映画と離婚


 新年早々、あまり縁起のいいテーマとはいえないが、ハリウッドではどうしてもこのテーマが付きまとう。そして、そのパターンにはいくつかのレベルがあって、最悪なのは泥沼化したパターンだ。そこへ親権が絡むと話はますますややこしくなる。いっぽう、昔から「子は鎹(かすがい)」というとおり、夫婦の関係が終わっても親子の関係は一生続くもので、その親子の絆から離婚した夫婦が仲良くしているパターンは珍しくない。また、子供がいなくて離婚後も仲のいい元夫婦はいる。

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ブラッド・ピットとアンジェリーナ・ジョリー
 そこで本題へ入る前に、参考知識として1つだけ説明しておきたい。ハリウッドのスター夫婦と限らず、アメリカで離婚する場合、昔なら不倫などがバレれば不利となり、下手をすれば財産のほとんどを取られたりした。映画などで妻が良人(あるいはその逆)の浮気調査を私立探偵へ依頼する筋書(プロット)は、皆さんお馴染みだろう。ところが、最近そういうシーンはない。というのも四半世紀以上前に法律が変わって、離婚した夫婦は理由がなんであれ財産を半分ずつ分配することと決まったのである。理由は、浮気調査を私立探偵へ依頼するだけならまだしも、そういう事実がない相手を陥れようとしたり、離婚裁判はかなり怪しくなってしまったからだ。

ブラッド・ピットとアンジェリーナ・ジョリー
 ということで、以下8組のケースを見ていきたいと思うが、最初はブラッド・ピットとアンジェリーナ・ジョリーである。一昨年(2016年)9月19日、和解し難い不和を理由にロサンゼルスで離婚を申請したジョリー、直後から、申請の数日前にピットが自家用ジェット機内で長男のマドックスと口論、暴力をふるった疑惑が浮上した。おしどり夫婦として有名ながら、じつは教育方針をめぐってしばしば意見が対立していた2人、機内で酩酊し、息子に当たり散らす良人を見て、アンジーは子供たち全員を連れて家を出た。

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トム・クルーズとケイティ・ホームズ
 素早い行動にピットは完全に不意をつかれ、大麻使用や飲酒癖、共演女優マリオン・コティヤールとの浮気説まで、次々とネガティブな情報を流されっぱなし。この戦術は、ジョニー・デップとアンバー・ハードの離婚でデップ側へついた女流弁護士によるものだ。ジョリーが彼女を雇った後、夫妻はロサンゼルス郡児童保護局の提案した一時的な親権内容を合意、ジョリーが子供たちの監護権を持ち、ピットには訪問権が与えられる。夫婦、家族でカウンセリングを受け、ピットは不定期の薬物とアルコール検査も受けることになった。

トム・クルーズとケイティ・ホームズ
 妻から突然離婚を突きつけられたもう1人がトム・クルーズだ。2012年6月、主演作「オブリビオン」の撮影でアイスランドに滞在中、当時の妻、ケイティ・ホームズがニューヨーク州の裁判所へ離婚を申請。母娘2人で暮らし始めた。それまで実際の拠点はカリフォルニア州だったのを、離婚や親権争いに関する裁判が有利に運ぶという理由から、数ケ月前からニューヨークでアパートを借りて滞在、離婚成立後もそのままニューヨークを拠点としている。

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ジョニー・デップとアンバー・ハード
 ピット/ジョリー夫妻と比べて、夫婦間に何の兆しもなく、クルーズへは完全な寝耳に水状態。当時6歳だった娘スリの親権争いが必至と思われたが、世間の晒し者になるのを嫌ってか、離婚協議は2ケ月でスピード合意、慰謝料はなしで娘の養育費として年40万ドル(約4,400万円)をクルーズが支払うことで離婚が成立した。なお、冒頭で「離婚した夫婦は理由がなんであれ財産を半部づつ分配」と書いたが、子供の養育費あるいは結婚時の契約があった場合は別だ。

