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(1998年4月16日)          




ダブル・パンチ

“ベン・ハー”と並ぶ史上タイ11部門で受賞した“タイタニック”の独り舞台に終わった今年のアカデミー賞、中でも一番心暖まるストーリーといえば、脚本賞を受賞したマット・デイモンとベン・アフレックの友情物語でしょう。2歳違いのデイモン(27歳)とアフレック(25歳)は、自作“グッド・ウィル・ハンティング/旅立ち”の舞台であるボストンで生まれ育った幼なじみです。友人同士の母親たちが初めて2人を会わせたのは、デイモンがまだ10歳の頃でした。以来、無二の親友として俳優志望のお互いを励まし合ってきた彼らは、無名時代の4年前、1冊の脚本を仕上げています。それが“グッド・ウィル・・・”で、当初は天才ウィルがペンタゴン(情報局)の機密に触れた結果、彼を抹殺しようとする権威から追跡されるアクション企画としてキャッスル・ロック・エンターテイメント("ショーシャンクの空に"、"マイ・ジャイアント")へ売却されました。その後、お互いに俳優として働きながら、遠く離れたロケ地(マットは“戦火の勇気”でテキサス州、アフレックは“チェイシング・エイミー”でミネソタ州)からファックスのやりとりを重なながら再筆(リライト)を続け、ミラマックス・スタジオの援助もあって現在の感動物語が完成したわけです。今や主演依頼が殺到するほどのスターとなった2人は、デイモンがニューヨークのストリート・ギャンブラーを描いた“ラウンダー”を撮り終えたばかりか、この夏の目玉映画の1本、トム・ハンクス主演のスピルバーグ作“プライベート・ライアン”でライアン伍長役を演じます。一方のアフレックは、やはり夏の話題作“アルマゲドン”でブルース・ウィルスと共演と、その勢いたるや留まるところを知りません。ロマンスの面では、現在ロンドンで撮影中の“シェークスピア・イン・ラブ”がきっかけでグウィネス・パルトロー("エマ")と恋仲のアフレック、“グッド・ウィル・・・”の共演者ミニー・ドライバーと別れた後、ウィノーナ・ライダーとつき合うデイモンと、どちらも盛んです。しかし、アカデミーの晴れ舞台は2人揃って最愛の母親をエスコートする生真面目(ストレート)振りを見せていました。ケビン・スミス監督("チェイシング・エイミー")の次作“ドグマ”へ天使役で出演するため、2人は間もなくペンシルバニア州ピッツバーグのロケ地に向かいます。また、“グッド・ウィル・・・”の成功でますます創作意欲を刺激されたのか、今度はアフレックが主役でデイモンが助演のロマンチック・ドラマ“ライク・ア・ロック"(ミラマックス製作)や、精神障害者の施設を舞台に2人が共演する“ハーフウェイ・ハウス"(キャッスルロック製作)といった企画も着々と進行中です。幼い頃から抱いてきた夢を実現したデイモンとアフレック、オスカー・ナイトでは一段と輝いていました。





サントラ・ベストテン

僕がハリウッドを志す原因にもなった映画“エデンの東"、そして“風と共に去りぬ”や“シンドラーのリスト”など、名作の印象的なシーンを思い起こす時、必ずといっていいほど、その勇壮なサウンド・トラックが脳裏を掠めます。それだけ音楽は映画を引き立てる重要な役割を果たすだけでなく、アルバムが独り歩きを始めると、それはもうエンーターテイメントの確固たる1ジャンルです。音響賞はじめ、作品賞、監督賞など11部門で今年のオスカーをさらった“タイタニック”のサントラ版が、主題歌“My Heart Will Go On”を歌うセリーヌ・ディオンの人気もあって、公開4ケ月余りで早くも映画史上第6位へ食い込みました。日本だけで60万枚を売り飛ばし、第2弾まで企画される中、その人気はしばらく衰えそうもありません。そこで今日は、ハリウッド映画史を飾る歴代サントラ版ベスト・テンにスポットを当ててみましょう(かっこ内は封切り年度とアルバムの売上)。


1 位
3 位
9 位


1位: “ボディーガード” (1992年/1,600万枚)

