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(1998年11月16日)          




オスカーの晴れ舞台、近々オープン!

かつては栄華を極めたハリウッド大通り一帯も、その後、荒廃の一途を辿ってきました。ところが、最近では地下鉄計画をきっかけとして、その由緒ある地域を再開発する動きが目立ち、ハリウッド離れした大手企業は再び戻っていることが地価の上昇へ現われています。この傾向は当然ながら映画業界も変わらず、スターの手型、足型で世界的に有名なチャイニーズ・グローマン劇場周辺へ、往年の“聖林(ハリウッド)”の活気を呼び戻すべく、総工費3億9千万ドルをかけた一大工事が進行中です。その中で特に注目を浴びているアカデミー賞授賞式のための“コダック劇場(写真)”は3,400席を有し、これまで使用されてきたダウンタウンの“ドロシー・チャンドラー劇場”や“シュライン劇場”と比べて、最初からTV中継を考慮した設計が特徴といえます(第1回目の授賞式はチャイニーズ劇場の斜め向かい“ルーズベルト・ホテル”が使用されました)。観客席の下へ複数のカメラを即時自由に移動できる通路を設(もう)け、各撮影場所を素早く行き来できる上、カメラは目線よりやや高い「ステージが最も映える角度(アングル)」から被写体を狙える仕組みです。そして、P・Aや照明の操作は高さを自由に変えられる専用ブースで行うため、一部の観客へ邪魔になることがありません。また、劇場の反対側では、D・W・グリフィス監督の名作“イントレランス(1916年)”がテーマとなった野外バーチュアル劇場“バビロン・コート・プラザ”も建ちます。2階のバルコニーは洒落た小塔(キューポラ)まである他、プラザ北東部を飾る巨大なアーチが、有名な“HOLLYWOOD”サインを遙かに望む窓枠の役目を果たし、アーチと隣接した巨大なスクリーンへはアカデミー賞授賞式の模様が生中継されるとか・・・・・・このプロジェクトを手がけた有名な建築家ヴォーン・デイビーズは、外観からフロアの材質まで、伝統とハイテクを織り交ぜた画期的な作品を仕上げると張り切っています。チャイニーズ劇場の斜め向かいにあり、数年前、大改装工事で豪華なテーマ映画館として蘇ったエル・キャピタン劇場(改装後の封切り第1弾“ロケッティアー”を見に行った時、冒頭で司会者が出てきた上、ミュージカル風のラインダンスまで始まり驚かされました。しかし、翌週それを見るため再度訪れた時は、あいにく映画の上映だけでガッカリ)といい、今回の大がかりなハリウッド地域再開発といい、「映画の都」へ昔の面影が戻るのは、もうすぐです。20年以上、この地域に住む我がウェブマスター、ヨコチンともども、地元ではその晴れ姿を心待ちにしています!





苦戦するメジャー

−Part T−

ハリウッドの代名詞とさえいえるワーナーブラザーズ・スタジオが、このところ公開作の不調や独立プロ系映画の台頭で苦戦しています。“ファザーズ・デイ"、"ポストマン"、そして夏の話題作“アベンジャーズ”は大転け、従来の「莫大な予算をかけた大作」路線を見直さざる得なくなった結果、製作費1億5千万ドルのアーノルド・シュワルツェネッガー主演作“アイ・アム・レジェンド”が犠牲になったことは、以前もお伝えしました。その他、製作費1億4千万ドルのティム・バートン監督("バットマン")、ニコラス・ケイジ主演作“スーパーマン”が危ういところで、予算の大幅削減とケイジのスケジュール次第では、まだ実現の可能性を残しています。しかし、“評決のとき”の名監督ジョエル・シューマーカーが長年暖めてきた、ヒット・ブロードウェイ・ミュージカル“ドリームガールズ”の映画化企画は没となり、著名なプロダクション・デザイナー、衣装デザイナー、超一流のダンス振付師(コリオグラファー)などと契約交渉を進めていたシューマーカー監督にとって、相当の痛手だったようです。1960年代のデトロイトの貧民街出身でポップス界を席巻する女性ボーカル・グループの物語は、ダイアナ・ロスを中心としたスプリームスがモデルといわれ、3,500万ドルの予算で大物音楽プロデューサー、デビッド・ゲフィン(スピルバーグのパートナー)が製作する予定でした。ワーナーとしては、先の公開作で同じく黒人ポップスター、フランキー・ライマンの生涯を描いた“ホワイ・フールズ・フォール・イン・ラブ(写真)”が不調だったせいか、この期待されたミュージカルも断念しています。トム・ハンクス主演“ユー・ガット・メイル”やケビン・コスナー、ポール・ニューマン主演“メッセージ・イン・ザ・ボトル”へ賭けるワーナーながら、1980年代に没となって20世紀フォックスへ売りさばいた企画“ホーム・アローン”は'90年代にメガ・ヒットという苦い経験があり、“ドリーム・ガールズ”などの没企画も、しばらくは他社へ譲らないことでしょう。
 