ジョニー・デップとアンバー・ハード
 続いて比較的記憶に新しいのがジョニー・デップとアンバー・ハード、離婚を申請したハードはデップのDVを示唆する写真(あざができたセルフィー、めちゃくちゃに破壊された自宅の様子など)やデップのアシスタントとのメッセージのやり取りを公開し、いっぽうのデップ側は「アンバー(・ハード)が話をでっち上げ、犠牲者のふりをしている」と猛反発した。元パートナーのヴァネッサ・パラディや娘のリリー・ローズ・デップがデップを擁護するコメントを発表、ハードが「離婚条件を呑まないなら、メディアへあることないことをぶちまける」と脅迫していたという友人の証言を出すなど、連日のように双方の中傷合戦となった。

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オーランド・ブルームとミランダ・カー
 最初から慰謝料目当てで結婚したのでは? と言われたハードは「お金目当てじゃない」と抗弁していたが、結局は700万ドル(約7.7億円)の和解金をジョニーが支払うことで決着。ハードは潔く全額をチャリティへ寄付すると発表したが、デップ側が分割払いの最初の支払を彼女にではなく、寄付先の団体へ直接支払ったことを税金控除を狙った節税対策だと非難し、離婚成立後も戦いは続いているようだ。

オーランド・ブルームとミランダ・カー
 子供がいないデップ/ハードと違って、オーランド・ブルームとミランダ・カーは夫婦としての関係が終わっても、最愛のわが子と親という関係は生涯続くものという好例だろう。「離婚をしても、子どもの両親としてサポートし合い、友好的な関係を続けます」とはセレブの離婚声明の定番フレーズである。それぞれ新しいパートナーとの生活が始まっても、子どもたちと過ごす時は元の配偶者も一緒に家族の時間を楽しむのが正解かも。

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アレック・ボールドウィンとキム・ベイシンガー
 2013年10月、5歳の息子フリンがいるカーとブルームは電撃離婚をしたが、発表翌日には親子3人でニューヨークの街を自然な笑顔で散歩、円満離婚を印象づけた。最近ではケイティ・ペリー、エヴァン・シュピーゲルというそれぞれの現在のパートナーを交えて、両家を行き来する家族ぐるみのお付き合いを実践中である。

アレック・ボールドウィンとキム・ベイシンガー
 同じ子供がいても、泥沼化した親権争いで離婚後も確執が続いたのはアレック・ボールドウィンとキム・ベイシンガーだ。結婚7年目の2000年に破局し、その2年後、離婚が成立しながら、当時幼かった一人娘アイルランドの親権争いはメディアも巻き込み、苛烈を極めた。母が娘を引き取り、父は定期的に面会するという形で収まったが、ボールドウィンは精神的に不安定なベイシンガーが母親の責任を果たせないと主張、対してベイシンガーはボールドウィンが怒りを抑えることができないと指摘した。

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ブルース・ウィリスとデミ・ムーア
 それを裏付けるごとく、2007年には当時11歳のアイルランドへ当てたボールドウィンの暴言ボイス・メールが暴露されて騒ぎとなる。電話をかける約束を忘れた娘の携帯へ彼は、「傲慢で非常識な子豚」と罵倒するメッセージを残したのだ。だが、当の娘は「いつものことだから、全然気にしてなかった」と語った。その後、アイルランドはリハビリ施設へ入所、両親の離婚によるトラウマ克服のためとあって、ボールドウィンとベイシンガーはようやく両親として娘を支える関係に到達しているようだ。

ブルース・ウィリスとデミ・ムーア
 ボールドウィン/ベイシンガーと同じく2000年に離婚したのが、オープンな家族形態の先駆けだったデミ・ムーアとブルース・ウィリスだ。離婚直後、娘3人の育児に専念するためハリウッドから距離を置いたムーアは、ウィリスの所有するアイダホ州の農場へ移住し、独立記念日や感謝祭、クリスマスはもちろん、娘たちの学校のイベントのたびにウィリスも農場へ通っていた。女優となった長女ルーマーが、「離婚した両親をもつ友人のように、母親と父親の家を行き来する必要はなかった。家族はいつも一緒だった」と語っている。

