映画とスーパーヒーロー


 ハリウッドではスーパーヒーロー花盛りだが、これまでスーパーヒーロー映画へ出演した俳優は、いったいどれぐらいのギャラを稼いでいるのであろうか? そこで、今月の「テーマソング(エッセイ)」は、2013年11月1日現在におけるスーパーヒーロー映画の稼ぎ頭「トップ20」を探ってみよう。

■1位:ジャック・ニコルソン/「バットマン(1989年)」のジャック・ネイピアことジョーカー役で6.000万ドル(約60億円)
ジョーカー役を演じるにあたってニコルソンは、製作スタジオのワーナーブラザーズへ主演のマイケル・キートンよりも高額のギャラ、および興行収益のパーセンテージと関連商品の印税を要求した。その結果、1本の映画からの収入として最高記録を保持することになったが、その記録はトム・クルーズが「ミッション:インポッシブル(1996年)」と「宇宙戦争(2005年)」で更新している。しかしスーパーヒーロー映画だけだと、その記録は未だ破られていない。

■2位:ロバート・ダウニー・Jr/「アベンジャーズ(2008年)」のトニー・スタークことアイアンマン役で5.000万ドル(約50億円)
ダウニー・Jrが2008年の「アイアンマン」第1作目で獲たギャラは50万ドル(約5,000万円)と、4年後の「アベンジャーズ」の僅か100分の1であった。なぜ、「アベンジャーズ」のほうがそれだけ多かったかといえば、この時ダウニー・Jrは興行収益のパーセンテージを含めた契約を交わしており、映画が歴代の興行収益で第3位となった結果である。

■3位:クリスチャン・ベイル/「ダークナイト(2008年)」のブルース・ウェインことバットマン役で3.000万ドル(約30億円)
「バットマン・ビギンズ(2005年)」でのベイルの基本的なギャラは、「バットマン&ロビン」でのジョージ・クルーニーのギャラより安く、「ダークナイト」でようやく1,000万ドル(約10億円)に跳ね上がった。加えて先のニコルソンやダウニー・Jr同様、興行収益のパーセンテージ契約でプラス2.000万ドル(約20億円)、合計3.000万ドル(約30億円)の稼ぎとなったのだ。

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1位:ジャック・
ニコルソン
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2位:ロバート・
ダウニー・Jr
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3位:クリスチャン・
ベイル
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4位:アーノルド・
シュワルツェネッガー
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5位:ウィル・
スミス

■4位:アーノルド・シュワルツェネッガー/「バットマン&ロビン/Mr.フリーズの逆襲(1997年)」のヴィクター・フライズことMr.フリーズ役で2.500万ドル(約25億円)
「バットマン・シリーズ」の中でも、もっとも駄作と評判の「バットマン&ロビン」は、シュワルツェネッガーが鳴り物入りでMr.フリーズ役を演じた。「Allow me to break the ice(俺が氷を溶かそうじゃないか)」や「Alright everyone- Chill!(よし、みんな−冷たくなれ!)」といった迷台詞で彼は2.500万ドル(約25億円)を稼いでいる。

■5位:ウィル・スミス/「ハンコック(2008年)」のジョン・ハンコック役で2.000万ドル(約20億円)
スミスはアル中のスーパーヒーロー、ハンコックを演じて2.000万ドル(約20億円)のギャラを獲得し、その映画が世界市場で稼いだ興行収益は6.2億ドル(約620億円)を記録した。

■6位:ヒュー・ジャックマン/「ウルヴァリン:X-MEN ZERO(2009年)」のローガンことウルヴァリン役で2.000万ドル(約20億円)
「X-MENシリーズ」からのスピンオフとして「ウルヴァリン」が製作された時点で、ジャックマンはそれほど役作りをしなくても形が出来上がっていた。とはいえ、2.000万ドル(約20億円)のギャラを稼いでいる。

