どうすればイースターエッグが割れるか?


 「イースターエッグ」とは言うまでもなくアメリカの祭日「イースター」で登場する絵を描いた卵のことですが、コンピュータ業界では別の意味にも用いられています。われわれが日常馴染んでいる様々なアプリケーションの中には、まったく関係のない機能を隠してあることがあり、その隠しコマンドを「イースターエッグ」と呼ぶのです。いわばデザイナー(プログラマー)の余裕といおうか、ユーモアのセンスを発揮する絶好の場所であり、こうしたイタズラはコンピュータ業界ならではかもしれません。

 そこで、Windows95と関連した「イースターエッグ」を紹介したいと思いますが、紙面の関係上、“Windows95”そのものの隠しコマンドと同じMicrosoftの日本語版“Office95”からいくつか選んで紹介します。お持ちでないかたや97へアップグレードしたかたも、どこかある所で試してみて下さい。ひょっとしたら、すでに“Office95”を使用中のお友達を印象づける、いい機会かもしれませんよ!

 なお、「イースターエッグ」がアプリケーションの中で独立したアプリケーションとはいえ、スタートを「起こす」とか「起動する」の代わり「(卵の)殻を割る」と表現するのが一般的です。また、(アプリケーションへ)隠されているところは「コンピュータ・ウィルス」も似ており、発病、つまりコンピュータ・メモリーの中に潜伏したウィルスが活動し始めることを、業界ではやはり「殻が割れる」と言います。

 では、“Windows95”そのものの隠しコマンドです。まず、“エクスプローラ”を開けて「C:\Windows\デスクトップ」のディレクトリへ新しいフォルダを作成し、「New Folder」という名前にして下さい。そして、メニューの「ファイル(F)→名前の変更」を使って「and now, the moment you've all been waiting for」という名前に変えます。この時、マウスの右クリック(ショートカットメニュー)を使うと、うまくいきません。同じくフォルダ名を「we proudly present for your viewing pleasure」へ、そしてさらに「The Microsoft Windows 95 Product Team!」へと変更した後、このフォルダをダブルクリックすることによって殻が割れるのです。

 続いて“Office95"、中でも内容が一番シンプルな“ショートカットバー”から紹介していきましょう。この「イースターエッグ」を見るには、まずタイトルバーのアイコンをクリックし、「バージョン情報」を開きます。そして、[Ctrl]キーと[Shift]キーを同時に押しながら「バージョン情報」画面左上のアイコンをダブルクリックすれば殻が割れる仕掛けです。ただし、内容はライセンス相手を表示した中央の窓へ、代わって「Hi MOM!」とデザイナーの母親6人の名前が現われるだけですから、くれぐれも期待しないで下さい。

 次の“PowerPoint95”は、「ヘルプ」をクリックして「バージョン情報」を開き、「バージョン情報」画面左のアイコンをダブルクリックするだけで殻が割れます。“ショ−トカットバー”のように[Ctrl]キーと[Shift]キーを押す必要はありません。殻が割れると「バージョン情報」の窓は暗転し、花火のようなアニメーションでデザイナーの名前が次から次へと現われます。隠しコマンドのスタッフ紹介は“Windows3.1”や“WindowsNT”の頃から有名で、これも3.1用の“PowerPoint”から引き継いだアイデアですが、以前の単純な名前のスクロールと比べ、Windows95版はかなり映像が良くなりました。

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第1段階のオープニング・シーン
 最後は“Excel95”で、この「イースターエッグ」を見ると先の2つが子供騙しのように思えてきます。殻を割るための基本操作は内容が凝っているだけ、少々複雑です。手順としては、まず新しいブックを開き[]キーかスクロールバーを使って95行目まで移動して下さい。次に、マウスを右端まで(左ボタンを押しながら)ドラッグし、A列からIV列へ至る95行目全体を選択した上で[Tab]キーを押します。そうするとB列に移動するので、その状態のまま先ほどと同じく「ヘルプ→バージョン情報」を選択し、今度は[Ctrl]キーと[Shift]キーへ[Alt]キーを加えた3つを押しながら「製品サポート情報」ボタンをクリックすれば、ようやく殻が割れます。

