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(1999年3月1日)          




オスカー情報

今年で71回目を迎えるアカデミー賞授賞式、ビリー・クリスタルに代わって起用されたウッピー・ゴールドバーグの司会者ぶりが期待されるところです。その授賞式を振り返り、過去の珍しい出来事やあまり知られていないオスカーの歴史を探ってみると・・・・・・

ヘンリー・フォンダ
キャサリン・ヘップバーン

「背景」に関するトピック

  • アカデミーの正式名称 アカデミー・オブ・モーション・ピクチャー・アーツ・アンド・サイエンス(映画芸術科学アカデミー)
  • 投票権を持つアカデミーのメンバー数 5,371人
  • アカデミーの初回授賞式 1929年5月16日、ハリウッドのルーズベルト・ホテルにて開催され、10ドルの入場料で250人が参加

「年代」に関するトピック

  • 賞の発表に密封された封筒が初めて使用された年 1941年
  • 初めてTV中継された年 1953年
  • 初めてカラー中継放映された年 1966年
  • 授賞式が延期された年
    1938年 大洪水のため1週間延期
    1968年 キング牧師暗殺事件のため2日延期
    1981年 レーガン大統領暗殺未遂事件のため1日延期

「人物」に関するトピック

  • 最も司会を多く務めたスター ボブ・ホープ 単独で7回、共同で10回
  • 初代アカデミー会長を務めたスター ダグラス・フェアバンクス・ジュニア("ゼンダ城の虜"、"コルシカの兄弟")
  • 最年少オスカー受賞スター テータム・オニール 10歳で助演女優賞("ペーパー・ムーン")
  • 最年長受賞スター
    主演男優賞(1982年) ヘンリー・フォンダ、76歳("黄昏")
    主演女優賞(1989年) ジェシカ・タンディー、80歳("ドライビング Miss デイジー")
  • 初の黒人受賞スター ハッティー・マクダニエル "風と共に去りぬ(1939年)”で助演男優賞
  • 同点受賞スター
    主演男優賞(1931年〜1932年) フレデリック・マーチ("ジキル博士とハイド氏")とウォーレス・ビアリー("チャンプ")
    主演女優賞(1968年) バーバラ・ストライサンド("ファニー・ガール")とキャサリン・ヘップバーン("冬のライオン")
  • もっとも多くノミネートされたスター キャサリン・ヘップバーン(12回)
  • もっとも多く受賞したスター キャサリン・ヘップバーン(4回)
  • 受賞を拒否したスター
    ジョージ・C・スコット 主演男優賞(1970年度“パットン大戦車軍団")
    マーロン・ブランド 主演男優賞(1972年度“ゴッドファーザー")
  • 三冠王(プロデューサーとして作品賞の他、監督賞と脚本賞を受賞)
    ビリー・ワイルダー “アパートの鍵貸します(1960年度)”
    フランシス・フォード・コッポラ “ゴッドファーザー2(1974年度)”
  • 同一監督作で2回受賞したスター ダイアン・ウィースト ウッディー・アレン監督作“ブロードウェイと銃弾(1974年)"、"ハンナとその姉妹(1986年)”で助演女優賞
  • 死後ノミネートされたスター ジェームス・ディーン "エデンの東(1955年)"、"ジャイアンツ(1956年)”で主演男優賞
  • 死後受賞したスター ピーター・フィンチ "ネットワーク(1976年)”で主演男優賞
  • 空振りスター 受賞を逃した歴代のスターにはアルフレッド・ヒッチコック、チャーリー・チャップリン、グレタ・ガルボ、ケーリー・グラント、フレッド・アステア、ロバート・ミッチャム、エロール・フリン、エドワード・G・ロビンソン、モンゴメリー・クリフト、スティーブ・マクウィーン、ピーター・セラーズなどがいて、イギリス人名優コンビのリチャード・バートンとピーター・オトゥールに至っては7回ノミネートされながら空振り

"作品”に関するトピック

  • 同一人物役のスターが同時にノミネートされた作品 "タイタニック(1997年)" ヒロイン、ローズの若き日々と老後を演じたケイト・ウィンスレット(主演女優賞)とグロリア・スチュワート(助演女優賞)がそろってノミネートされながら、2人とも受賞は逃がしました
  • 初の成人映画(Xレート)受賞作 "真夜中のカウボーイ(1969年)" 最優秀作品賞

その他、1974年の授賞式で突然ステージへ躍り出たストリーカー(全裸男)に、生放送を通じて唖然とする視聴者の目前で、「自分の貧粗な一物をさらしてしか笑いを誘えないとは、なんとも滑稽なことですね」と言い放ち喝采を浴びた名優デビッド・ニーブンのアドリブなども、アカデミー史上に残る名場面("1974年度アカデミー賞データ”のトピック参照)といえるでしょう。また、1942年から1945年までの大戦中、あのオスカー像が石膏で作られていたことはあまり知られていません。





ゴールデン・ルール

過去のオスカー最優秀作品賞受賞作品を振り返ってみると、そこには一種の法則が見いだせます。そのゴールデン・ルールとは・・・・・・
















その1 「ベストセラー小説を活かせ!」
過去10年間の受賞作品中7本までがベストセラーの本を映画化したものです。ただし、原作はいくら優れていようと、製作の腕が伴わない限り、むしろ小説の映画化は難しいので要注意!?