−Part U−

数年前の松下電器による買収でも話題を呼んだユニバーサル・スタジオは、娯楽施設(テーマ・パーク)事業としてハリウッド、フロリダ、そして建設中の大阪など、相変わらずの盛況振りを見せています。ところが、肝心の映画製作たるや、相次ぐ不作から現状は厳しいところです。1997年の“ロストワールド”以来、“ビーバーちゃん"、"カル/征服者"、"ジャッカル"、"プライマリー・カラーズ"、"マーキュリー・ライジング"、"アウト・オブ・サイト”と軒並み転けたユニバーサル、ここらで起死回生の大ヒットが必要でしょう。過去の栄光は何処へやら、市場シェアが大手スタジオ中最下位の5パーセントという成績には、松下電気から買い取ったカナダのシーグラム社も堪忍袋の尾が切れる寸前でした。そのピンチを救っているのは、先日(11月7日)の東京国際映画祭でプレミア公開され、翌週(13日)全米で封切られたばかりの“ジョー・ブラックをよろしく(写真)”の滑り出し。死神が憑(とりつ)く主人公を演じるブラッド・ピットはじめ、数々の部門でアカデミー賞候補入りを噂されるほどの評判どおり、はたしてスタジオ側の狙いは当たるかどうか? その他、ユニバーサルの期待を担う年末シーズンへ向けた家族映画“ベイブ/ピッグ・イン・ザ・シティー"、ホラー・クラシックのリメイク版“サイコ"、ロビン・ウィリアムス主演作“パッチ・アダムス”の下馬評もまあまあで、かなりの収益が予想されています。また、年明けはロン・ハワード監督("アポロ13")の“エドTV"、ミイラ映画“マミー”のリメイク版、野球ドラマ“フォー・ラブ・オブ・ザ・ゲーム"、エディー・マーフィーとスティーブ・マーチン共演のコメディー“ボウフィンガー"、ジム・キャリーがコメディアンの故アンディー・カウフマンを演じる“マン・イン・ザ・ムーン”と続き、スタジオ番付最下位脱出はおろか、ひょっとしたら上位カムバックが夢ではないかも?





タッチダウン・フィーバー

秋も深まり、アメリカはNFL(全米フットボール・リーグ)シーズンたけなわ、ハリウッドで俄(にわか)にフットボール熱が高まっています。ユニバーサルは“オウト・オブ・サイト”の主演監督コンビ、ジョージ・クルーニーとスティーブン・ソーダーバーグ監督を起用し、1920年代のフットボール草創期を描いたドラマ(初期の革製ヘルメットを意味する)"レザーヘッド”を企画中です。クルーニーは当然、花形ポシションのクォーターバックを演じます。一方、ワーナーブラザーズが製作する“リーグ”は、当初“グリッドアイアン”のタイトルで企画が進んでいたオリバー・ストーン監督作品であり、コーチ役のアル・パチーノへ加え、デニス・クエイド("ペアレント・トラップ")、キャメロン・ディアズ("メリーに首ったけ")共演、そしてラップの帝王ショーン・パフィー・コームズの映画初出演でも話題を読んでいます。その他、今月封切られたアダム・サンドラー("ウェディング・シンガー")(写真)主演作“ウォーターボーイ”は、水汲係のダメ男がチームのヒーローに生まれ変わるタッチストーン製作のコメディー、そして来年公開のパラマウント作品“バーシティー・ブルース”は、ジェームス・バン・ダー・ビーク("ミステリー・アラスカ")扮する補欠コーターバックとジョン・ボイト("レインメーカー")扮する厳格な監督との葛藤を描いたフットボール・ドラマです。一時期“ノース・ダラス40”や“タッチダウン"、秀作“ロンゲスト・ヤード”など続々と製作されたフットボール映画と比べ、これら'90年代のハイテク技術を駆使した映画では、パワー溢れるフットボールの臨場感や現代的な運動選手のメンタリティーを、どうスクリーンへ反映させるのかが注目されます。





パワー・リスト

業界誌“ハリウッド・レポーター”恒例の「映画監督ランキング」が今年も発表されました。この統計は毎年500人以上の監督を対象に、80人以上の大手映画スタジオ重役や映画劇場主からアンケートを取って採点(100点満点)したものです。製作映画のクォリティーばかりでなく観客の動員能力まで総合的な「監督としての市場性」が審査された今年の結果は・・・・・・?


1位   スティーブン・スピルバーグ("プライベート・ライアン")   99.38点
2位 ジェームス・キャメロン("タイタニック") 97.84点
3位 ジョージ・ルーカス("スター・ウォーズ") 97.53点
4位 マーチン・スコセッシ("カジノ") 90.94点
5位 スタンリー・キューブリック("アイズ・ワイド・シャット")  87.96点
6位 クリント・イーストウッド("マジソン群の橋") 85.49点
7位 ロバート・ゼメキス("フォレスト・ガンプ/一期一会") 84.57点
8位 フランシス・フォード・コッポラ("レインメーカー") 83.75点
9位 ロン・ハワード("アポロ13") 83.33点
10位 クエンティン・タランティーノ("ジャッキー・ブラウン") 83.23点


トップがスピルバーグというのは「やっぱり!」という感じですが、それにしても“E・T"、"ジョーズ"、"レイダース/失われたアーク《聖櫃》"、"ジュラシック・パーク"、"ロスト・ワールド”と、アメリカ国内収益だけで2億ドルを越す監督作5本、上映中の“プライベート・ライアン”はそこへ仲間入り間違いなしといえば兜を脱がざるを得ません。また、監督以外“MIB"、"ツイスター”など収益が2億ドル・クラスのブロックバスター映画を製作総指揮しているのを加えれば、全作品の稼ぎ出した額はアメリカ国内が26億7千ドル、海外が50億ドルと天文学的な数字に昇ります。配給会社やスタジオはおろか、映画へ投資をしない方針の銀行までが彼の企画ならお金を出すのもわかりますね!!




(1998年11月16日)

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