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(1998年8月1日)          




新企画情報

このところ2ケ月置きのペースでお届けしている、おなじみ最新情報、今回もいろいろなジャンルの企画が盛りだくさんです。


“アイ・ドリーム・オブ・アフリカ”

キム・ベーシンガー("L・Aコンフィデンシャル")のポスト・オスカー主演作です。野生保護運動に情熱を燃やすクーキー・ガルマンの生涯と冒険を、ヒュー・ハドソン監督("ロスト・エンジェルス")が銀幕へ描きだすこの不毛のラブ・ストーリーは、製作がソニー・スタジオ、“THE CROW/ザ・クロウ”で注目されたフランス人俳優ヴァンサン・ペレーズ(写真左)共演で、8月初頭からのイタリア・ロケを皮切りに4ケ月間の長期アフリカ・ロケへと続きます。自宅が僕の家と近い夫アレック・ボルドウィン("ワイルド")は、3歳の娘アイルランドを連れて、たびたびアフリカのセットを訪れる予定だとか・・・・・・


“サマー・オブ・サム”

ハリウッドより愛をこめて」でお伝えしたとおり、一時はディキャプリオの次期主演作とも噂されたスパイク・リー監督の新作。1976年の“サン・オブ・サム連続殺人事件”が背景となったドラマは、すでにジョン・レグイザモ("スポーン")の主演が決定している他、レグイザモの妻役はミラ・ソルビノ("リプレイスメント・キラーズ")が有力候補です。今月早々、ニューヨークはブロンクスでクランクインします。

“アンツ”

アニメ部門は12月18日封切りの“プリンス・オブ・エジプト”でデビューを飾るはずであった新興勢力ドリームワークス・スタジオが、第2弾として企画していた自信作。それを11月20日の感謝祭休暇封切りを目指すディズニーとピクサー・スタジオ("トイ・ストーリー")製作の期待作“バッグズ・ライフ”と対抗し、急拠10月2日に公開を早めた曰くつきのアニメです。主人公はニューヨークのセントラル・パークで住む反逆心旺盛な蟻たちで、スタローン、シャロン・ストーン、ジェニファー・ロペス("オウト・オブ・サイト")などの豪華キャストが声優を務めます。話題の1つは精神分析治療中の蟻“Z”の声をウッディー・アレン("世界中がアイラブユー")が担当。

“ブリンギング・アウト・ザ・デッド”

傷害事件多発地区であるニューヨークのヘルズ・キッチンで働くうち、過労から神経衰弱にかかり、今まで死を看取った人間の亡霊が見始める救急隊員の物語です。マーチン・スコセッシ監督("クンダン")、ニコラス・ケイジ主演で10月のクランクインを予定しています。

“50バイオリン”

ホラー映画で知られるウェス・クレイブン監督("スクリーム1&2")が、“フィドル・フェスト”というドキュメンタリー映画に基づき、初めて手がける人間ドラマ。大都市の情熱的な一音楽教師ロバータ・グアスパリ・ザバラスの、逆境の中でバイオリンを教える不屈の精神や彼女と生徒たちの愛情を描いた物語です。主演の教師役はマドンナ(写真中央)、教え子役に去年の秀作“イブズ・バイユー”で脚光を浴びた11歳の少女、ジューニー・スモレットが抜擢されました。しかし、かつての名作“奇跡の人”の再来を目指し、9月のクランクインを控えながら、マドンナはクレイブン監督と意見の相違から抜け、今のところ後釜が決まっていません。当のマドンナは来年の年明け、現在ヒット中のミュージカル“シカゴ”の映画バージョンで、ゴールディー・ホーン("ファーストワイフ・クラブ")と共演。

“マミー”

「母さん」というタイトル通り、アンジェリカ・ヒューストン("アダムス・ファミリー")扮する「やり手母さん」が、夫の死後、子供たち7人と苦難を乗り越えてゆく、ダブリン舞台のヨーロッパ調ドラマです。フランスの名優ジェラルド・ディパーデュー("仮面の男")共演、ジム・シェリダン("ボクサー")製作の豪華版で、監督のヒューストン(往年の名作“イグアナの夜”や“女と男の名誉”他の名監督ジョン・ヒューストンの娘)は主演と2足の草鞋(わらじ)を履き、この夏クランクインします。

“シティー・オブ・ゴースト”