その2 「タイトルは短く!」
過去20年間、1991年度作“羊たちの沈黙”を除けばすべての受賞作は原題が3単語かそれ以下の短さで、9作品がきっかり3単語のタイトルを使っています。今年の本命候補と目される“プライベート・ライアン(Saving Private Ryan)"、"恋に落ちたシェークスピア(Shakespeare in Love)”は、その好例でしょう。やはり、何事もリズムが大切なのかもしれません(試しに、ご自分の口で英語の原題を言ってみて下さい)。

その3 「ベテラン監督を狙え!」
1977年以来、受賞作の75パーセントはAリスト俳優か3作以上の経験を持つ監督を起用しています。ただ、元オスカー受賞監督の場合は事情が違って、これまで再度監督賞にノミネートされた数少ない受賞監督4人のうち、ミロシュ・フォアマンのみ“アマデウス(1984年)”で“カッコーの巣の上で(1975年)”に続く2度目のオスカーを獲得しました。今年は“プライベート・・・”が受賞した場合、スピルバーグ監督は“シンドラーのリスト(1993年)”と合わせて2人目の例外になる可能性大です。

その4 「モチーフは白人の男性を!」
過去20年間の作品賞は75パーセントが白人の男性を扱っており、昨年“タイタニック”で終止符を打たれるまでは5年連続でこのパターンが続きました。今年も“プライート・・・"、"恋に落ちた・・・”といった「白人男性もの」は有力候補にあがっています。人種差別反対を主張されるかたが気分を害されようと、こればかりはどうしようもないので悪しからず!?

その5 「時代劇をきらびやかな衣装で!」
1977年以来、アメリカが舞台となった現代劇は受賞作のわずか30パーセントで、過去6年間に限るとまったくありません。衣装がきらびやかな「時代もの」は、やはりオスカー人気も高いのでしょう。今年の場合、玄人好みの“エリザベス”や“恋いに落ちた・・・”がそのパターンです。

その6 「喜劇は避けろ!」
過去20年間、コメディーではウッディー・アレン作“アニー・ホール(1977年)”のみが作品賞を受賞しました。とすると、今年の“ライフ・イズ・ビューティフル”は望み薄かも?

その7 「セットは豪華に!」
戦争中の捕虜収容所、歴史的遺跡、古代中国の王宮、沈没した豪華客船など、多額の製作費を投入した豪華セットが醸し出すプロダクション・バリューは、作品賞受賞で欠かせないインパクトを生みだします。過去15年間の受賞作品中13本が最優秀美術賞へもノミネートされた事実は、豪華セットの威力が窺(うかが)えるというものです。“プライベート・・・"、"恋に落ちた・・・"の臨場感溢れるセットは大きなプラスでしょう。

その8 「泣けるテーマを!」
過去の受賞作20本の75パーセントは、テーマへ主人公やその取り巻きの「死」がかかわっています。「泣かせる映画」はハリウッドの根底に流れる永遠のテーマかもしれませんね。“プライベート・・・”のトム・ハンクスが死ぬ場面も忘れがたい印象を残しました。

その9 「争いの中で人間性を描け!」
過去の受賞作10本のうち8本は戦争、大量殺戮、動乱、国家や階級間の闘争を描いた映画で、1992年以後、 全受賞作がそのパターンです。人間を含む動物の生存本能と深く係わる争いは、それだけ観客の心へ訴えかけるものがあるのかもしれません。今年も戦争、中世の劇場闘争、捕虜収容所など、「争い」の映画で作品賞は争われます。

その10 「大スペクタクルを狙え!」
昨年の授賞式でジェームズ・キャメロン監督が言い放った「作品の規模が重要なのだ」という台詞どおり、規模のうち長さは過去20年で上映時間が2時間以下の作品は、たった4回しか受賞していません。1992年以降たるや、受賞作の平均上映時間が2時間40分と長編化し、往年のハリウッドを偲ばせる大スペクタクル映画が主流となっています。今年も上映時間3時間の長編は“プライベート・・・"、"シン・レッド・ライン”と2本ありますね!



エンターテイメントの本質へ教育要素が含まれる以上、格のA級B級を問わず自然淘汰で消えて行く作品にはそれが欠けているのだと思います。こうして過去の受賞作を見ると、ハリウッドはその例外どころか、基本的な体質がやたら硬い印象を受けなくもありません。真面目(ストレート)というか、原作は名作、監督は名人、喜劇は駄目、方向性は大河ドラマ・・・・・・そういえば、日本のNHKがどこか似通ったイメージでは?