当時、人気絶頂のポップ歌手ホイットニー・ヒューストンとケビン・コスナー主演のラブ・ストーリーは、ホイットニーのトレードマークである抜群の歌唱力と、2人の火花散るスクリーン・ロマンスで世界中の観客を魅了しました。主題歌“I Will Always Love You”といえばラブ・バラードのクラシック的存在。

2位: “プリンス/パープル・レイン” (1984年/1,300万枚)

現在「元プリンスと名乗った芸術家」という長ったらしくて妙な芸名を使うプリンスが本領を発揮したこのアルバムからは、同名の主題歌はじめ、“Let's Go Crazy”や“When Doves Cry”など5曲がトップ40入りを果たしました。音楽ばかりでなく主演も兼ねた映画の方は今いちでしたが、ロックとバラードを巧みにミックスしたサウンド・トラックは“プリンス&レボルーション”の名を世界に轟かせた彼のマスター・ピースです。

3位: “サタデーナイト・フィーバー” (1977年/1,100万枚)

ビージーズのナンバーが中心となった世紀のディスコ・アルバム。“You Should Be Dancing"、"Night Fever"、その他のダンス・ビートは世界的なディスコ・ブームに火を点け、ジョン・トラボルタの白いポリエステル・スーツが若者達の憧れの象徴となりました。

3位: “ダーティー・ダンシング” (1987年)

'60年代の避暑地を舞台に、パトリック・スウェイジ、ジェニファー・グレイ主演のロマンス映画。身体を密着させて踊るセクシーで熱いダンス・シーンがヒットの原因となり、主題歌“The Time of My Life”はヒット・チャートの第1位まで昇りつめ、スウェイジ自ら歌う挿入曲“She's Like the Wind”もヒットしています。

5位: “ライオン・キング” (1994年/1,000万枚)

手塚治の名作“ジャングル大帝”を真似たディズニー・アニメの傑作。壮大な音楽叙事詩であるそのサウンド・トラックは、エルトン・ジョンが歌う感動的な主題歌や“Can You Feel the Love Tonight”など数々の挿入曲、そして家族映画としての爆発的人気もあり、一躍ヒット・アルバムになりました。

6位: “タイタニック” (1997年/900万枚)

史上最高の興業収益を叩き出した世紀のスペクタクルを盛り上げ、アカデミー音響賞、オリジナル・ソング賞に輝く物哀しいサウンドは、新時代の“風と共に去りぬ”として不滅の地位を築きつつあります。

7位: “グリース” (1978年/800万枚)

またまた、うら若きトラボルタが飛ばしたこのヒット作は、古き良き時代のアメリカで生きる「健全な不良青年たち(?)」を描いたミュージカル・・・・・・と、今さら説明するまでもないでしょう。当時、売れっ子のオリビア・ニュートン・ジョンが共演、ポニー・テイルの彼女とリーゼントのトラボルタ2人でデュエットした“Summer Nights”や、彼女のソロ“Hopelessly Devoted To You"、そしてフランキー・バリによる主題歌の同名バラードは大ヒット。ちょうど20周年記念デジタル版の再上映中ですが、ジェネレーション・ネックストへも受けはいいようです。

7位: “フットルース” (1984年)

若きケビン・ベーコン("ワイルド・シングス")演じる高校生が、宗教上ダンスを禁じる中西部の田舎町へ転校したところから始まる物語。ケニー・ロギンスの歌う同名主題歌は、伝統に縛られた地元の若者達が「ダンス」という媒体を通じて心を開いてゆく様を、切れのいいビートで盛り上げます。

9位: “トップガン” (1986年/700万枚)

ベルリンが歌う主題歌“Take My Breath Away”の爆発的ヒットで、サントラ版としては珍しくポップ・アルバム・チャート第1位の座につきました。未だ結婚式などでリクエストされる華麗なこの曲以外、ケニー・ロギンスのロック・ナンバー“Danger Zone”なども、トム・クルーズの個性やジェット戦闘機の飛行シーンと絡んで印象的な場面を生み出しています。

9位: “ため息つかせて” (1995年)

