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(2010年1月)
A Happy New Year!
from
Hollywood今年も「ハリウッド最前線」を
よろしくお願いいたします!
「私は大統領ですが・・・」
「私は大統領ですが、ボスは彼です」と、オバマ大統領(写真右)がブルース・スプリングスティーン(写真中央)への祝辞を述べたのは、米国の芸術分野における多大な貢献が認められた人へ贈られるケネディー・センター名誉賞の授賞に先駆け、先日ホワイトハウスで開催された式典の時のことです。今年の受賞者はスプリングスティーンの他、ロバート・デ・ニーロ(写真左)、メル・ブルックス、「テイク・ファイブ」でお馴染みのジャズ・ピアニスト、デイブ・ブルーベック、そしてオペラ・シンガーのグレース・ブンブリーで、約300人のゲストが招かれた中にはジャック・ブラック、エドワード・ノートン、マシュー・ブロデリック、ベン・スティラー、フィリップ・シーモア・ホフマン、マーティン・スコセッシ、スティングの顔も見られました。オバマ大統領曰(いわ)く、「こうしたパフォーマーの皆さんがベストであるのはもちろん、彼らが唯一の真実を体現する存在だといえます。ミッシェル(大統領夫人)の言葉を借りるなら、芸術はなぜかこの国と切り離せず、芸術はこの国の生命の根源なのです」・・・・・・いっぽう、9月に還暦を迎えたばかりのスプリングスティーンが、「我々はアメリカ人の生き方の一部として、また我々のファンのため、これまでがんばって音楽をやってきました。だから、自分なりの方法で文化へ貢献できたことが認められ、満足しています」とコメントしました。余談ながら、少し前にホワイトハウスの晩餐会へ侵入したバージニア州のカップルの事件もあり、当日のセキュリティはかなり厳重だったらしく、身分証明書を忘れた出席者は身元がはっきりするまで入れなかったり、出席者の間では誰か怪しい人間がいないかで盛り上がるなど、やや例年とは趣(おもむ)が異なる部分もあったようですね!
予想外のヒット
アメリカでは「ニュームーン/トワイライト・サーガ」と同時に封切られたサンドラ・ブロック(写真)の最新作「ブラインド・サイト」が、予想外のヒットとなっています。最初から大ヒット間違いなしと思われていた「ニュームーン・・・」は、予想通り公開日から興行記録を塗り替え、1週目、2週目とチャートのトップを走り続けました。いっぽう、ぴったりと2番手へついていた「ブラインド・・・」が3週目に「ニュームーン・・・」を追い越すなど、業界の誰も予想していません。ブロックといえば、去年の「プロポーザル」で久し振りに返り咲いて話題となったばかりです。「ブラインド・・・」はその次作ですから、いわば不振(スランプ)の打者が立て続けのホームランを放ったといえます。もっとも、1週目から3週目までを合計すると米国内興行収益は「ニュームーン・・・」が2億ドル(約180億円)以上に対して「ブラインド・・・」は1.6億ドル(約144億円)弱と、まだ4,000万ドル(約36億円)以上「ニュームーン・・・」が差をつけているものの、4週目にはそれが2,000万ドル(約18億円)弱へ減り、その後もじわじわと差を縮めてきました。そもそも3週目で初めてチャートの1位に入ること自体珍しく、ワーナーブラザーズの配給担当副社長であるジェフ・ゴールドスタインは、予想の倍を上回る「ブラインド・・・」のヒットへ嬉しい驚きを隠せません。加えて、ブロックが「プロポーザル」とこの「ブラインド・・・」でゴールデングローブの主演女優賞にダブル・ノミネートされたのですから、おめでたい限りです。いっぽう、3週目から逆転された「トワイライト・サーガ」ですが、シリーズ3作目「エクリプス/トワイライト・サーガ」が早くも6月30日に全米公開を控え、これまた今からヒットは確実と予想されています。
ハングオーバー2
去年(2009年)のヒット作「ハングオーバー(写真)」、日本ではまだ未公開ながら早くも続編「デュー・デート」が企画されています。この続編で新たに登場するのは、現在「シャーロック・ホームズ(2009年)」がヒット中で今年(2010年)の5月には「アイアンマン2」が封切られるロバート・ダウニー・Jrです。ハリウッドで珍しく正規のトレーニングを受けていない俳優であり、「トゥー・ガールズ・アンド・ガイ(1998年)」の頃には麻薬(ドラッグ)騒動を起こしながら、昔から演技派として定評があるダウニー・Jr、そのコミカルな側面は「アイアンマン(2008年)」や「シャーロック・・・」でも、じゅうぶん窺(うかが)えます。そこへ目をつけたのが「ハングオーバー」の監督トッド・フィリップス(「オール・ザ・キングスメン」)で、2作目「デュー・デート」では今までと違ったダウニー・Jrの姿が見られそうです。2作目の全米公開は来年(2011年)の戦没者追悼記念日(メモリアル・デイ)を予定しており、ダウニー・Jrが演じるのは1作目で赤ん坊を抱いた姿が印象的だったザック・ガリフィアナキス(「イントゥ・ザ・ワイルド」)演じるアランの大学時代の仲間で、2人は息子の誕生日のためアメリカ大陸横断の旅に出ます。これ以外にタイが舞台という噂もあるものの、何しろタイトルは「二日酔い(ハングオーバー)」ですから、他の映画の続編と比べてプロットの予想がつきません。現在、脚本は半分まで上がっているらしく、ガリフィアナキスやダウニー・Jrの他、1作目で前半と後半しか登場しなかった主人公4人の1人ダグを演じたジャスティン・バーサ(「ホリー・ローラーズ」)が、2作目で更にフィーチャーされるのは確かなようです。とにかく、今年9月のクランクインを目指して着々と準備が整いつつあるとか・・・・・・請う、ご期待!