“ドラッグストア・カウボーイ”などの演技が印象深い個性派マット・ディロン("イン・アンド・アウト")の監督デビュー作。主演も兼ねるマット自ら書き上げた脚本は、相棒と画策した国際的な詐欺に失敗し、東南アジアへ逃亡した男が、じつは信頼する共犯者の罠にはめられたと気づくスリラーです。製作費1千万ドルの少ない予算ながら、11月から始まる「夢の実現」を目前に、これまでの俳優経験をすべて演出へ活かすと、今後の抱負を語るマットの目は輝いています。

“ナインス・ゲイト”

未成年とのセックス・スキャンダルや関連した訴訟の煩わしさを回避するため、アメリカから遠ざかり長年ヨーロッパで暮らすローマン・ポランスキー監督("フランティック")が、ジョニー・デップ("フェイク")、リーナ・オーリン("ニューヨーク検事局")主演で製作するミステリー・スリラー。1977年のベストセラー小説“クラブ・デューマス”を原作に展開する物語は、デップ演じる珍書専門家が世界中でたった2冊しか残っていないといわれる“悪魔のテキスト”を探すうち、次々と神秘的な出来事へ巻き込まれてゆくというもので、パリ、スペイン、ポルトガルに渡る広域ロケは先月(7月)から始まりました。

“ロウズ・オブ・マッドネス”

現在撮影中の“ファイト・ゲーム”が終わった直後クランクイン予定のブラッド・ピット(写真右)主演作、精神分裂症と診断された24歳の法学科大学院生の葛藤を描いた、実話に基づく感性豊かなドラマです。

“ジュラシック・パーク3”

世界の映画館で10億5千万ドルを稼ぎだし、ユニバーサルの看板商品となった“ジュラシック・パーク"、"ロスト・ワールド”に続く第3弾は、現在、原作者であるマイケル・クライトンが原案の執筆を進めています。公開は2000年の夏が目標で、今回スピルバーグは監督をやらずプロデュースへ専念するとか。ジェフ・ゴールドブルームの演じた数学者イアン・マルコムが再度登場するかどうかは未定ですが、観客をアッと言わせる意外性や独自のアイデアを考え出すと張り切るクライトン、さあ、どんな映画を見せてくれるでしょうね?!

“スーパー・ノバ”

ルー・ダイアモンド・フィリップス("ビッグヒット")、アンジェラ・バセット("ため息つかせて")、ロバート・フォースター("ジャッキー・ブラウン")扮する宇宙飛行士の遭遇する不可思議な事件、ウォルター・ヒル監督のSFアクション作です。

“ジャイガンティック”

かつて日本でヒットした漫画“鉄人28号”をハリウッドで映画化する話があり、タイトルは“ジャイガントア”でした。その企画倒れの映画とよく似ていますが、こちらはニューライン・シネマ製作、ご存じ“タイタニック”のパロディー映画と、内容がまったく違います。歴史上の大惨事であろうと面白おかしい「笑い」のネタにしてしまうハリウッドお得意のパロディー精神は、ディキャプリオから氷海への沈没まで全編を通じて発揮されているものの、“裸の銃(ガン)を持つ男”シリーズの脚本家パット・プロフトが書いた“タイタニック・トゥー(Too)/イット・ミスト・ザ・アイスバーグ”もちょうど企画中であるため、「早い者勝ち」の勝負になるかもしれません。

“サイモン・セッズ”

最近、NBA決勝シリーズで対戦したユタ・ジャズのエース、カール・マローンとプロレス界へ殴り込みをかけて話題沸騰なのがシカゴ・ブルズのバッドボーイ、デニス・ロッドマン("ダブル・チーム")です。映画の主演は2度目の彼が、誘拐された少女を救出するため古巣へ戻って活躍する元CIA諜報員を演じるアクション・コメディー。今月(8月)中旬、南仏でクランクインします。




アクション映画の帝王!

