ファミリー・ビジネス
ブラッド・ピットとグウィネス・パルトローのハリウッド・パワー・カップルが、ヒット作“セブン”以来、久方ぶりで共演するコメディー“デュエット”は、8月下旬にクランクインを予定しています。日本から世界的なブームへと広がりつつある「カラオケ」の世界がテーマとなったこの映画、監督はグウィネスの父親ブルース・パルトロー(TVシリーズ"エド・マクベインの87分署")で、ブロ−ドウェイ版アカデミー賞といえるトニー賞受賞女優である母親のブライス・ダナー("3人のエンジェル"、写真上)も出演を希望しており、なんだか家族ぐるみの企画になってきました。演技だけでなくブラッドの歌いっぷりが興味津々(しんしん)であるほか、やはり注目されているのは結婚間近と噂される2人の息の合った「デュエット」ぶり、婚約発表後も飾らぬ人柄とお互いへの優しい思いやりがなかなかの評判です。娘の人気のおかげなのか最近売れっ子のブライスは、話題の新進監督エド・バーンズ("彼女は最高")の新作“ロングタイム・ナッシング・ニュー”でロッカーのボン・ジョビと共演し、ローレン・ホリー("サブリナ")の母親役を演じます。家族ぐるみといえば、同じく夫婦共演企画を進行させているのが、アントニオ・バンデラス("エビータ"、写真下)とメラニー・グリフィス("ミルク・マネー")のカップルです。タイトルは“パームビーチ"、フロリダのビバリーヒルズとして知られるパームビーチを舞台に、ベネズエラのタンカーがデパート・チェーンの持ち主の豪邸へ激突する物語は、やや“スピード2”の二の舞の感が拭えません。また、メラニーと赤ちゃんを携えて“マスク・オブ・ゾロ/怪傑ゾロ”を撮り終えたばかりのアントニオとはいえ、その前にマイケル・クライトン("ロストワ−ルド")原作、ジョン・マクティアナン監督("ダイハード3")の“イーターズ・オブ・ザ・デッド”が待ち受けています。
追記: |
この記事(アーティクル)をアップロードした日、ピットとグウィネスは婚約解消を発表しましたが、映画のほうは予定どおりクランクインするそうです。 |
|
| |
| |
カンヌ情報
ちょうど50周年を迎え、例年以上の盛り上がりをみせた今年のカンヌ国際映画祭も、今村昌平監督の“うなぎ”がパルム・ドール賞に輝き、“シーズ・ソー・ラブリー”への友情出演で主演男優賞を射止めたショーン・ペン(写真)と、いろいろな話題を呼びながら幕を閉じました。そこで耳にした最新情報が・・・・・・ | |
売れっ子ロペス、クルーニーの相手役に!
いま最もホットな女優ジェニファー・ロペス("アナコンダ")が、新バットマンとして期待を集めているジョージ・クルーニー主演作“アウト・オブ・サイト”で相手役に抜擢されました。連邦刑務所から脱獄した服役囚(クルーニー)の人質となりながら、彼を愛してしまう女性連邦保安官の物語。“ゲット・ショーティー”以来ハリウッドの熱い注目を浴びているエルモア・レナード原作で、監督は“セックスと嘘とビデオテープ”の鬼才スティーブン・ソーダーバーグが久々の登場です。
ビノーシェ、契約間近!
アカデミー受賞女優ジュリエット・ピノーシェ("イングリッシュ・ペイシェント")がぞっこんと言われる“ルル・オン・ザ・ブリッジ"、彼女の出演はほぼ確実という噂です。演奏中に銃撃されたハービー・カイテル("コップランド")演じるジャズ・サックス奏者が、精神と肉体の回復途上で若き女優(ピノーシェ)と触れあうドラマで、タイトルはこの女優が名作“パンドラの箱”の主役ルルを演じることに由来しています。やはりカイテル主演の傑作“スモーク”を書いたポール・アウスターが監督の予定。
幼少のダース・ベイダー役決定!
いよいよリハーサルが始まった“スターウォーズ第4部”は、配役が決定済みのリアム・ニーサム("シンドラーのリスト")やイワン・マクレガー("トレイン・スポッティング")に加え、幼かれしダース・ベイダーであるアナキン・スカイウォーカー役は“ジングル・オール・ザ・ウェイ”や“ミルドレッド”の好演で注目された8歳のジェイク・ロイドが演じることになりました。世界中から期待されるこの映画は、ロンドンのリーベスデン・スタジオを皮切りに、アフリカのチュニジア、そしてイタリアのナポリでロケを敢行します。
もうチャーリーとは呼ばないで!