■7位:スカーレット・ヨハンソン/「アベンジャーズ2(2015年)」のナターシャ・ロマノフことブラック・ウィドウ役で2.000万ドル(約20億円)
ヨハンソンが初めてブラック・ウィドウ役で登場したのは2010年の「アイアンマン2」で、その時のギャラが40万ドル(約4,000万円)であった。そして去年、「アベンジャーズ・アセンブル」へ出演した後、彼女のギャラはドラマチックに増え、次の「アベンジャーズ2」で2.000万ドル(約20億円)の小切手を貰うことが決まっている。

■8位:トビー・マグワイア/「スパイダーマン2(2002年)」のピーター・パーカーことスパイダーマン役で1.750万ドル(約17.5億円)
マグワイアが1作目の「スパイダーマン(2002年)」へ出演した時、彼のギャラは400万ドル(約4億円)であったが、その成功で2年後のシリーズ2作目は1.750万ドル(約17.5億円)にまで増えている。ただし、それからまた少し減り、「スパイダーマン3(2007年)」では1,500万ドル(約15億円)だった。

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6位:ヒュー・
ジャックマン
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7位:スカーレット・
ヨハンソン
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8位:トビー・
マグワイア
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9位:マーロン・
ブランド
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10位:キアヌ・
リーヴス

■9位:マーロン・ブランド/「スーパーマン(1978年)」のジョー=エル役で1.600万ドル(約16億円)
ブランドの「スーパーマン」への出演は、当時、かなりの話題となった。スーパーマンの父親を演じるための実質的な拘束時間が2週間で、ギャラは370万ドル(約3.7億円)プラス・パーセンテージというばかりか、ブランドが提案したのは自分の姿の代わりボーっと光るグリーンの生命体へ声だけ被せる案で、さすがに却下された。こうして完成した映画はワーナーブラザース史上最高の興行収益を記録し、ブランドも合計1.600万ドル(約16億円)を稼いだ。この額へ物価上昇率を計算に入れると、現在なら5,550万ドル(約55.5億円)の価値がある。

■10位:キアヌ・リーヴス/「マトリックス リローデッドレボルーション(2003年)」のトーマス・アンダーソンことネオ役で、それぞれ1.500万ドル(約15億円)
1999年の「マトリックス」へ主演したリーヴスのギャラは1,000万ドル(約10億円)であったが、そのヒットで3部作となったため、2作目と3作目では1.500万ドル(約15億円)ずつ稼いでいる。加えて契約上の様々な収入を合計すると、シリーズ全体としてリーヴスが獲た総額は2億6,200万ドル(約262億円)を下らない。

■11位:シルヴェスター・スタローン/「ジャッジ・ドレッド(1995年)」のジャッジ・ドレッド役で1.500万ドル(約15億円)
イギリスのコミックを映画化した「ジャッジ・ドレッド」でスタローンは1.500万ドル(約15億円)の主演契約を交わし、それが成功することへかなりの希望を抱いていたと後に告白している。しかし、生憎と彼の希望は実現しなかった。

■12位:ハル・ベリー/「キャットウーマン(2004年)」のペイシェンス・フィリップスことキャットウーマン役で1.250万ドル(約12.5億円)
2004年の時点でベリーはハリウッドでもっとも稼ぐ女優であっただけに、彼女が1.250万ドル(約12.5億円)のギャラで主演した「キャットウーマン」の失敗をマスコミはこぞって取り上げた。アカデミー賞のパロディーとして始まったラジー賞でもこの年の最低女優賞に選ばれ、ほとんどの受賞者が出席しないこの授賞式へ彼女は堂々と出席している。

■13位:ベン・アフレック/「デアデビル(2003年)」のマット・マードックことデアデビル役で1.250万ドル(約12.5億円)
「キャットウーマン」ほど悲惨でないにせよ、「デアデビル」も決して成功作とはいいがたい。しかし、長い間のデアデビル・ファンであり、1.250万ドル(約12.5億円)で主演契約を交わしたアフレックにとって、彼なりの入れ込みがある。製作スタジオであるフォックスから続編の主演を打診された場合は、もし1作目よりダークな内容である場合のみ応じるつもりだという。

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11位:シルヴェスター・
スタローン
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12位:ハル・
ベリー
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13位:ベン・
アフレック
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14位:マイケル・
キートン
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15位:ジョージ・
クルーニー

