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(1998年10月16日)          




新企画情報


“テイクダウン”

数年前、指名手配で逃亡中のハッカー、ケビン・ミトニックの逮捕に貢献したコンピュータのセキュリティー専門家、下村ツトムの原作をベースにしたサスペンスです。ラッセル・ウォング("ジョイラック・クラブ")が下村を演じ、ミトニックは今年の5月このページでご紹介したスキート・ウルリッチ("ニュートン・ボーイズ")が演じます。


“スクリュー・ルーズ”

第二次大戦で命を救ってくれたアメリカ人へ自社の半分を譲ろうと決意するイタリア人の大富豪ながら、息子がようやく探し当てた恩人(製作主演のメル・ブルックス)は、なんと入院中の精神病患者となりはてていました。父親の命令で恩人をイタリアに誘拐した結果、メチャメチャの事態が・・・・・・「ネジの緩んだ奴」というタイトル通り、ブルックスお得意のドタバタ・コメディー、モンテカルロとミラノで今月(10月)クランクイン。

“スマグラーズ・ムーン”

'70年から'80年代へと東南アジアを拠点に大麻密輸組織を暗躍させた実在の人物、シェーファー兄弟の冒険と犯罪を描いたサスペンス・ドラマです。深海撮影のダミー会社を運営しながら大麻密輸で巨額を得た末、悪運尽きて逮捕された彼らは6年の刑に服し、その「現代版海賊」の片割れをブラッド・ピットが演じる他、兄弟役の共演者は現在キャスティングが進んでいます。

“タレンティッド・ミスター・リップリー”

マット・デイモン主演と“イングリッシュ・ペイシェント”のアンソニー・ミンゲラ監督で話題騒然のドラマ、共演は偶然にもマットの親友ベン・アフレック("アルマゲドン")のガールフレンド、グエニス・パルトロゥです。8月末イタリアのでクランクイン以来、どうやらクリスマス寸前まで撮影が終わりそうにありません。

“シーズ・オール・ザット”

“ラスト・サマー”で人気を獲たフレディー・プリンズ・ジュニアが演じる主人公の高校生は、クラス一のブスを優雅なプラム・クイーン(卒業パーティーの女王)へ仕立て上げるべく大奮闘、その様をコミカルに描いた“マイ・フェア・レディー”風のロマンチック・コメディーです。“ピアノ・レッスン”のアナ・パクインが彼を助ける妹役で、8月下旬クランクインしました。

“ランダム・ハーツ”

過激なブラック・ユーモアで話題を呼んだ“ローズ家の戦争”の原作者ウォーレン・アドラーが書いた小説を、今回はシドニー・ポラック("サブリナ")の監督で映画化します。同じ飛行機事故で伴侶を亡くした男女が知り合い、恋人同士となったものの、お互いのパートナーは浮気中とわかって大騒動・・・・・・“エイジ・オブ・アクエリアス”の企画が予算の関係で流れたハリソン・フォードとクリスティン・スコット・トーマス("モンタナの風に抱かれて")共演で、この秋のクランクイン、ロケ地はワシントンD・C、ボルチモア、ニューヨークの予定です。

“カムフラージュ”

“裸の銃を持つ男シリーズ”の惚けた俳優、レスリー・ニールセンの持ち味を活かしたパロディー作。重大な事件捜査を依頼された浮かない探偵(ニールセン)が、探偵役を得意とする失業中の役者と組み、例の調子でドタバタを繰り返すパターンとはいえ、ビリー・ボブ・ソーントン("スリング・ブレイド")が脚本へ加わっているため、斬新なアイデアが登場するかも?

“007/ワールド・イズ・ノット・イナフ”

待望のブロズナン扮するボンド第3弾(ボンド映画としては22作目)が、来年1月からトルコのイスタンブール周辺でクランクインします。物語はイギリス人とトルコ人の混血で大富豪の美女が国際テロ組織に誘拐されるところから始まります。彼女を救い出すべく命を受けた007は・・・・・・11月19日の感謝祭に全米とイギリスで封切りを予定しているせいか、お馴染みのボンド・アクションへ色を添えるのが、プレイボーイ・クラブのバニー・ガール顔負けの姿態を駆使する核兵器のエキスパートで“クリスマス”と、いかにも007らしいキャラクターです。監督は“NY検事局”で手に汗握るサスペンスを、そして“愛は霧のかなたに”で繊細なドラマを楽しませてくれたマイケル・アプティド、この作品でどのような監督技をみせてくれるか興味深いところですね!