この夏のブロックバスター中では最高の製作費1億4千万ドル、宣伝広告費6千万ドルと莫大な予算を投じた“ハルマゲドン”も、ディズニーが全力を投じたPR作戦の甲斐なく、独立記念日を狙った滑り出しは週末の収益が3千4百万ドルと、期待はずれの結果で終わりました。しかしながら、プロデューサーのジェリー・ブラッカイマー株は上がる一方で、スピルバーグやキャメロン("タイタニック")と並ぶ、スタジオが大手を広げて財布の紐を緩める数少ない彼は、ハリウッドで“1億ドルの男”と呼ばれています。“ハルマゲドン”でも起用しているミュージック・ビデオ畑出身のマイケル・ベイ監督と組んだ“バッド・ボーイズ”や“ロック"、そして“コンエアー”など、このところ絶好調の売れっ子アクション・プロデューサーなのです。ドイツ人移民の子としてデトロイトで育ち、自動車のCM制作などを経てハリウッド入りした'70年代、“さらば愛しき女よ"、"アメリカン・ジゴロ”他のプロデュースで幸先のいいスタートを切った彼が、'80年代は元パラマウント重役の故ドン・シンプソンと組み、ますます弾(はず)みがつきます。シンプソンとのコンビで“フラッシュダンス”を皮切りに、“ビバリーヒルズ・コップ”はエディー・マーフィーを、“デイズ・オブ・サンダー”はトム・クルーズをAリスト・スターへ仕立てる名プロデューサーぶりを発揮してきました。'90年代に入ってからも“デンジャラス・マインド/卒業の日まで"、"クリムソン・タイド”とヒットを飛ばし続け、“アクション映画の帝王”の名を欲しいままにするブラッカイマーです。一部の批評家は「暴力と犯罪をビジュアル・パッケージとして売り出し、映画鑑賞の価値を低下させた」と酷評しますが、見方はどうあれ、インターネットの到来で映画ファンがハイテク化した現在、その期待に応えられる数少ないプロデューサーであることは疑いの余地がありません。特撮(SFX)でも火薬を扱うパイロテクニックの撮影なら右に出る者はいないと言われるマイケル・ベイ監督のデビュー映画“バッド・ボーイズ”が、ウィル・スミス("MIB")を映画スターへと仕立て上げたごとく、主役として無名の新人を大胆に起用するのもブラッカイマー得意のパターンでしょう。古くは先の“フラッシュ・・・"、最近なら“ハルマゲドン”がこのパターンであり、それはつまり役者の素質を見抜く才能と、見抜いた素質を活かす才能が、どちらも人並みはずれていることを意味します。そして、役者ばかりかスタッフを活かすのが上手いのは、ベン・アフレックを抜擢した時の経緯(エピソード)がいい例です。ブルース・ウィルスの共演者をキャスティングする際、まだ“グッド・ウィル・ハンティング/旅立ち”の公開前で無名のベンを抜擢したのは、ブラッカイマーがスタッフの意志を尊重した結果でもあります。彼のオフィスで働く女性スタッフはベンのチャーミングな人柄に魅了され、その採用を上司へ嘆願するほど好印象だったとか・・・・・・「観客の見たがるものを作る」と言う“アクションの帝王”ブラッカイマーの次作は、ウィル・スミス主演、トニー・スコット監督("デイズ・オブ・サンダー")のアクション・スリラー“エネミー・オブ・アメリカ"、11月26日感謝祭、全米封切りの予定です。こう、ご期待!





神のみぞ知る?

ベン・アフレックといえば、話題の親友(バディー)コンビ、マット・デイモン("レインメーカー")との共演や、新進監督ケビン・スミス("チェイシング・エイミー")の作品ということもあり、ここしばらくミラマックス映画“ドグマ”が注目を集めていました。しかし、カトリック教会の絡みで、とつじょ雲行きは怪しくなり、今もその状態が続いています。事の起こりは、登場人物のキャラクターを巡る教会からの抗議です。主役2人が演じる天使たちは、あまりにも下品な言葉使いで、冷酷な態度が殺気さえ感じさせると怒った教会側は、最終的に親会社ディズニーのアイズナー会長へ会談を申し入れ、両者の間で一悶着が起こります。世間を騒がせるまでに発展したこの映画、ユニークなのは天使ばかりでなく、登場人物が異色の顔ぶれ、たとえばキリストの13番目の弟子(裏切り者のユダ)はコミカルな黒人("リーサル・ウェポン4”のクリス・ロック)であったり、ロック歌手アラニス・モリセットが“神”演じる他、堕胎クリニックで働く女性はキリストの親戚と、キリスト教をコケにしたような内容が、教会ならずとも熱心な信者なら「神への冒涜」と映るかもしれません。さあ、騒動はこの先どうなるか・・・・・・それこそ「神のみぞ知る」かも?





