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(2019年10月)          




フェニックスのジョーカー

先々月に開催された第76回ヴェネツィア国際映画祭で、アメリカのコミックが原作の映画としては初めて最高賞である金獅子賞を受賞した「ジョーカー」、いよいよ今月(10月)4日から日米同時上映されます。ジョーカーといえば、ジャック・ニコルソンや亡きヒース・レジャーをはじめ数多くの俳優が演じてきたDCコミック最強の悪役で、今回はホアキン・フェニックス(写真)が神がかった演技で狂気と悲哀を体現しました。フェニックスはこの役のため20キロ近く減量したということです。ただ、ジョーカーの誕生秘話を語る本作ですが、DCコミックでは描かれておらず、トッド・フィリップス監督もこれがDCユニバースの一部でなく、独立した作品だと位置づけています。いわく、「本作では、皆が知っていて、愛着を感じているジョーカーを研究し、しっかりした現実的なキャラクター像を作りだしたかったんだ。ジョーカー役は過去にすばらしい俳優が演じているし、すばらしいコミックも描かれ、TV番組も制作されている。新たに描くことがチャレンジであり怖い気持ちもあったけれど、だからこそホアキン(・フェニックス)と私は可能な限り現実というフィルターを通して、自分たちのバージョンを作ろうとした」そうです。なお、フィリップスといえば本作の制作を務めているブラッドリー・クーパー主演作「ハングオーバー・シリーズ」の監督としても知られており、彼が本作で表現しようとしたのは劇中のフェニックスが語る、「人生は悲劇だと思ってた。だが、いまわかった、僕の人生は喜劇だ」という台詞へ凝縮されているとか。そして、フェニックスとロバート・デ・ニーロの掛け合いも見ものでしょう。来年のアカデミー賞のノミネート間違いなしと前評判の高い「ジョーカー」、公開まであと数日の辛抱です。



スタント訴訟

シリーズ第6弾で最終作「バイオハザード・ザ・ファイナル(2016年)」を撮影中の事故で左腕を切断したスタントウーマンのオリヴィア・ジャクソン(写真)が、先日、同作の製作陣を訴えました。ロサンゼルス郡高級裁判所へ出された訴状では、事故が起こったのは2015年9月、そもそもファイト・シーンを撮る予定だったのが、直前になって悪天候の中を危険で技術的に複雑なバイクシーンの撮影へ変更されたそうです。そのシーンはカメラに向かってバイクを走らせ、彼女が到達する直前カメラを頭上へ持ち上げるという筋書ながら機能せず、ジャクソンはフルスピードでカメラに激突しました。彼女の左腕、頭、肩をカメラが直撃して顔の左半分は皮膚が剥離し、昏睡(こんすい)状態から目覚めたのは3週間後・・・・・・「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー(2014年)」、「マッドマックス 怒りのデス・ロード(2015年)」、「アベンジャーズ/エイジ・オブ・ウルトロン(2015年)」をはじめとしたアクション大作で活躍してきたジャクソンですが、この事故によってキャリアを絶たれました。これは製作チームが安全よりも金銭的なものを重視した結果、起きた事故だとして、彼女はプロデューサーのポール・W・S・アンダーソン(主演ミラ・ジョヴォヴィッチの良人で本作を監督)とジェレミー・ボルトらを相手取って訴訟を起こしたのです。医療費も契約時の保険では3万3,000ドル(約363万円)しかカバーされないことが判明した上、健康に戻るよう面倒を見ると約束したプロデューサー陣から医療費の支払いを止められたジャクソンは追いつめられました。医療費が高いアメリカでは死活問題であり、スタント俳優たちが自身の安全をもっと守れるようになってほしいと、いま彼女は戦っています。



ピットは語る

最新作「アド・アストラ」が好評のブラッド・ピット(写真)は、50歳を超えた今なぜSF映画へ挑戦したのかを、「これまで素晴らしいSF映画がたくさんあった。だからこそ、何か新しいものを付け加えられないなら映画を作る意味がない。でも、監督のジェームズ・グレイは面白いアイデアをたくさん持っていたんだ」と、グレイ監督の脚本やアイデアが他のSF映画にない魅力を持っていたと語っています。宇宙を舞台にした本作は、宇宙飛行士の主人公ロイ・マクブライド(ピット)が、太陽系の彼方で消息を絶った父親クリフォード・マクブライド(トミー・リー・ジョーンズ)を探すさまを壮大なスケールで描いており、ピットはロイ役を演じるばかりでなく、本作のプロデューサーも務めています。いわく、「だいたいSFものっていうのは、宇宙人が出てきて。いい宇宙人だったり、敵だったりするよね・・・・・・でも、『宇宙に地球外生命体が一切いなかったらどうする?』と監督は観客へ投げかけているんだ。もし宇宙に僕たちしかいない場合、ベストを尽くして生きているのだろうか?」とリアリティーを追求していったそうです。また、「やっぱり映画はストーリーテリングが大切だし、物語を語る情熱も必要だ。(現在ではネット配信作品なども増えてきたことで、映画の形が変化している中)低予算だからこそできる作品や、その逆に巨額の製作費をかけた超大作でしか語れない物語がある。でも、その間を取ったような作家性の強い作品がなかなか出なかった」とも語っています。そんな作家性が強い作品へ注目していたピットは、これまでプロデューサーという立場で多数の作品を輩出してきました。それらの作品が評価され、ヒットしたのは幸運だったと話し、映画に関わる人たちへの深い愛を見せるピットなのです。



アクション復帰

J・J・エイブラムスがその名を世に知らしめたTVドラマ「エイリアス」で主演し、その後「デアデビル(2003年)」、「JUNO/ジュノ(2007年)」、「ダラス・バイヤーズクラブ(2013年)」など数々の話題作へ出演してきたジェニファー・ガーナー(写真)が、久し振りにアクション映画へ返り咲いた「ライリー・ノース 復讐の女神(2018年)」は、日本でも1年遅れてようやく公開されたばかりです。ガーナー扮する平穏で幸せに暮らすごく普通の母親ライリー・ノースが、愛する家族を奪われたのをきっかけに最強の殺人マシーンとなり、無罪放免となった悪党たちへ復讐を果たしてゆく姿を描いたこの復讐劇、監督は「96時間(2008年)」や「パリより愛をこめて(2010年)」のピエール・モレルです。本作がピーター・バーグ監督作「キングダム/見えざる敵(2007年)」以来のアクション映画となったガーナーは、撮影に向けての2ケ月間、死ぬほどのトレーニングをしています。多くの有名セレブを指導してきたシモン・デ・ラルーの指導のもとでワークアウトを行ったり、ボクシングやイスラエルの護身術であるクラヴマガなども訓練したガーナー、「トレーニングで身体を鍛えてファイトシーンをやるのが楽しかったわ。この映画で好きなところは、ファイトシーンを演じたのが全部私自身だというところね」と、まんざらでもなさそうです。また、主人公のノースは彼女同様3人の子を持つ母親であることが、この役を選ばせた大きな理由だとか。ガーナーはまた、「ライリー・ノースがどうしてあんな危険なことをやるのか、観客には理解できるはずよ。現実的なところに根付いているのがこの映画の特徴で、復讐をしている時でも、彼女のなかにある母親の心は失われないわ」と力を込めて語っています。



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