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(1997年10月16日)          




新時代の宇宙家族


ロビンソン親子

スミス博士

今年の3月にこのページで紹介した“宇宙家族ロビンソン”こと“ロスト・イン・スペース”が、いよいよロンドン・ロケを終えて編集段階(ポスト・プロダクション)へ入りました。1965年から1968年にかけて絶大な人気を誇ったオリジナルのTVシリーズは、わが「ハリウッド最前線」の製作スタジオもあるCBSテレビが制作し、当時は画期的な“宇宙もの”として脚光を浴びた番組です。それから30年、“スパイ大作戦(ミッション・インポッシブル)”や“ビーバーちゃん"、そして“ブレディー・バンチ”など、'60年代の人気番組が次々と映画化されるなか、“ロスト・イン・スペース”も7,000万ドルという膨大な予算をかけて蘇ります。白黒時代の「紙で作られたロケット」や「ファスナーの見える宇宙人」などは当然ながら影を潜め、ハイテクSF映画に衣替えした新時代の宇宙家族が遭遇する冒険の数々・・・・・・宇宙飛行士と生化学者のロビンソン夫妻を演じるのはオスカー受賞者ウィリアム・ハート("マイケル")とミミ・ロジャーズ("マンハッタン・ラプソディー")で、その一家や長女の恋人でもあるウェスト大佐(人気TVシリーズ“フレンズ”のマット・ラブランク)たちのアドベンチャー映画というばかりか、そこへ父と息子、母と娘たちとの交流や家族の絆といった要素が盛り込まれ、ドラマ性を深めているようです。また、TV番組ではトラブル・メーカーだったウィル少年が、むしろ逞(たくま)しいキャラクターに描かれていたり、フライデーの愛称で親しまれたロボットは、“マペット”映画で有名なジム・ハンソンのクリーチャー・ショップによってハイテク満載の特異な存在へとイメージ・チェンジをはかりました。そんな中で、エイリアンと結託して陰謀を企(くわだ)てたり、ウィルを利用して地球への帰還を企(たくら)んだり、TV時代と変わらぬ卑劣な悪役ぶりを発揮するスミス博士を、名優ゲーリー・オルドマン("エアー・フォース・ワン")が熱演しています。題名どおり宇宙をさまようロビンソン家族と彼らの運命を握る宇宙船ジュピター2号の冒険は、来年4月3日に幕開けです。





“ニューヨークの救世主”コンビ

黒人アクション・スターといえば、僕の友人ウェスリー・スナイプス("ファン")や“ガンマン”のマリオ・バン・ピーブルズなどを思い起こしますが、アカデミー助演男優賞("グローリー")受賞者として存在感の強い演技派デンゼル・ワシントン("天使の贈りもの")も、今度は大がかりなアクション作品の主演が決定して張り切っています。最近作“戦火の勇気”での演技はオスカー候補と言われながらノミネートされず、黒人団体からアカデミーへ偏見だという抗議があったのは有名な話です。そのデンゼルがFBIのエリート集団「テロ対策部隊」を率いる役柄で、過激化してゆくテロに立ち向かうという新作“ブロ−バック”は、来年1月早々クランクインが予定されています。テロ活動のあげく、とうとう戦時下状況へ置かれたニューヨーク市ブロンクス区を舞台に展開するこのクライシス(危機)アクション大作は、ローレンス・ライトの同名のベストセラー小説が原作となり、エド・ズウィックの監督も話題の1つです。先の“グローリー(1989年)”や“戦火の勇気(1996年)”でデンゼルを演出した実績のあるズウィックは、仕事ばかりか私生活でもデンゼルと友人同士、息の合ったコンビ復活が期待されています。洋の東西を問わず、役者と監督のコンビは昔から多くの名作を生み出してきました。“タクシー・ドライバー(1976年)”以来、“レイジング・ブル(1980年)"、"グッドフェローズ(1990年)”から“カジノ(1995年)”へ至る6本を撮ってきた「マーチン・スコセッシ/ロバート・デ・ニーロ」コンビや、“追憶(1973年)”を皮切りに“コンドル(1975年)"、"愛と哀しみの果て(1985年)"、"ハバナ(1990年)”など6作を製作した「シドニー・ポラック/ロバート・レッドフォード」コンビが西の代表選手なら、東には“静かなる天使(1949年)"、"醜聞(スキャンダル)(1950年)"、"羅生門(1950年)”から6本目の“七人の侍(1954年)”を経て“赤ひげ(1965年)”で決別するまで14作を残した「黒沢明/三船敏郎」コンビがいます。こうした共同製作(パワー・コラボレーション)チームとなりつつある「エド・ズウィック/デンゼル・ワシントン」コンビの過去2作は人間ドラマだったのが、次回は緊張感溢れるサスペンス・アクションです。新たな分野で2人の相性(ケミストリー)がどのような結晶を見せてくれるか、今から楽しみですね!





