京都でピッツァを


 50年ほど前、婦人画報社の「メンズクラブ」という男性雑誌が、そのレストラン・ガイドで京都に新しくオープンしたピッツァという食べ物を出す店を紹介しました。先斗町の「栞」という店でした。当時、中学生だった私はそれまで聞いたこともないピッツァを食べたくて、母や姉を誘い、さっそく行って以来、すっかりファンになってしまいました。わずか半世紀を経て今や日本でもありきたりの料理となったピッツァ、栞こそ影も形も残っていませんが、京都で美味しいピッツァを食べさせる店は、その後、何軒もオープンしています(便宜上、料理の写真へ番号を付けてありますが、これらの番号は店と無関係です)。

ダ・ユウキ
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■ダ・ユウキ

www.da-yuki.com
京都市左京区岡崎円勝寺町36-3
075-761-6765

 2007年、平安神宮の近くへオープンしたイタリアン・ピッツァ店「ダ・ユウキ(Da Yuki)」は、本場で修行を積んだオーナー・シェフの鎌田友毅が作るピッツァと、上質なドルチェ(スイーツ)をいただける店として、幅広い年代層から人気を集めています。遠方からの客も多く、その盛況ぶりたるや、週末は予約をしないとなかなか入店できないほどです。

 ナポリから直送された直材を使ったマルゲリータ、マリナーラ、ビスマルク、カンパニョーラなど豊富な種類のピッツァが選択できます。また、ピッツァ以外では数々のアペタイザーから本格的なメイン料理まで、イタリア料理ファンへ嬉しい数々のメニューが用意されており、それだけでもこの店に行く価値はあるでしょう。食事が終われば、カプチーノとドルチェを堪能して下さい。

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 写真は左から「マルゲリータ・ピッツァ(#1)」、「ゴルゴンゾーラとハム・ピッツァ(#2)」、「菜の花とサルシッチャ・ピッツァ(#3)」、「タコとルッコラのマリネ(#4)」、「海老とブリのフリットミスト(#5)」。

トラットリア・セッテ
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■トラットリア・セッテ

kyoto.regency.hyatt.com/ja/hotel/dining/TrattoriaSette.html
京都市東山区三十三間堂廻り644-2 ハイアットリージェンシー京都2F
075-541-3204

 三十三間堂の隣にあるハイアットリージェンシー京都内の「トラットリア・セッテ」は、七条通りへ面していることからイタリア語の7(セッテ)にちなんで名付けられました。ローマをはじめ、イタリア各地での修行経験を持つ料理長、南條永寿シェフが腕をふるうのは、イタリア地方料理の基本と伝統に忠実なシンプル・クラシックとも言える料理の数々です。そこへモダンな日本人としての感性と味覚、フレッシュな素材とが巡り合い、家庭的な味わいの中にも、洗練された上質感の漂う皿々を仕立てています。

 この店で特筆すべき魅力といえば、ハイアットリージェンシー京都のスタッフ自ら行っているという農園活動です。南條をはじめスタッフの面々が交代で管理している自家栽培農園は、京都太秦の有機農家から指導を受けつつ、その畑で穫れる野菜が使われているので安心して食事を楽しめます。

 ちなみに、最近の本格的なピッツァ・レストランといえば先のダ・ユウキ同様、薪を使った釜で焼くのが主流ながら、トラットリア・セッテのそれはガスの石釜です。だからといって、けっして侮れません。ただ、ピッツァの美味しさと比べ、サービスにやや問題あり・・・・・・ホテル内のレストランというせいか、以前、何枚かのピッツァを注文し、出す順番を指定しても無視されることがありました。シェフはシェフなりに気を遣ったのが裏目となったケースかもしれません。

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 写真は左から「マルゲリータ・ピッツァ(#6)」、「クアトロ・ファルマッジ・ピッツァ(#7)」、「サルシッチャとブロッコリーピッツァ・ビアンカ(#8)」、「里芋のフリッタータ(#9)」、「国産牛ランプ肉のタリアータきのこ添え、マルサラ酒ソース(#10)」。この店の場合、ピッツァが売り物ながら、他の店のように「ピッツァ・レストラン」ではなく、あくまでも「イタリアン・レストラン」です。

ピッツァ・サルヴァトーレ・クオモ
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■ピッツァ・サルヴァトーレ・クオモ

www.salvatore.jp
京都市中京区河原町三条東入中島町90 フェリチタ三条木屋町ビルB1F
075-212-4965

 先の2店と違って、この「ピッツァ・サルヴァトーレ・クオモ」は全国展開をしています。だからといって、「ドミノ」のようなファーストフード・レストランではありません。日本人の母を持つナポリ出身のイタリア人サルヴァトーレ・クオモが料理人だった父の影響を受け、11歳で料理の道を志し、伯父のレストランへ入門、日本とイタリアを行き来しつつ修行を重ねつつ、様々な料理を通して日本にイタリアの食文化を紹介してきました。

 ピッツァ・サルヴァトーレ・クオモで使っている薪窯は、ナポリから呼び寄せた職人が作っており、いわばこの店のトレードマークとなっています。この窯で焼いたオリジナル・ピッツァ「D.O.C〜ドック〜」は、2006年ナポリで行われた世界ピッツァ・コンペティションで1位に輝き、それから3年連続で入賞してきました。完熟チェリートマトと厳しい生産規定D.O.Cに認定された水牛ミルク100パーセントのボッコンチーニ・チーズを使用しており、シンプルかつ贅沢なピッツァです。

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 写真は左から「マルゲリータ・ピッツァ(#11)」、「D.O.C〜ドック〜ピッツァ(#12)」、「春野菜のピッツァ(#13)」、「各種サラダ(#14)」、「炭火串焼き(#15)」。ピッツァ以外で炭火串焼きがこの店の定番メニューというのも変わっています。

 ところで、ピッツァ発祥の地といえばイタリアというのが定説だと思いきや、リトアニアという説もあります。また、私が撮影の仕事でシカゴやニューヨークを訪れた時は、市の広報からピッツァがアメリカで生まれたというオフィシャルな説明を受けました。いわば、同じ寿司でもカリフォルニア・ロールはアメリカ生まれの理屈です。そんなアメリカン・スタイルのピッツァでも生地の厚みが半端じゃないシカゴ・スタイルは確かにオリジナルですが、アメリカ国内だけでイタリアへ逆輸入されるまでには至っていません。その点、イタリアのピッツァと近いのがニューヨーク・スタイルとはいえ、シカゴであれニューヨークであれ現地のイタリア移民が作り出しています。

 日本では冒頭で書いた京都の「栞」より10年ばかり遡(さかのぼ)り、1954年(昭和29年)、進駐軍のGI出身でイタリア系アメリカ人のギャング、ニック・ザペッティが、六本木で「ニコラス」をオープンしています。もともと米陸軍の部隊を対象客層としてオープンしたのですが、日本人の若者層へも人気を博しました。ここで出していたのはアメリカ、それも典型的なニューヨーク・スタイルのピッツァです。

横 井 康 和      


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