■14位:マイケル・キートン/「バットマン・リターンズ(1992年)」のブルース・ウェインことバットマン役で1.250万ドル(約12.5億円)
キートンが「バットマン・シリーズ」2作目へ復帰する際、彼のギャラは1作目の1,000万ドル(約10億円)から25パーセントアップした。そして、3作目の「バットマン・フォーエバー(1995年)」で1,400万ドル(約14億円)を提示された彼が断った理由は、3作目の監督であるジョエル・シューマカーの方向性に妥協できなかったからだ(代わってヴァル・キルマーがバットマン役を演じた)。

■15位:ジョージ・クルーニー/「バットマン&ロビン/Mr.フリーズの逆襲(1997年)」のブルース・ウェインことバットマン役で1.000万ドル(約10億円)
1990年代でバットマン役を演じた3人目の俳優であるクルーニーは、先にも書いたとおり「バットマン・シリーズ」の中でも、もっとも駄作と評判の「バットマン&ロビン」の主演として汚名を残したわけだが、けっして彼のせいではない。問われるとしたら、1.000万ドル(約10億円)のギャラを払ったクルーニー、2.500万ドル(約25億円)を払ったシュワルツェネッガーの他、クリス・オダネル、ユマ・サーマン、アリシア・シルヴァーストーンをはじめとするキャスティングを活かせなかったシューマカー監督の責任だろう。

■16位:ウェズリー・スナイプス/「ブレイド2(2002年)」のブレイド役で1.000万ドル(約10億円)
スナイプスが「ブレード・シリーズ」3本でいくらぐらいのギャラを稼いだかはっきりしないが、税務申告上は「ブレイド2」1作で1.000万ドル(約10億円)ということになっている。彼自身が3部作の主演ばかりでなくプロデューサーを兼ねていたのも、はっきりしない理由の1つだ。

■17位:ライアン・レイノルズ/「グリーン・ランタン(2011年)」のハル・ジョーダンことグリーン・ランタン役で900万ドル(約9億円)
俳優としてどれぐらいの収入なのか、レイノルズはあまり公開したがらないタイプだが、噂では「グリーン・ランタン」のギャラが900万ドル(約9億円)という。また、今後はこのシリーズ以外、「ウルヴァリン:X-MEN ZERO」のデッドプール役へ彼が復帰する可能性もある。

■18位:ニコラス・ケイジ/「ゴースト・ライダー2(2012年)」のジョニー・ブレイズことゴーストライダー役で750万ドル(約7.5億円)
ケイジは、このシリーズ2作目で750万ドル(約7.5億円)のギャラを稼いだものの、それ以降の続投へは興味をなくしたようだ。

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16位:ウェズリー・
スナイプス
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17位:ライアン・
レイノルズ
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18位:ニコラス・
ケイジ
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19位:ジェニファー・
ガーナー
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20位:ミッシェル・
ファイファー

■19位:ジェニファー・ガーナー/「エレクトラ(2005年)」のエレクトラ役で300万ドル(約3億円)
ガーナーは、この映画以前にもエレクトラ役で「デアデビル」へ出演している。そのスピンオフともいえるこの映画のギャラが「デアデビル」同様300万ドル(約3億円)で、興行的にはどちらも失敗作であった。だが、彼女は満足している。なぜならば、エレクトラ役なくして今の良人ベン・アフレックとの出会いもなかったからだ。

■20位:ミッシェル・ファイファー/「バットマン・リターンズ(1992年)」のセリーナ・カイルことキャットウーマン役で300万ドル(約3億円)
ファイファーがこのキャットウーマン役で受けた300万ドル(約3億円)のオファーは、最初に同じ役のオファーを受けたアネット・ベニングより額が200万ドル(約2億円)多かった。ベニングは妊娠で降板せざるを得なくなり、結局ファイファーで決まったのである。

 以上が20位までの稼ぎ頭である。スーパーヒーロー映画と限らず、わずか1本の映画への出演料が3億円から60億円といえば、その背景には様々なドラマがあるはずだ。ひょっとしたら、その裏のドラマは映画よりもよっぽど面白いかもしれない。そう思いませんか?

横 井 康 和      


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