ハリケーン伝説

無実の身でありながら殺人罪で2度も服役し、'70年代のカルト・ヒーロー的存在だったボクサー、ルーベン・ハリケーン・カーターの波乱に満ちた半生は、以前から格好の映画企画として検討されていましたが、世紀末の今、ようやく実現へと漕ぎ着けました。公民権運動の真っ直中である1969年に服役して以来、無実を訴え続けるカーターの汚名を晴らそうと、時のヘビー級チャンピオン、モハメッド・アリや当時人気絶頂のフォーク・シンガー、ジョーン・バエズ、そして暗殺されたキング牧師のコレッタ未亡人やザ・フー、マービン・ゲイ、スティービー・ワンダーといった大スターが、こぞって釈放運動を進めます。1975年にはボブ・ディランの書いた“ハリケーン”がヒットするものの、彼の刑務所暮らしは続くのです。そんな不運のカーターへ、ついに幸運の女神が微笑むのは1988年、16歳の頃からカナダへ出稼ぎに出ていた文盲の黒人少年レスラ・マーチンがきっかけとなります。仕事先の環境調査団の人々から読み書きを教わったマーチンは、その後トロントへ移住した際、黒人に関する歴史書を読みたいという衝動にかられ、古本屋で1冊の著書と巡り会い、この1ドルで売られていた著書こそカーターの自叙伝でした。感銘を受けたマーチン少年が服役中のカーターと文通を始め、やがてカナダ中の世論を動かし、とうとうカーターの無実を証明して19年間の刑務所暮らしから彼を解放する原動力となるのです。映画は、前途有望の若きボクサーの日々と、彼を陥れた殺人事件が背景となり、無実の服役者と純真な少年の強い絆をテーマに展開します。6年前、ウェスリー・スナイプス主演で企画されたこの“ラザロ・アンド・ザ・ハリケーン”は、今“ヒー・ガット・ゲーム”で素晴らしい演技を見せてくれたデンゼル・ワシントン主演、そして名作“夜の大捜査線”や“月の輝く夜に”などの名監督ノーマン・ジュイソンの演出で動き始めました。人間ドラマとしても、なかなか興味深い作品といえそうです。





ラスト・タイクーン

この「最後の大立て者」という意味合いが、ハワード・ヒューズほどピッタリ合う人物も少ないでしょう。億万長者というだけでなく、'50年代のアメリカを舞台にハリウッド・プロデューサー、航空界のパイオニア、不動産投資家として知られ、晩年は病的なまでの潔癖性がミステリアスな存在へ至らしめています。無菌室に住み、訪問者は玄関先の大がかりな装置で殺菌され、ヘアートニックの代わり最も純粋な航空機用のオイルを使う等、晩年のエピソードは尽きません。そんな現実離れした人物だけに、過去数回、映画化の話が進みながら没となりました("ロケッティアー”他の映画では物語の登場人物として引っぱり出されています)。ところが、最近は自伝映画がハリウッドのトレンドとなったおかげで、視線は再びヒューズへ向かっています。ニュー・リージェンシー・ピクチャーズ("ナゴシエーター"、"ディアボロス/悪魔の扉")がアカデミー俳優ケビン・スペーシー("L・Aコンフィデンシャル")を監督に起用し、奇想天外なヒューズの生涯を描きベストセラーとなった“ハワード・ヒューズ:未公開エピソード”を今秋クランクインの予定でした。この企画は、ケビンが10月からアイルランドで新作“オーディナリー・ディーセント・クリミナル”の撮影に入って棚上げとなったものの、“スネーク・アイズ”でコンビを組んだブライアン・デ・パルマ監督とニコラス・ケイジが、やはりヒューズの企画を進めている他、長年ヒューズ自伝の主演製作を望んでいたウォーレン・ビューティー("ブルワース")も本腰を入れて製作へ取り組むもようです。また、“ポケットいっぱいの涙”で注目された兄弟監督、アレンとアルバート・ヒューズは、ジョニー・デップ("フェイク")の主演をイメージしたヒューズ物を企画中らしく、世紀の大富豪がスクリーンで秘密のベールを脱ぐ日は間近いかもしれません。なお、ロングビーチの豪華客船クイーン・メリー号といえばロサンゼルスの観光名所の1つですが、隣接する体育館のような博物館へ収納された巨大な水上飛行艇スプルース・グースは、やはりヒューズの遺産です。L・Aを訪れる機会があれば、唖然とするほどのスケールをぜひご自分の目で確かめて下さい。一見の価値はあります。





