L・Aでピッツァを


 日本でピッツァといえば、もっちりとした生地が多く、イタリアやアメリカのような本格的なピッツァはありそうでありません。たとえば、京都なら少ない店の中から一昨年ご紹介した3軒に絞るのが大変でした。その点、ロサンゼルスでは多すぎて、これまた絞るのが大変です。数あるイタリアン・レストランは、ほとんどメニューにピッツァが載っているのですから(便宜上、料理の写真へ番号を付けてありますが、これらの番号は店と無関係です)。

Pizzeria Mozza
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■Pizzeria Mozza

pizzeriamozza.com
641 N. