天高くヒーロー肥ゆる秋・・・その結果?
「天高く馬肥ゆる秋」も終わりつつある今、ハリウッドではセクシーな水着姿からほど遠いシェイプのスター達が目立つ季節になってきました。スリムなダンディーで慣らしたリチャード・ギアやデンゼル・ワシントンを最近街で見かけたら、顔だけでなく身体も太めになっていたのを始め、もともと油断すると肥満してしまうタイプのジョン・トラボルタやキアヌ・リーブスも「食欲の秋」が祟ったらしく、中年太り気味の体型となりつつあります。あげくの果ては、新バットマンに抜擢されたジョージ・クルーニーまで小太り気味と、ビバリーヒルズあたりのトレンディーなレストランで美食三昧のツケが、今スター達へ回ってきたって感じです。スライ・スタローンも5〜6キロのオーバーウェイトながら、これは新作“コップランド”での警察官の役作りという立派な理由があるとか。さて、女性軍はといえば、数年前、徹底したダイエットとワークアウトの結果、素晴らしいフィットネス・ボディーを造り出した歌手のジャネット・ジャクソンが、以前のポッチャリ型体型に戻りかけ。また、新バットガールのアリシア・シルバーストーン("クルーレス")も少々肥満気味という以外、皆さん真面目にシェイプ・アップしているようです。
親の七光り軍団3>
日本の芸能界では珍しくないジュニア俳優ですが、実力主義のアメリカでは親の名前ばかりじゃ、まずスターの座を獲得できません。むしろ、アカデミー賞受賞俳優ジョン・ボイトの娘アンジェリーナ・ジョリーや、名作“地獄の黙示録”の主演俳優マーティン・シーンの息子でチャーリー・シーンの兄エミリオ・エステベス("マイティー・ダックス1〜3")のような、親の後光を受けず活躍している人が目立ちます。現在ハリウッドで注目されているジュニアたちの筆頭は、すでにアカデミー賞を射止めたミラ・ソルビノ("ゴッドファーザー"等の脇役ポール・ソルビーノの娘)、トム・ハンクス監督作品“すべてをあなたに”へ出演したリブ・タイラー(ロックバンド“エアロスミス”のヴォーカリスト、スティーブン・タイラーの娘)、主演作“エマ”の演技が評判のグウィネス・パルトロー(女優ブライス・ダナーの娘)あたりです。その他、監督として注目されているのはフレージャー・ヘストン(俳優チャールトン・ヘストンの息子)、スターとして君臨しているジュニアなら、往年の名優ヘンリー・フォンダの孫娘でピーター・フォンダ("イージーライダー")の娘ブリジェット・フォンダ("訣別の街")や、これまたアカデミー賞俳優ジョージ・C・スコット("パットン")の息子で、イタリアン・レストランがテーマとなった話題作“ビッグ・ナイト”の監督出演キャンベル・スコット("シングルズ")、それに悪役俳優ブルース・ダーンと女優ダイアン・ラッドの娘ローラ・ダーン("ジュラシック・パーク")等もいます。みんな最初はエージェントやスタジオ重役への紹介という形で親の援助を受けているようですが、後は本人の実力次第。名優ミッキー・ルーニーの息子テディー・ルーニー、スティーブ・マックィーンの息子チャッド・マックィーン、往年の美男子俳優タイロン・パワーの息子タイロン・パワー・ジュニア等、鳴かず飛ばずの人達もいるわけです。これから最も期待できそうなジュニアが、今年のニューヨーク映画祭出品作品のフランス映画“三つの命と唯一の死”で、イタリアの国際的スターでもある父親マルチェロ・マストロヤンニと共演しているチアラ・マストロヤンニ(母親はフランスの大女優カトリーヌ・ドヌーブ)、反面、今までで最も悲惨なデビューを飾ったのは、父フランシス・フォード・コッポラ監督作品“ゴッドファーザー3”に出演し、才能のなさを暴露してしまったソフィア・コッポラでしょう。なお、冒頭のエミリオ・エステベスはスペイン系移民2世の父親の姓を名乗っており、またアンジェリーナ・ジョリー(21歳)の場合、本名がアンジェリーナ・ジョリー・ボイトで、これは父親が将来「親の七光り」と言われないよう、ラストネーム(姓)にも使えるミドルネームを付けたのだそうです。最近、“ハッカーズ”で共演したイギリス人俳優ジョニー・リー・ミラー("トレイン・スポッティング")と親に無断で電撃結婚したばかりのアンジェリーナ、来春公開予定の次回作“プレイング・ゴッド”では超人気TV番組“Xファイル”のスター、デビッド・デュカブニーと共演したり、公私とも立派に一人立ちした感がありますね。
期待の年末!