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ベン・アフレックとジェニファー・ガーナー

 また、3人の娘をもうけながら離婚するも、ムーアが2005年アシュトン・カッチャーと再婚した後、ウィリスは引き続き休暇の家族旅行へ参加していた。とはいえ、やはり気まずさがあったのかもしれない。それも一因だったのか、ムーアとカッチャーは2011年に破局、2年後離婚した。

ベン・アフレックとジェニファー・ガーナー
 2002年から交際を始めたベン・アフレックとジェニファー・ロペスといえば、ハリウッドでもおしどりコンピとして知られ、結婚は時間の問題と思われていた。それが突如として破局を迎え、2005年アフレックはジェニファー・ガーナーと結婚する。そして10年後の2015年、離婚の意向を発表したものの、進展なし。アルコールとギャンブルを再開したことやアフレックと子どもたちのナニーの浮気疑惑が理由と見られるが、一男二女の子育てを優先し、離婚の申請はしていない。

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ショーン・ペンとロビン・ライト
 子どもたちを連れて互いの撮影現場を訪問し合ったり、休暇も一緒に過ごしているが、パートナーとしては終わっている様子だ。世間へ知れ渡り、もはや仮面夫婦ですらないが、わが子たちのためには現状維持が最善と考えているようである。

ショーン・ペンとロビン・ライト
 ドラマ・クイーンという言葉があるけれど、スターはやっぱり激情型の性格が多い。ちょっとしたきっかけで感情が爆発、売り言葉に買い言葉で離婚を決意したものの、いざとなるとなかなか踏み切れないカップルも少なくない。ショーン・ペンとロビン・ライトの場合、まさに波乱の結婚生活といえるだろう。2人は2007年に一度離婚を申請、 その後それを取り下げたり再申請したりと紆余曲折を経て2010年離婚が成立。その後も2人の子供ディランとホッパーが成人となるまで子育てで協力し、良好な関係であった。

 しかし、2015年シャーリーズ・セロンと婚約の末、破局したペンは、最初の妻で歌手のマドンナと仲睦まじくしている姿を目撃され、女優ミンカ・ケリーとも短い期間だったが噂となった。しかし、ここ最近は浮いた噂がないいっぽう、ライトはペンと離婚後、15歳年下の俳優ベン・フォスターと交際、2013年婚約したが2015年破局している。最近では、この2人(ペンとライト)がよりを戻しているという噂がもっぱらだ。

 以上8組の元夫婦は、ハリウッドのほんの一例である。たとえば、結婚、離婚を繰り返した往年のスターたちを見ると、マリリン・モンロー、オードリー・ヘプバーン、エリザベス・テイラーなど、きりがない。3度結婚してどれも短命に終わったモンロー、1回の婚約と3度の結婚と最後の同棲に失敗したヘプバーン、テーラーの場合は何と8度も結婚している。最近でもハリウッドの離婚スターが多いといえど、彼女たちのような華やかさはない。

 最後に結婚が絡むアメリカの法律で日本と違う顕著な部分をもう1つだけ挙げておく。アメリカで離婚する時、基本的に財産は相手が半分取るのともう1つ、結婚する時、苗字を変える必要はなく、こちらはご存知のかたも多いだろう。この2つは生活へ大きく影響を及ぼす。とくに後者は憲法上、女性(か婿養子の場合は男性)の人権へ係わる問題だ。今の日本政府がいくら「女性が活躍できる社会」などと叫んだところで、仕事をしている女性は結婚後、(婿養子でない限り)元の苗字を(本名として)名乗りたくとも名乗れなかったり、離婚後、再婚できない期間が男女で違っている。あるいは首相のお友達が強姦しても揉み消されるうちは、「女性が活躍できる社会」などちゃんちゃらおかしい! ハリウッドのセクハラはいったん問題になったら、大統領でさえハーヴェイ・ワインスタインの件は揉み消せないのだ。

横 井 康 和      


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