注目の新人

現在、オスカー最有力候補といわれている“プライベート・ライアン”で、主演のトム・ハンクス率いる決死隊の1人、狙撃兵(スナイパー)ジャクソンは印象的でした。聖書の一説を呟きながら敵兵を1人づつ確実に倒してゆくジャクソンを演じたバリー・ペッパー、その彫刻のような横顔と血気迫る演技へ注目したハリウッド人が数多くいる中でも、“ショウシャンクの空に”を監督したフランク・ダラボントは“プライベート・・・”を見た直後、次作“グリーン・マイル”の出演を打診するほどの気に入りようです。“ショウシャンク・・・”同様、ホラー小説家スティーブン・キングの原作をダラボントが自ら脚色監督するこの企画は、1935年の死刑囚専用の牢獄で服役者と守衛たちとの異様な状況を描いた心理ドラマらしく、守衛のチーフ役へトム・ハンクスを抜擢し、すでにクランクインしています。当初、ダラボンドが考えていたバリーの役柄は冷酷で孤独な守衛ペリーだったのですが、いざ会って、その繊細な人柄に触れた彼は、急遽、神経質で繊細な守衛ディーン役へ変更する経緯もあったそうですから、公開されればそれらのキャラクターを比較してみると面白いかもしれません。今年28歳で演技歴は僅か数年のバリーですが、5歳から10歳の頃まで冒険家の父親と南大平洋を大型クルーザーで転々とし、ニュージーランド、トンガといった国々で教育を受けたユニークな子供時代を送っています。大スター、ハンクスと2度目の共演作“グリーン・・・”に胸を弾ませるバリー、再び彼の個性的な演技を見られるのは来年夏の予定です。“テルマ&ルイーズ”のセクシーでワイルドなヒッチハイカー役で突如としてスターダムにのし上がったブラッド・ピットのごとく、これらの2作をきっかけとしてどこまで伸びるか楽しみですね!





臨床映画

1990年に製作されて反響を呼んだ“レナードの朝"、公開間近の話題作“アット・ファースト・サイト”と、自己の臨床体験に基づく著書の映画化が注目される脳神経外科医オリバー・サックス博士は、ソニー傘下のトライスターが新作の映画化権を獲得したことから再び話題を集めています。サックス・ファンの大スターたちは早くも主演争奪戦を始めている“ラスト・ヒッピー”と題したこの新作、悪性脳腫瘍の影響から年老いた今も30年前の精神世界で生き続ける'60年代の花形ミュージシャンが主人公です。'60年代ヒッピー文化の「生き残り」といえば、NBAシカゴ・ブルズを6回優勝へと導いた名監督フィル・ジャクソンや、今なお根強い人気を誇るロックバンド、グレイトフル・デッドの故ジェリー・ガルシア、そして日本でもCMなどでお馴染みの俳優デニス・ホッパーなどが浮かびます。しかし、彼らのような体制派、商業主義に上手く乗り換えて成功した元反体制派と違って、この主人公は30年間のギャップを超えられません。そんな脳神経患者の葛藤と、彼を取り巻く人々との感受性溢れるドラマを、“レナード・・・”でサックス博士役を熱演したロビン・ウィリアムス、蘇る患者レナードを好演したロバート・デ・ニーロはじめ、“アット・・・”で外科手術の結果、初めて視力を獲る生まれつきの盲人を演じたバル・キルマー("セイント")、サックス博士の偉業に感動したパトリック・スチュワート("スタートレック")など、主演希望者は目白押しです。デ・ニーロ演じるレナードが、ある朝突然ロビン扮するサックス博士の目の前で長い昏睡から目覚め、ベッドに座って博士を見つめる劇的なシーンは僕の「心の窓」を開いてくれた感動場面のひとつでもあります。映画と臨床医学という異質の世界を絡ませ、娯楽作品を仕立てる「サックス魔術」の再来を心待ちにしようではありませんか!!




(1998年10月16日)

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