風と共に去らぬ!?


7月初旬、デジタル処理でオリジナルより30パーセント鮮明になった色彩と透明度を増した音響を引っさげ、200館の限定公開が話題を呼んでいる“風と共に去りぬ”の修復版、劇場の大スクリーンで見る“世紀のクラシック”は、やはり超弩級の迫力でした。南北戦争当時の華麗な南部社会を描いたマーガレット・ミッチェル原作の小説が映画化され、1939年の初公開以来、これまで数回リバイバル上映されているとはいえ、コンピュータで修復した場面が10分以上組み込まれるのは今回初めての試みです。中休み直前、主演のビビアン・リー演じる富豪の娘スカーレット・オハラが、「神に誓って、もう二度と空腹にはならない!」と言いつつカブを大地から引き抜く有名なシーンも、目を見張るばかりの色彩で一段と印象を深めています。大がかりな修復作業を手がけたEDSデジタルは、テクニカラー社が開発した染色変換(ダイ・トランスファー)方式を改良した新技術を駆使し、半世紀以上を経た映像をオーディオ、ビジュアル両面で'90年代の観客へ訴えかける質の高い映画に見事変身させました。また、今回のニューライン・シネマ公開へと至る経緯(いきさつ)は、1939年のオリジナル配給元であったMGMが'80年代の企業買収劇でその映画資産(ライブラリー)をテッド・ターナー(CNNの創始者)に譲り、それからターナーはタイム・ワーナー社と合併した結果、傘下であるニューライン・シネマが再上映というわけです。“スターウォーズ”次期3部作の配給権をジョージ・ルーカスから獲得すべく莫大な宣伝広告費をかけ、旧3部作のデジタル版特別編を全米2,000館以上で公開した20世紀フォックスは2億5千万ドルという莫大な収益を上げました。ニューラインが“風と・・・”のデジタル版をマーケティングしていくやり方は、やや戦略が違います。200館という小規模なスケールで上映しながら、夏のシーズン中、大都市から片田舎まで映写プリントを移動させつつ全米をカバーすると、最小の経費(宣伝広告費)で最大の利益を目論んでいるようです。ちなみに、タイトルと裏腹で、なかなか“風と共に去らぬ”この名作、じつは今も実質的な意味で全米劇場収益(ボックス・オフィス)のチャンピオンの座を譲り渡していません。物価の上昇率を考慮しない単純比較なら、もちろん5億8千5百万ドルを記録した“タイタニック”がトップでも、じっさい入場券の売れた枚数は“風と・・・”の半分以下でした。初公開以来、1965年度作“サウンド・オブ・ミュージック”が首位を奪うまでの20数年間、チャンピオンとして君臨し続けたレット・バトラーとスカーレットの激しい愛情物語は、これまでの総収益が1億9千2百万ドルで映画史上25位にランクされています。そこへインフレ指数を加え、現在の価値に換算すれば12億1千万ドル相当と、他の追随を許しません。以下、物価計算で比較し直した全米収益ベストテンは・・・・・・

順位題 名公開全米劇場収益製作スタジオ
1位“風と共に去りぬ”1939年  12億1千万ドルMGM
2位“白雪姫”1937年10億3千万ドルディズニー
3位“スターウォーズ”1977年8億1千万ドル20世紀フォックス
4位“E・T”1982年7億2千万ドルユニバーサル
5位“101匹ワンちゃん大行進”1961年6億5千万ドルディズニー
6位“バンビ”1942年6億4千万ドルディズニー
7位“ジョーズ”1975年5億9千万ドルユニバーサル
8位“タイタニック”1997年5億8千万ドルパラマウント
9位“サウンド・オブ・ミュージック”  1965年5億6千万ドル20世紀フォックス
10位“十戎”1956年5億4千万ドルパラマウント


それにしても、ディズニー・アニメの占める割合や、残る大半がいわゆる「大スペクタクル物」かその流れの作品とは、ハリウッドの本質が健全なエンターテイメント精神で支えられていることなのでしょうか? 言い換えれば、これらの映画はアメリカの観客が求めるものを集約した結果なのでしょうか? そして、自分自身で作りたい映画の傾向はさておき、その根底へ「良きアメリカ」っぽい、ある種の郷愁を覚えるのは僕だけなのでしょうか?




(1998年8月1日)

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