クリスマスから新年にかけての年末シーズンは、夏休みと並ぶ映画業界最高の稼ぎ時なだけ、各社とも力が入ります。目白押しの話題作で、今シーズン僕が選んだ推薦作品を公開順にリストアップしてみると・・・・・・
“デイライト”(12月6日全米公開)
“スペシャリスト"、"暗殺者”と2作続けて不作だったにもかかわらず、1、750万ドルという巨額なギャラで主演しているシルベスター・スタローン、自称、この製作費8、000万ドルの大型アドベンチャー作品が最後のアクション映画だそうです。スライ(シルベスターの略称)演じる元救急処理班主任が、トンネル内に閉じこめられたニューヨーカーを危機から救う、いわば「トンネル版ダイハード」ともいえるストーリーで、ニューヨーク市は、あまりの内容の過激さに撮影許可を出さず、ローマのシネシッタ・スタジオへ巨大なニューヨークの地下トンネルを再現して撮っています。監督は“ドラゴンハート”のロブ・コーヘン。
“エージェント”(12月13日公開)
ある日突然、職を失い、妻や友人からも見捨てられる冷静で敏腕のスポーツ・エージェントが、親友のフットボール選手("アウトブレイク"のキューバ・グッディング・ジュニア)の支えで再起してゆく姿を、トム・クルーズはなかなか渋い演技でこなしています。ユーモラスな面と純情な面を兼ね備えた人間像が、うまく表現されており、また脚本監督のキャメロン・クロウ("シングルズ")は、彼のヒット・デビュー作“セイ・エニシング”で毎年卒業パーティーを開いていた変人("フライ"のエリック・ストルツが好演)を再び同じ役柄で登場させるあたり、ずいぶん洒落ているじゃありませんか!(「8月1日最新情報」に関連記事)
“マーズ・アタック”(12月13日公開)
製作費7、000万ドルを投じ、奇才ティム・バートン監督("バットマン")が'50年代のモンスター映画、'60年代のSFスリラー映画、'70年代の災害映画("大地震"、"タワリング・インフェルノ"等)をまとめて風刺した大型パロディー映画。'90年代も“ジュラシック・パーク"、"ツイスター"、"ID4”と、メッタヤタラ破壊しまくる映画の人気は衰えず、その勢いに乗ってヒットが予想される作品です。ジャック・ニコルソンとグレン・クロース("危険な情事")が、ちょっと間抜けで不満だらけの大統領夫妻を演じ、圧巻はCGアニメーションを駆使した火星人の攻防戦。ニコルソンが一人二役で金髪のラスベガスの不動産屋にも扮しており、こちらは彼自身のアイデアだとか。また、あいかわらず元気メキメキのトム・ジョーンズお父さんもガンバッています。こうご期待!(「7月16日最新情報」に関連記事)
“ゴースト・オブ・ミシシッピー”(12月20日公開)
1963年に起こった黒人公民権運動家メドガー・エバース殺害事件の裁判で、30年後、ようやく被告("エルサルバドル"のジェームズ・ウッズ)を有罪へと導く白人検事の物語。役作りの上で30歳老けるウッズの熱演も見事ですが、光っているのはウッピー・ゴールドバーグ扮するエバースの未亡人といえるでしょう。実在のエバーズの家族も自身の役で出演し、名監督ロブ・ライナー("スタンド・バイ・ミー")が南部に根強く残る人種偏見をドラマチックに描いています。
“天使の贈りもの”(12月20日公開)
1947年度製作の、危機に陥った教会を助けるため地上へ降りた天使と教会メンバーのラブ・ロマンス“ビショップズ・ワイフ”のリメイク版です。監督はペニー・マーシャル("ビッグ")で、今年の「最もセクシーな男」に選ばれたデンゼル・ワシントン("クリムソン・タイド")とホイットニー・ヒューストンが共演しています。撮影はかなり盛り上がったらしく、教会でメンバーが歌うシーンを撮っている時など、みんな、ペニーの「カット!」と叫ぶ声も無視して歌い続けるほどの熱気で、しまいにホイットニーは「我々が呼んだ神様が来てるのよ!」とマイクをつかんで絶叫する興奮度。カメラを回し続けたペニーは、このシーンをいったいどう編集するのか、それも見所の一つですね。