追記: その後、「ハングオーバー(2009年)」の邦題は「ハングオーバー! 消えた花ムコと史上最悪の二日酔い」、「デュー・デート(2010年)」の邦題は「デュー・デート 〜出産まであと5日!史上最悪のアメリカ横断〜」と、それぞれ決まりました。また、「デュー・デート」の主演が「ハングオーバー」と同じザック・ガリフィナーキスということで、「ハングオーバー2」と混同して報道されました。じっさいは両者に関連がないことを、ここでお断りしておきます。
ストリープのダブル・ノミネーション
先のサンドラ・ブロック同様、今年のゴールデングローブへダブル・ノミネートされたのがメリル・ストリープ(写真)です。ただし、同じダブル・ノミネートでもストリープの場合は2作の役柄が、まったく違います。1作は「ジュリー&ジュリア」で、彼女が演じるのはパリの名門料理学校ル・コルドン・ブルーを卒業後、アメリカの食卓にフランス料理の大旋風を巻き起こす料理本の著者ジュリア・チャイルドです。そして、もう1作が「イッツ・コンプリケイティッド」、こちらは中年の三角関係がテーマのコメディーで、彼女はサンタバーバラのレストランを経営する3人の子持ちジェーンを演じます。前者が実在の料理研究家なら、後者は弁護士で未だにつき合いのある別れた良人(アレック・ボルドウィン)と厨房の改装を頼んだ設計家(スティーヴ・マーティン)との間で揺れ動くフィクション上のキャラクターです。ストリープとブロックを除けば、マット・デイモンが「インヴィクタス」の助演賞と「インフォーマント」のコミカルな演技でやはりダブル・ノミネートされました。また、クエンティン・タランティーノは「イングロリアス・バスターズ」の監督と脚本賞で、そして「マイレージ、マイライフ」のジェイソン・ライトマンがダブル・ノミネートされた他、この「マイレージ・・・」は今年、もっとも多くノミネートされた作品でもあります。TVへ目を向けると、アンナ・パキンがHBOのドラマ「トゥルー・ブラッド」のスーキー・ストックハウス役と「カレッジオウス・ハート・オブ・イレーナ」の主演でダブル・ノミネートされました。あとはジェームズ・オナーが「アバター」と「アイ・ウィル・シー・ユー」の音楽でダブル・ノミネートといったところです。さあ、今月(1月)17日の第67回ゴールデングローブ授賞式の結果やいかに!?
インサイダーは誰?
今年も「ハリウッド・レポーター誌」は、「ハート・ロッカー」のキャスリン・ビグロー、「アバター」のジェームズ・キャメロン(写真右下)、「プレシャス」のリー・ダニエルズ、「ラブリーボーン」のピーター・ジャクソン(写真左下)、「マイレージ、マイライフ」のジェイソン・ライトマン(写真右上)、「イングロリアス・バスターズ」のクエンティン・タランティーノ(写真左上)と、トップ・クラスの監督6人を一堂に集め、朝食を食べながらの座談会を持ちました。その席上で自分たちをインサイダーだと思うか、それともアウトサイダーだと思うか聞かれ、まずライトマンが「沈黙」と言って笑いを誘い、続いてキャメロンは「もし我々がアウトサイダーなら、いったいインサイダーは誰なんだい?」と質問に質問で答えています。次がタランティーノで、「うん、それは興味深い質問だね。僕が最初の映画を作ったのは'92年だから、それが監督として仕事をした最初の年だ。つまり、公式に17年間監督を務めてきたうち、始めの10年間は僕自身アウトサイダーだったと思う。だけど、それだけの年月、映画祭のみでなく人々が注目する映画を作ってきたら、実質的にはインサイダーだと言える。じっさい上院議員の晩餐会へ招待された時も、僕自身、場違いな感じがしなかったよ」と語りました。いっぽうジャクソンは、「僕の場合、ニュージーランドで暮らすという地理的な要素がある。つまり、僕は間違いなくアウトサイダーのような気がするし、ニュージーランドでは僕らが朝食を食べているところを(こうして)撮影したりはしないな」と、そこでライトマンが「僕は人生の毎日をこうして過ごしてきた。親父がカメラのセットアップをしてね」・・・・・・この後、残りの2人も含めて座談会は続くのですが、みんな売れっ子監督だけに、それぞれ個性では引けを取りません。
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