スター・パワーと流動的キャラクター


ダライ・ラマ(左)の耳元へ何や
ら囁くハリソン・フォード(右)

アレック・ボルドウィン(左)と共演
中のアンソニー・ホプキンス(右) 

夏のブロックバスター・ヒット“エアー・フォース・ワン”でボックス・オフィス・スター(劇場収益のトップ俳優)の座をアピールしたハリソン・フォードは、ハワイでロマンチック・コメディー“セブン・デイズ・シックス・ナイツ”を撮っている現在、早くも来年2月にクランクインする“エイジ・オブ・アクエリアス”での役柄が話題となっています。この、名作“フィールド・オブ・ドリームス”の脚本監督を手がけたフィル・アルデン・ロビンソンの新作は、なんと戦火のボスニアが舞台のラブ・ストーリーで、共演が“イングリッシュ・ペイシェント”のイギリス人女優クリスティン・スコット・トーマスです。当初、ハリソンの役どころは、フェリーを利用して戦地へ食料や生活物資を運搬する金目当ての傭兵(マーセナリー)だったのが、脚本の改稿を重ねるうち、災害や戦争に巻き込まれた人々を助ける救援隊のリーダーと、キャラクターはすっかり変わってしまいました。傭兵(マーセナリー)から英雄(ヒーロー)へと過激な変身ぶりですが、ブラッド・ピットと共演した“デビル”での前例もあります。最初はニューヨーク市警の警官という小さな役柄が、度(たび)重なる改稿の末、スター級の役どころへ仕立てたハリソンだけに、今回の書き直しはどの程度彼の意向が反映しているのか興味津々(しんしん)です。こうして考えると、流動的キャラクターもスター・パワーの尺度なのかもしれません。もっとも、キャラクターを書き換えさせる理由は場合によっていろいろあります。これまた渋い演技で人気のアンソニー・ホプキンス("羊たちの沈黙")といえば、最新作“ワイルド”が好評です。この映画の撮影中、強度の脊髄炎を押して演技を続けるアンソニーへの気遣(きづか)いから、脚本は少しでも彼のスタント場面を減らせるキャラクターに書き換えつつロケを進めたらしく、テイクが終わるや待機中のスタッフはマットレスを持って駆けつけ、そこへ横になって痛みを凌(しの)ぐという状況でした。アレック・ボルドウィン("陪審員")との共演で、巨大な熊に追われる飛行機墜落事故の生存者を演じるアンソニー、崖を滑り落ちたり、熊から逃れようと必死で山中を走ったり、雄大なカナディアン・ロッキーで繰り広げられるアクション・シーンの多くが彼自身でこなさなくてはなりません。映画を見終わって、今更ながらアンソニーのプロ意識に敬服させられましたが、その後もますます多忙なようです。この撮影終了直後、脊髄炎の手術を受けて以来、スピルバーグ監督作“アミスタッド"、年老いた怪傑ゾロを演じた“マスク・オブ・ゾロ”の2本を撮り終え、今はブラッド・ピットと共演する“ミート・ジョー・ブラック”の撮影中で、来年1月早々ダニエル・クインのベストセラー小説を映画化した“イシュマエル”でキューバ・グッディング・ジュニア("エージェント")との共演が控えています。結局、一向に衰えそうもないペースで突っ走るスター・パワーは、流動的でないはずの脚本のキャラクターさえ敵(かな)わない勢いといえそうです。