 内容は、「Hall of Tortured Souls」という3Dの窓が開き、その空間をカーソルで自由に移動できる仕組みです。当「ハリウッド最前線」の3Dプレイグランド「MYページ」と名付けたバーチュアル・リアリティーのサイトを訪れたかたは、いわば「MYダンジョン」の小型版とお考え下さい。一部の壁が動くパターンも、ちょうど「MYダンジョン」の「ヒット・ルーム」と同じ感じです。

 「Hall of Tortured Souls」の場合、前方の階段両側と階段を登り詰めた部屋の正面が、それぞれ動く壁となっており、そこでは開発スタッフの名前がスクロールされています。もちろん、いくら3Dゲームの要領といっても、原点はデザイナーの洒落なので、スケールが小さくて当然です。主役はあくまで“Excel95"、そのスタッフ紹介であることを思えば、むしろ凝りすぎかもしれません。これだけ凝る余裕があるのは、さすが「天下のMicrosoft」といえるでしょう。

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第2段階のオープニング・シーン
 加えて、「Hall of Tortured Souls」は、もう1段階あるのです。スタート地点で前進せず、[]キーか[]キーを使い180度回転します。目前の壁と向かい合った状態で「E→X→C→E→L→K→F→A」の順でタイプするや、画面が切り替わり、こちらは最初ほど簡単にいきません。もっとゲーム的な要素が増え、曲がりくねった細い壁の上を伝って遙か向こうのゴールへたどり着く・・・・・・最初はなかなか思うように進めず、途中で落ちるとそれまでです。表計算で疲れた時など、ひとつチャレンジされてはいいかがでしょうか。いい気分転換だと思いますが?

 ちなみに“Office97”の場合は“PowerPoint”だけが変わらず、“Excel97”は宇宙遊泳のようなパターンとなりました。[F5]キーを押してジャンプの窓が開いたら、参照先へ「X97:L97」とタイプして「OK」、さらに[Tab]キーを押します。その状態で[Ctrl]キーと[Shift]キーを押しながら、ツールバーの「グラフウィザード」ボタンをクリックすると殻を割れるので、あとはマウスで自由に動かして下さい。

 また、“Word97”へもピンボールのスタッフ紹介が加わりました。太字の青い半角文字で「B→L→U→E→ 」(最後の半角スペースをお忘れなく)とタイプし、「ヘルプ→バージョン情報」を選択して左上のロゴをクリックするだけです。ピンボールで遊ぶ時は、左が[K]キー、右が[M]キーでコントロール出来ます。他には、“Windows95”自体のアクセサリである“マインスイーパ”も隠しコマンドが仕込まれており、これを割る方法は「スタート(N)」を押してタイマーが動き出した状態で秒のところへポインタを合わせ、マウスの左右ボタンを押しながら[Esc]キーを押すという具合です。

 以上、紹介してきたうち“Windows95”の「イースターエッグ」は綺麗なブルーの背景で伴奏入りのスタッフ紹介、初っぱなからビル・ゲーツが登場します。ただし、英語版をそのまま日本語版へくっつけたものです。日本のMicrosoftはどうも一貫性がなく、以前から同じ3.1用の“Office”でも一部の隠しコマンドはオリジナル名で英語のスタッフ紹介かと思えば、それを日本側のスタッフ名へ変更したものがあると、てんでバラバラでした。また、日本側のスタッフ名と変更したものをWindows95版になってオリジナル名へ戻したり、まったく理解に苦しみます。

 そのあたりの拘(こだわ)りのなさは、日本のMicrosoftがしょせんアメリカ企業の支社にすぎないからでしょう。最近、よく聞く日本語ワープロで“一太郎”のシェアを“Word”が荒らしているという話も、Microsoft Japanの製品が一貫性を持たない限り、JustSystemは安泰のような気がしませんか? もっとも、一太郎とて最初のWindows(3.1)バージョン同様、Windows95版の「Ver.7」は無理があったとみえて、半年足らずで「Ver.8」を昨日(2月28日)発売したあたり、ちょっと情けないのでは?・・・・・・両方使う立場として、また関係者(インサイダー)の1人として日本のコンピュータ業界全体の向上を祈りつつ、ここらで今回のコラムは終わります。


お断り 

これらのテクニックを試される場合は、みなさん個人の責任でお願いします。何かの手違いからWindowsが動かなくなったとしても責任は取りかねますので、その点をご了承ください。

横井康和        


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