処理を加えるプロセスばかりか、話題性を盛り上げるのはそう簡単ではありません。僕個人が大変楽しみにしているのは、2月20日の25周年再上映を目指してワーナーズラザーズがPRキャンペーンを開始した、故ブルース・リーのハリウッド・デビュー作“燃えよドラゴン"。ビデオでは何度となく見てきましたが、やはり映画館とは迫力が違います。再上映の醍醐味は、なんといっても最初の感激を再び大スクリーンで味わえるところです。当時、高校生だった僕をはじめ、全世界のティーンエイジャーを感動させたブルースの勇姿が銀幕へ蘇る日も遠くはありません!
“ボンド・マニア”トレビア・クイズの答、その1:「英海軍中佐」
その:「1900年1月4日フィラデルフィア生まれの鳥類学者」
(1998年1月16日)
Copyright (C) 1998 by DEN Publishing, Inc. All Rights Reserved.