スーパー・グループ誕生!

グループといっても音楽は関係なく、34人の大物脚本家が結成した新グループの話題です。そもそも、これまでヒット映画の純利益から配当を獲られるのは限られたA級スターと“タイタニック”のジェームズ・キャメロン監督ぐらいでした。しかし、今回ソニー・スタジオが脚本家34人のスーパー・グループと交した契約は、それを覆し脇役であった脚本家をスター並に優遇する異例の内容がハリウッドの注目を集めています。画期的な契約というは、いま売れっ子のロン・バス("ベストフレンズ・ウェディング")はじめ、合わせて21のアカデミー賞受賞あるいはノミネートされた脚本家グループが、今後4年毎のペースで最低1作をソニーへ提供するというものです。その脚本は作家の最新作と同額で買い取られ、製作配給が終われば、劇場公開、ビデオ、ケーブルTV、ネットワークTV、PPV(ペイ・パー・ビュー)など様々な映画市場からの収益は50パーセントがソニーの純利益となり、そこから製作投資額、配給経費、宣伝広告経費などを差し引いた2パーセントが脚本家へ配給されます。具体的な例をあげると、ソニーはグループの脚本を製作費6千万ドルで映画化し、宣伝広告費および配給経費へ3千万ドルのかけたと仮定して下さい。結果、国外収益が2億4千万ドルだとすれば、ソニーの純利益は劇場サイドと折半後の1億2千万ドルです。製作費と宣伝配給経費が9千万ドルですから残る3千万ドルの2パーセント相当額、つまり60万ドルを脚本家は配当されるわけです。この契約だと、脚本家ばかりでなく、ソニー・スタジオもハリウッドを代表する脚本家の作品を保証されるメリットがあり、今後7年間は既存の大物作家へ、さらにアカデミー賞やWGA(全米脚本家組合)賞を受賞かノミネートされた者、または1作のギャラが75万ドル以上の作家を加えてゆく方針だとか・・・・・・将来はさておき、ここで既存の顔ぶれを見ると、前述のロス、デリア・エフロン("ユー・ガット・メイル")、ノラ・エフロン("めぐり逢えたら")、スコット・フランク("オウト・オブ・サイト")、ブライアン・ヘルゲランド("L・Aコンフィデンシャル")、キャリー・コウリ("テルマ&ルイーズ")、デビッド・コエップ("ロスト・ワールド")、フィル・アルデン・ロビンソン("フィールド・オブ・ドリームス")、エリック・ロス("フォレスト・ガンプ/一期一会")、エド・ソロモン("メン・イン・ブラック")、テッド・タリー("羊たちの沈黙")、トム・シュルマン("いまを生きる")など、音楽の世界なら「夢の共演が実現!」とでもいえそうなスーパー・グループの誕生ではありませんか!





熟年パワー

ポール・シュレイダー監督("アメリカン・ジゴロ")作“アフリクション”といえば、助演男優賞にノミネートされたベテラン、ジェームス・コバーン("ペイバック")演じる冷酷な父親から譲り受けた「傷だらけの性格」に悩む田舎町の雇われ保安官を熱演したニック・ノルティーがアカデミー主演男優賞にノミネートされました。そのノルティーの次作は再びシリアスなドラマ“ホワイト・ジャズ”で、葛藤する汚職と自己嫌悪まみれの警部が彼の役どころ。ジェームズ・エルロイ("L・Aコンフィデンシャル")の1992年度ベストセラー小説を原作に、最近のノルティー出演作同様、大手スタジオ映画とは比べようもないほど予算枠が限られた独立プロの製作です。大手スタジオからはブロックバスター作品へのたびかさなる出演オファーがありながら、それを拒み続けるノルティーは、「金額に目が眩み、納得できない役柄を演じるのは、麻薬患者のようなものさ。もう、後悔する作品へ出る時代じゃないんだ」と言いきってます。いくら出演料や待遇が悪かろうと、自分なりの役作りを楽しめる独立プロ作品に、ある種の「職人気質」を覚えるのでしょう。“48時間"、"アイ・ラブ・トラブル"、"Uターン"などのスタジオ映画へも主演する彼は、“幸福の条件”のハンサムな富豪役を蹴り、その結果、ロバート・レッドフォードが起用されたほか、昨年はスケジュール調整がうまくいかなくて“ワン・トゥルー・シング”を断り、メリル・ストリープの主人役はウィリアム・ハート("ロスト・イン・スペース")が演じることになりました。ちなみに、“アフリクション”のモンタージュ場面は、12歳の息子ブローリー・ノルティーが主人公(ノルティー)の幼年時代を演じています。




(1999年3月1日)

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