主題歌“Exhale (Shoop Shoop)”が5週間に渡ってポップ・チャート第1位の座を保ち、ホイットニーの実力を示しました。彼女やアンジェラ・バセット("ティナ")他、黒人女優数人のアンサンブル・キャストにより、繊細な女心の葛藤を旨く描いたこの心暖まるドラマは、いま最もホットな音楽プロデューサー、ケネス・ベビーフェイス・エドモンズの手がけたサウンド・トラックと画面が完璧な調和を醸し出しています。

こうしてみると比較的新しいサントラ版が上位を占めているのは、レコードやCD自体の単価高騰という理由もあるのでしょうが、一番の理由は「映画のバックグラウンド」から「ヒット・レコード」へと存在感を増したこと、つまり時代の流れがあると思います。心に残る名場面を再現してくれるだけでなく、その映画を見た時の人生模様さえ思い起こさせてくれる貴重なサントラの世界。ビデオ鑑賞もいいですが、たまには目を閉じて、お気に入りのサントラCDへ耳を傾けでみては・・・・・・!?





ハイコンセプト

ハリウッドのピッチ・ミーテイング(企画会議)で飛び交う単語のひとつに“ハイコンセプト"、つまり「高水準」というのがあり、最近ではCGを駆使した想像を絶するハイコンセプト・プロジェクトが目立ちます。その顕著な例は、1億ドルという超大型予算でポリグラムが製作するロビン・ウィリアムス主演のラブ・ストーリー“奇蹟の輝き”です。ヒット・メーカーの脚本家ロン・バス("ベストフレンズ・ウェディング")の原作を基に、新進監督ビンセント・ウォード("心の地図")を起用したこの作品は、交通事故で他界した最愛の夫(ロビン)を想うあまり自殺してしまう妻("コップランド"のアナベラ・シオラ)のメロドラマ。天国に行っている夫と再会するはずの妻が、どういうわけだか地獄に堕ちてしまい、天使("エージェント"のキューバ・グッディング・ジュニア)の助けを借りて彼女を救出しようとする夫の冒険ドラマへと展開してゆきます。生前の妻は画家であり、夫のいる天国のイメージが全て彼女の作品に基づく“絵の具の世界”というわけで、この部分は最新CGテクニックを駆使した3Dイメージの大活躍です。映画の80パーセント以上が天国と地獄のシーンで、ダム建設用のマッピング・ソフトを使った絵筆による3次元世界は、かつてないCG効果だとか! モンタナ州のロケが終わった現在、これから複雑なハイテク処理を経て、封切りは夏の終わりを予定しています。CGといえばエイリアンや恐竜のイメージが強いハリウッド、これからはラブ・ロマンスの世界へも広がってゆく時期だと思えば、その限りない可能性に興奮さえ覚えますね。最近のヒット作“スフィアー”や“ワッグ・ザ・ドッグ"、また“ダイナー"、"レインマン”などの名作で知られる監督バリー・レビンソンも、やはり独自のハイ・コンセプト・プロジェクトを暖めており、アーサー・ハーゾッグのベストセラー小説を基にドリームワークス・スタジオと企画中の“IQ83”がそれです。人類の知能指数を激減させる伝染性ウィルスと、その壊滅的な病原菌で犯される前に抗体を発明しようとする科学者の戦いを描いたこの生医学スリラーは元より、将来、実際に起こりそうな“自然界からの逆襲”というハイ・コンセプトが、世紀末という不安定なタイミングと相まって、これからの人気ジャンルになりそうな予感がします。





型破りなキャスティング

今までと全然違うタイプの役柄を演じたり、突如として演技開眼し、注目される現象を、ハリウッドでは“ブレイクスルー・ロール(型破りの役)”と呼びます。現在、注目を集めている典型的パターンの俳優と企画が・・・・・・




ジム・キャリー("マン・オン・ザ・ムーン"/ユニバーサル)