金持ちの女性と結婚し、作家になる船乗りの物語“マーチン・エデン”は、若き日の文豪ジャック・ロンドンが自らの体験に基づいて書いた小説を映画化したものです。主演のチャーリー・シーンは、先日どういうわけか、今後チャールズ・シーンと呼んで欲しいと宣言。この文芸作品をきっかけとして名前も堅苦しく改め、演技派への転向を狙っているのかも?・・・・・・と思いきや、その後、かしこまった名前の甲斐なく、ガールフレンドに暴行をはたらいたとかで訴えられ、執行猶予つきの地域サービスという判決を受けました。人間、名前が変わっても性格までは変わらないようですね!?
多忙な英雄、怪傑ゾロ!
メキシコ・ロケを終了したばかりの“マスク・オブ・ゾロ”は、40歳で捕らわれの身となったドン・ディエゴが、20年後、釈放されて若き2代目ゾロ(アントニオ・バンデラス)を鍛え上げるアクション・ドラマです。製作費6,500万ドルというこの大作へ主演する名優アンソニー・ホプキンスは、2週間の撮影の合間をぬって“アミスタッド”でのジョン・クインシー・アダムス大統領役もこなしています。また、“アミスタット”を監督するスティーブン・スピルバーグが“マスク・・・”の製作総指揮合を兼ねると、みなさん大忙し! 歳を感じさせぬエネルギッシュなホプキンスは、すでにブラッド・ピットとの共演作“ミート・ジョー・ブラック”が先週クランクインし、そこでメディア王を演じています。
はまり役
4月1日の新企画情報でお知らせしたビリー・クリスタル("ファーザーズ・デー")主演のコメディー“マイ・ジャイアント”は、ワーナーブラザーズ傘下のキャッスル・ロック製作で着々と進行しています。低俗なエージェント役のクリスタルが発見して一攫千金を夢見る巨人役には、最近、青少年への悪影響を配慮して弾丸を意味する“ブレッツ”から“魔法使い”にニックネームを改めたばかりのNBAワシントン・ウィザードのセンターで、身長2メートル30センチのジョージ・ミューレサン(写真上)が抜擢されました。演技は無経験のミューレサンですが、最近爆発的な売れ行きのビバリーヒルズ、ビジャン社「マイケル・ジョーダン・オーデコロン」をパロディー化したTVコマーシャルへ出演して、そのコミック・タッチを披露しています。昨年度の全スタジオ作品平均製作予算のちょうど丁度半分に該当する3,000万ドルで製作されるこのコメディー、ロケ地は現在撮影が進行中のプラハ(チェコ)以外、ニューヨーク、ラスベガス、ロサンゼルスと広域であるばかりか、撮影日数60日の強行スケジュールです。しかし、脚本とプロデュースを担当するクリスタルは自信満々で、ミューレサンのユニークな魅力を生かした爆笑コメディーにしてみせると言っています。巨人といえば、NBAのスーパースター、シャックことシャキール・オニール(写真下)が主演する夏休み映画“スティール”は、コミック・ブックの人気キャラクターを映画化したものです。題名通り、鉄(スティール)の鎧に身を固めた正義の味方が、巷のワルたちを退治するスーパー・ヒーローもの。本業のバスケットでは自分のチーム(ロサンゼルス・レイカーズ)がプレイ・オフから早々と姿を消してしまった反面、副業ではラップ・レコード制作、リーボックやペプシの宣伝マンとして大活躍のシャック、今回が3本目の出演作になります。エリート大学バスケット選手を演じた“ハード・チェック/栄光なきシュート・全米カレッジ・バスケの罠”と、巨人魔法使いに扮した“カザーム”の2本は今いちだっただけ、今度こそヒットを期待したいものです。 |
| |
昇り竜ミラマックス
ミラマックスといえば、今年のアカデミー賞で話題を独占した“イングリッシュ・ペイシェント”や“スリング・ブレイド”をはじめ、驚異的なボックス・オフィス(興業)収益を上げた“スクリーム”など、多くの話題作を製作し、いま最もホットなインディペンデンス・スタジオといえるでしょう。そのミラマックスが製作を予定している中から、おもしろそうな企画を拾ってみました。
“イン・トゥー・ディープ(関わり過ぎ)”
今年のアカデミー助演男優賞受賞男優キューバ・グッディング・ジュニア扮する刑事が、アンダーカバー捜査で別人になりすますうち二重人格者となるスリラー。
“ダンシング・クイーン”
結婚式当日、式場へ行けなくなった新郎と、バチェラー・パーティー(独身最後を男だけで祝う結婚式前夜の恒例パーティー)に雇われたストリッパーの友情物語で、主演はニコール・キッドマン("ある貴婦人の肖像")。
“フリーキー・ディーキー(狂気のディーキー)”
ヒット作“ゲット・ショーティー”や現在撮影中の“ジャッキー・ブラウン”(原題“ラム・パンチ")と同じく、エルモア・レナードによる小説の映画化で、クエンティン・タランティーノが監督予定。
“テイスト・フォー・デス(死の味)”
アメリカで人気のコミック・ブック“モデスティー・ブレイズ”を、これまたクエンティン・タランティーノと彼の製作パートナー、ローレンス・ベンダー("パルプ・フィクション")の人気コンビが映画化を企画中。
“エイリアン・ラブ・トライアングル(宇宙人の三角関係)”
3部からなるオムニバス形式の映画を、それぞれビル・フォーサイト("ローカル・ヒーロー/夢に生きた男")、ジョン・ホッジ("トレイン・スポッティング")ら3人の監督が担当し、中でも鬼才ホッジの監督する、自分の妻がじつは宇宙人の男性だったというストーリーが面白そう!