“エビータ”(12月20日公開)
アルゼンチンの国民的英雄ともいえる女性、エバ・ペローンの政治的出世をテーマに、アンドリュー・ロイド・ウェバー("オペラ座の怪人")が書いた予算5、500万ドルのミュージカル映画。ヒロイン役のマドンナはミッシェル・ファイファーやメリル・ストリープ等の候補を経て決定し、監督もオリバー・ストーンの降板後、アラン・パーカー("愛と悲しみの旅路")が抜擢されたという曰くつきの作品です。また、ロケ地のアルゼンチンやブダペストでは、いぜんカトリック教会からマドンナへ“ライク・ア・バージン"のビデオで教会を屈辱したとクレームがついたり、撮影後半はお腹も出始め、いろいろある中を無理やり時間内に撮り終えたという気がしなくもありません。共演のスペイン人俳優アントニオ・バンデラス("デスペラード")の存在感は凄いのですが、政治的なテーマだけにヒットは難しいかも?・・・・・・最近ママとなったマドンナが、どれだけ話題を呼べるかがカギでしょう。
“ローズウッド”(12月20日公開)
1923年、フロリダの裕福な黒人社会が白人のリンチで滅びるという出来事は、1994年まで知られることなく歴史の陰にひっそりと埋もれていました。この史実に基づき、“ボーイズ'ン・ザ・フッド”のジョン・シングルトン監督が“ローズウッド”を製作する際、彼はリサーチのため南部で8ケ月を過ごしています。その結果、「黒人の自分でさえ信じられなかったストーリー」と言うだけあって、84人のスピーキング・パート(台詞有りの出演者)を巧みに使った、なかなかの演出です。
“ラブ・アンド・ウォー”(12月25日公開)
第一次世界大戦に従軍して負傷した19歳当時の文豪、アーネスト・ヘミンブウェイの追憶的作品。クリス・オダネル("処刑室")とサンドラ・ブロック("評決のとき")の売れっ子コンビが、若き日のヘミングウェイと彼が恋する年上の看護婦に扮した、どことなく往年の名作“慕情”を彷彿とさせる映画です。監督は“ガンジー”でアカデミー賞を受賞し、“ジュラシック・パーク”の怪老人役でも有名なイギリスのリチャード・アテンボロ。じつは当初、ジュリア・ロバーツがヒロイン役で決定していたところ、最近あまり売れてないのに1、200万ドルのギャラを要求したため降ろされ、1、000万ドルで出演合意した人気女優サンドラに決まったという内情もあります。
さて、今年の冬将軍を征するのはどの映画でしょうか?
G-ファイル
日本でも人気のあるサスペンス番組“X-ファイル”は、超能力現象やUFOをテーマにしたヒットTVシリーズですが、今シーズンますます活躍しているのはその医者兼科学者の女性FBIエージェント、スカリー役が好評のジリアン・アンダーソンです。脚本上、役柄の幅も広がり、共演のモルダー役、デビッド・デュカブニーと同等の存在感を持つほどになりました。ただ、主演映画の企画が決定しているデビッドのあとを追うごとく、複数のスタジオから主演プロジェクトの誘いを受けている彼女ながら、“X-ファイル”でのギャラは何とデビッドの半分という現状。2人の契約が切れるまで先は長く、それまで待ちきれなくなったジリアンが製作のフォックスへ契約更改を求める交渉を開始し、デビッドと同額のギャラを要求した結果、フォックス側は、それならスカリー役を番組から抹消するという脅迫作戦に出たようです。今や独特のセックス・アピールと決して微笑まないクールな態度で、番組の看板娘(?)の感があるジリアン、現在日曜日の夜9時というゴールデンタイムで全米トップの視聴率を上げる超人気番組も、彼女なくして成り立たないのでは?・・・・・・という巷の噂どおり、この勝負、僕は赤毛の美女の勝ちとみました。
(1996年12月1日)
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