クラフトビールの夜


 最近はロサンゼルスと限らず日本でも増えてきたのがクラフトビールの店です。そこで、まず地ビールとも呼ばれるクラフトビールの定義とは?・・・・・・米ブルワーズ・アソシエーションによると、(1)小規模であること、(2)独立していること、(3)伝統的であることの3つの条件を満たしているということとなっています。

 1番はじめの「小規模」の条件は年間生産量が600万バレル(約70万キロリットル)までとされていますが、これも2011年1月までは200万バレルまでとされていたことを思えば、今後、変更される可能性があるでしょう(この変更はボストン・ビール醸造所が200万バレルを超える見込みになったため)。続く「独立」の条件は、クラフトビール・メーカー以外の酒造メーカーが所有したりコントロールしていないということです。そして3番目の「伝統的」に関しては、麦芽100パーセントのビールを主力商品としているか、その大半が麦芽100パーセントのビールであることとされています。もっとも、独特のフレーバーのためその他の原料を使っている場合、麦芽100パーセントにこだわる必要はありません。

 ただ、この定義がアメリカにおけるものであり、これをそっくりそのまま日本へ転用するのは難しいでしょう。(1)小規模の条件は日米だと生産量の桁が大きく違います。(2)独立に関して言えば、日本では日本酒メーカーや観光会社が母体となっているクラフトビールがあるので、それを定義の境界線とすると範囲が狭くなってしまうため現状とそぐいません。(3)伝統や麦芽100パーセントの概念は、発泡酒や第3のビールという酒税法の違いが有るか無いかという点で違ってきます。日本でのクラフトビールの定義は、日本独自の事情を考慮して今後考えていくべき課題です(便宜上、料理の写真へ番号を付けてありますが、これらの番号は店と無関係です)。

Arts District Brewing Company
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■Arts District Brewing Company

www.artsdistrictbrewing.com
828 Traction Ave., Los Angeles
213-519-5887

 2015年12月にオープンして1年余りの「Arts District Brewing Company」は、ロサンゼルスでもまだ少ない店内でビールを醸造するガストロパブ(高級なビールや食べ物を提供するバーとレストランを兼ねた飲食店)の1軒です。15バレルの醸造が可能で、年間3,300バレルのビールを生産しています。種類はゴールデンエールやスタウトからIPAまでオリジナル9種類です。

 17,000平方フット(約1,600平方メートル)の店内は、500人が収容できるメイン・ルームとバー、そして表のパティオへは更に90人が収容できます。醸造パブの一部はフォトブースや、ピンポン、コーンホール、ダーツ、ヴィンテージのスキーボール10台を含む様々なバー・ゲームのコーナーもあり、退屈しません。また、この店がユニークなのはシェフ、ニール・フレイザーが作った食べ物の出し方で、店と隣接したテイクアウト・ウィンドウから購入するシステムになっています。

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 写真は左から「バー・カウンターの奥に並ぶタンク(#1)」、「4種類のクラフトビールは左から東京エール、スタンブリン・ダブリン・ニトロ・アイリッシュ・レッド、メトロ・ゴールデン・エール、スプリッテド・サイソン(#2)」、「バー・バーガー(#3)」、「黒コメのサラダ(#4)」、「ポップ・シュリンプ天ぷら(#5)」。

Beer Belly
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■Beer Belly

www.beerbellyla.com
532 S. Western Ave., Los Angeles
213-387-2337

 「Beer Belly」はクラフトビールと独自の凝った料理へ焦点を絞ったビール・バーです。地元ロサンゼルス郡各地から仕入れたクラフトビールを取り揃え、そのブームを支える品質と創造性の一端を担っています。彼らにとってクラフトビールが意味するものは、前向きな姿勢の意識の表われなのです。そんな彼らのセレクションの中には1本が33ドル(約3,600円)というジャバ・コーヒー風味のビール、インペリアル・エクリプス・スタウトなどもあります。

 ちなみに、このBeer Bellyがあるのはコリアン・タウンのど真ん中と、ちょっと意外な場所ですが、ここ何年かのコリアン・タウンは昔ながらの韓国レストラン以外、「牡蠣食えば・・・」でご紹介した「The Boiling Crab」などアメリカのレストランも増えています。もっとも、The Boiling Crabが南部のフランチャイズであるのに対して、Beer Bellyはアメリカン・スタイルながら韓国人の創作です。したがって、料理の味付けへそれが反映されています。

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#10

 写真は左から「バー・カウンター(#6)」、「インペリアル・エクリプス・スタウト(#7)」、「ベーコンの油で揚げたポテト(#8)」、「アボカドと蟹のサラダ(#9)」、「ポーク・ベリー・チップ(#10)」。

和知
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■和知

wachi.info
京都市中京区高倉通四条上ル帯屋町571 さたけビル4F
075-212-6342

 京都は四条高倉を上がったところ(大丸京都店の裏側)にあるガストロパブ「和知」はクラフトビールと燻製が売り物で、日本、アメリカ、ベルギー等のビールを樽生11種類、瓶で100種類揃えています。店のキャッチフレーズは「手作りのお料理と燻製が地ビールと楽しめる地ビール居酒屋」です。

 あくまでも「ビール・バー」ではなく「地ビール居酒屋」と謳(うた)っているだけあって、ビールばかりでなく地酒、焼酎、カクテル、サワー、地ジュースなど幅広い飲み物のメニューが揃っています。飲み物、食事とも値段はリーゾナブルな反面、500円のテーブル・チャージを取られますので、チラッと立ち寄るには上向きかもしれません。満席のことが多いので、行く時は前以て予約を入れられたほうがいいでしょう。ただし、予約を入れておいてキャンセルする場合、連絡しないとキャンセル料を取られます。

 2〜3年後には、大阪吹田市へ地ビールの醸造所を立ち上げる計画も進行中だそうです。

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 写真は左から「日本、アメリカ、ベルギー等のビールが樽生11種類、瓶で100種類(#11)」、「京都はんなりIPA(#12)」、「燻製の盛り合わせ(#13)」、「サーモンの燻製(#14)」、「チキンアンドチップス(#15)」。

 以前「ハンバーガー・コンツェルト」でご紹介した「Father's Office」も、ガストロパブが流行りだす前からクラフトビールと料理で人気がありました。

横 井 康 和      


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