“シェークスピア・イン・ラブ”
“ロミオとジュリエット”を執筆するシェークスピアの恋物語で、製作は大物プロデューサー、エド・ズウィック("戦火の勇気")
“シャル・ウィ・ダンス”
“フェノミナン”で手腕を発揮したジョン・タートルタブが監督する、日本で大ヒットした同名映画のアメリカ版。
ほかにもロバート・ロドリゲス監督("デスペラード")作品の吸血鬼アクション“フロム・ダスク・ティル・ドーン”や、ド迫力スリラー“スクリーム”続編など、エキサイティングな企画が進むミラマックスです。親会社ディズニーの資本力や、これまで育(はぐく)んできた若手クリエーター軍団の冴えたビジョンで、これからもハリウッドの台風の目となる独立プロダクションであり続けるでしょう。
グリシャム神話
ジョン・グリシャムの法廷小説といえば、爆発的な売れ行きもさることながら、1993年の“法律事務所”以来、“ペリカン白書"、"依頼人"、"評決のとき”と、映画化されるすべてがメガヒットを記録してきました。死刑囚を扱った“チェンバー/凍った絆”はアメリカ国内収益が1,500万ドルと、初めての不作(?)に終わったものの、ハリウッドはそれに威嚇されることなく、5作品で5億ドルを稼ぎ出した元弁護士作家への信仰が相変わらず続いています。ベストセラー・リストのトップに君臨する最新作“パートナー”を除く全作品の映画化権は売却済みで、当ブルーページ「2月の書評」でも取り上げた“陪審評決”が昨年売却された時は800万ドルという破格の値段がつきました。正体不明の青年陪審員ニックに揺さぶられるタバコ裁判を扱ったこの作品は、ちょうど大手タバコ会社と喫煙による肺ガンで死亡した被害者の遺族が裁判中という現実も絡み、とてもタイムリーな話題作です。若いながら冷静で戦略家のニックを演じるのは、“真実の行方”の演技が印象的だったエドワード・ノートン(写真上)でほぼ決定しています。監督は“依頼人”と“評決のとき”の演出がグリシャム好みであったジョエル・シューマーカー、1998年の公開予定です。この究極の法廷スリラー以外、比較的最近売却されたもう1作“相続人”は、“ハムレット”のイギリス人俳優ケネス・ブラナ主演、“プレイヤー”のロバート・アルトマン監督で今年の秋の公開が決まっています。撮影監督は香港シネマ出身でヒット作“さらば、わが愛/覇王別姫(はおうべっき)”のチャン・ウェイ・グー。自分の父親を精神病院へ入れようとする女性に雇われた南部の弁護士の葛藤を描いたこの作品は、これまでのような小説の映画化でなく、無名時代のグリシャムが最初から脚本として書き下ろしました。6年前、プロデューサーのジェレミー・タネンバームと製作契約を交しながら、著書の爆発的な人気でお蔵入りしたという曰(いわ)くもあったり興味はつきません。同じく今秋公開が予定されている“レインメーカー”は、A級(クラス)俳優でもあるマイケル・ダグラスがプロデューサーとして600万ドルで購入し、主演はダニー・デ・ビートと“戦火の勇気”での熱演が光ったマット・デイモン(写真下)、監督はフランシス・フォード・コッポラ監督というゴールデン・チームで撮り終えました。また、老人を食い物にする大手保険会社と戦う若き弁護士役にデイモンが抜擢された時、彼と張り合った相手は前述のエドワード・ノートンという皮肉なエピソードもあります。ともあれ、グリシャム小説がその魔術のようなストーリー展開や、いったん読み始めると頁をめくらずにはいられない緊迫感で読者や観客を魅了する原点は、すべての作品が弁護士時代の経験に基づくフィクションだからでしょう。そのリアリティーは紙の上ばかりか銀幕上でも楽しめる画期的なエンターテイメントとして膨らみ、まだまだ勢いは衰えそうもありません。「グリシャム神話」が、もっともっと読者や観客を楽しませてくれますよう!
(1997年6月16日)
Copyright (C) 1997 by DEN Publishing, Inc. All Rights Reserved.