'80年代に人気を博し、ダニー・デ・ビート("L・Aコンフィデンシャル")、クリストファー・ロイド("バック・トゥー・ザ・フューチャー”シリーズ)などの映画スターを輩出したTVコメディー・シリーズ“タクシー”で、カナキリ声と変なアクセントを使う東欧人修理工ラッカを演じて一躍人気を博したアンディー・コフマン(写真右)の自伝映画へ主演します。ラスベガスのバー・シンガー“トニー・クリフトン"、"悪役プロレスラー”他、彼独自のキャラクターを生み出したコフマンは、どこまでが演技で、どこまでが本物かわからないミステリアスなコメディアンであり、観客はそこへ興味をそそられてきました。生番組で共演バンドをコケ落とし、スタジオ中が暴動騒ぎとなったり、ゲスト出演中、番組のシーン・スケッチ画に悪戯(いたずら)し、収録の途中で怒ったプロデューサーと殴り合いの喧嘩をするなど、“エクセントリック(変わり者)”を地でいく彼も肺ガンには勝てず、1984年33歳の若さでこの世を去っています。ゴム人形の様な独自のキャラクターを確立してスーパー・スターとなったキャリーが、エドワード・ノートン("ラリー・フリント")、ケビン・スペイシー("L・Aコンフィデンシャル")と前代未聞のオーディション合戦の末につかんだ「ぜひ演じたかった」役柄だけ、この複雑怪奇な特異コメディアンの実像をどう再現するかが見ものです。オスカー監督ミロシュ・フォアマン("アマデウス"、"ラリー・フリント")の指揮のもと、故人と親友だったダニー・デ・ビート共演で7月クランクインの予定。

ケビン・コスナー("サーティーン・デイズ"/ユニバーサル)

1962年10月に起きたキューバ危機は、冷戦さなかのソ連とアメリカが核ミサイルを巡って世界を震撼させたクライシス“ピッグス湾事件”として歴史へ足跡を残しました。この映画は、ケネディー大統領、弟のロバート・ケネディー司法長官、そして参謀総長ケネス・オダネルなどの勇気ある決断を背景に、緊迫の2週間を描いたサスペンス・ドラマです。コスナーがどの役柄を演じるかは未決定ながら、脚本が史実とオダネル個人の資料から成っていることを思えば、従来の“ソフト”なイメージを脱皮して、鋼鉄の意志を持つ参謀総長(チーフ・オブ・スタッフ)を演じるのではないでしょうか? このところ主演作が次々と転け、ファンをガッカリさせているコスナーだけに、ぜひ期待したいものですね!

マイク・マイヤーズ("20ビリオン"/パラマウント)

“ウェインズ・ワールド”で人気者となり、最近では'60年代のレトロ調スパイをパロディッた“オースティン・パワーズ”がヒットしたコメディアンで脚本家のマイク・マイヤーズ、今度は孤独な寂しいコンピュータ企業会長の天才富豪役と、ビル・ゲイツ風の少し真面目な役柄を演じます。“法律事務所”や“サブリナ”の名プロデューサー、シドニー・ポラック製作のこの映画、来月(5月)封切りのSF話題作“ディープ・インパクト”や“ミッション・インポッシブル2”の脚本を担当するマイケル・トルキンが監督し、ストーリーは既婚の美人女性宣伝係に恋する内気な億万長者が、大勢の金持ち男と競り合う中で自己発見をするというロマンチック・コメディー。焦点はドタバタ専門だったマイヤーズの繊細な演技でしょう。

リック・ジェームス("ライフ"/ユニバーサル)

長い金髪パーマとド派手なコスチュームを武器に、“スーパー・フリーク”などのユニークなサウンドで一時代を築いた“ファンクの帝王”リック・ジェームス(写真左)。1996年の婦女暴行罪で2年間服役後、往年の“バッドボーイ”も骨盤手術を受けて杖を使う身となりました。入院中の彼を見舞った友人エディー・マーフィーとマーチン・ローレンスは、彼らが共演する撮影中のコメディーへ出演を懇願され、その結果、リックは降板したルー・ガセット・ジュニア("愛と青春の旅立ち")が演じるはずのギャングのボス役を獲得したのです。リハビリ中の彼に合わせて、“怖いボス”のキャラクターは杖をつきながら足を引きずる役柄へと変更されましたが、当人は初めての演技で少々緊張気味だったとか。エディーのデビュー・アルバム(1985年)もプロデュースしているリック、リハビリが終われば、ラップ界の“バッドボーイ”スヌープ・ドッギー・ドッグをゲストに迎えたカムバック・アルバム“アーバン・ラプソディー”のプロモーション・ツアーを開始します。



(1998年4月16日)

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