スター vs パパラッチ

パリでダイアナ妃が不慮の交通事故死を遂げて以来、ハリウッドではパパラッチと呼ばれる過激マスコミ軍団とスター達の“冷戦”が、いっそう激しさを増してきました。もともとはオートバイでスターを追いかけ回すハイエナのようなメディア集団としてイタリア映画に登場したパパラッチ、ダイアナ妃急死直後、彼らの露骨さを激怒するトム・クルーズがCNNテレビへ文句の電話を入れたことで、既に勃発していた冷戦を煽る結果となったようです。パパラッチを暗殺者軍団と呼び、ダイアナ妃の悲惨な死こそ、賞金稼ぎのようなパパラッチのせいだとまくし立てたクルーズはじめ、自らパパラッチの執拗なカメラ攻勢を体験するシルベスター・スタローンも、彼らを「法に守られたストーカー」だと非難しています。一方のパパラッチたちは、スターからの中傷へ挑むがごとく、9月初旬ローマで行われたプラネット・ハリウッドのオープニングに出席するスタローンへ、カメラを頭上に掲げてプロテストしたり、9月中旬のエミー賞授賞式では、マスコミに批判的な俳優の写真撮影を拒否するという形で異議を主張していました。“バットマン&ロビン”の主役スター、ジョージ・クルーニーも以前からパパラッチ撲滅運動を提唱してきた1人であり、彼の場合、TVのエンターテイメント・ニュース・ショーが彼の恋人の情報を流したのを怒って、それ以来、インタビューはおろか、自分が主演する映画の取材もさせない徹底ぶりです。狼のようなパパラッチから必死でプライバシーを守ろうとする彼の姿勢は数多くのスターたちが賛同し、きっかけとなった取材拒否は印象的な出来事として記憶に残っています。そんな状況下で彼の主演作“ピースメーカー”のプレミアが、先月の22日と23日にニューヨークとロサンゼルスで行われ、そこではプロテストするカメラマンと、必死で特ダネ写真を撮ろうとするパパラッチの内部分裂風景すら見られました。映画自体、スピルバーグ監督の製作会社ドリームワークス・スタジオ第1弾というばかりか、共演がトム・クルーズの愛妻ニコール・キッドマンであるあたりは、なんとなく因縁めいた気がしないでもありません。その他、妻で女優のキム・ベーシンガー("L・A・コンフィデンシャル")と生まれたてのベビーを撮ったパパラッチへ暴行を働いたアレック・ボルドウィン("ゴースト・オブ・ミシシッピー")や、その昔、妻だったマドンナとのジョギング風景を撮ったカメラマンを殴り飛ばしたショーン・ペンなど、パパラッチに関するトラブルは今やハリウッドの日常茶飯事です。有名スターだって同じ人間、ダイアナ妃事件をきっかけに、お互いのプライバシーが尊重されるハリウッドへ成長して欲しいと望むのは無理な願いなのでしょうか?





オスカー・ルック

毎年決まって、アカデミー賞授賞式のホットな話題の1つとなるのが、出席する女優たちの衣装です。数ケ月前からお気に入りのデザイナーと打ち合わせ、お互いのファンやマスコミの注目を引くべく、水面下では「女の戦い」が繰り広げられます。最近はL・Aの有名なデザイナーがオスカー・ナイトにスターたちの着用したイブニング・ガウンや優雅なドレスのレプリカ(コピー)を一般価格で売り出して注目されたり、「スター・ゲイジング」という言葉が生まれるほど、オスカー会場の華やかな入場風景は、いかにもハリウッド的雰囲気に包まれ、それをウットリと見つめるファンの姿が印象的です。古くは「プラチナ・ブロンド」の元祖ジーン・ハーロウはじめ、華奢(きゃしゃ)な肢体をタイトなドレスで着飾ったラナ・ターナーやクレオパトラ風アイ・メイクでファンをあっと言わせたエリザベス・テーラーなど、その時代の流行さえリードしたのがアカデミー授賞式の絢爛たる衣装でした。その今までは会場の赤い絨毯越しの憧れでしかなかった「夢のドレス」へ手が届くということは、ハリウッドのグラマー(華やかさ)に魅せられた世界中の女性映画ファンへ画期的な出来事なのでしょう。一連のオスカー・ラインを売り出したL・Aのデザイナー、アレン・B・シュオーツ氏が自分の頭文字を取ってABS“オスカー・ウォッチ”ブランドと名づけた製品は、たとえばニコール・キッドマン("ピースメーカー")着用のクリスチャン・ディオール作オリーブ色シャートリューズ風ガウン、コートニー・ラブ("ラリー・フリント")着用のベルサーチ作純白ドレス、スーザン・サランドン("デッドマン・ウォーキング")着用のアルマーニ作ベルベット色ドレス、シゴニー・ウィーバー("エイリアン")着用のナルシソ・ロドリゲス作バーガンディー色ドレスと、どれをとっても絢爛豪華な衣装ばかりです。2から14までサイズを取りそろえ、価格が250ドルといえば、ニコールのレプリカなら本物のようなミンクの縁取りといった高価な細工はもちろん省いてあります。購入する年齢層も25歳から55歳と幅広く、ハリウッドのエレガントさを手軽に着られる喜びが、年齢を超えて女性達を魅了するということなのでしょうか。この“オスカー・ウォッチ”コレクション、L・Aではメイシーズ、サックス・フィフス・アベニュー、ブルーミングデールズといった高級デパートか、パサデナとサンタモニカの各ABS直営店で販売されています。ロサンゼルスを訪れる際、「庶民に手が届くハリウッドの栄華」をご自分で、あるいはガールフレンドへのお土産に試すのも悪くないかも!?




(1997年10月16日)

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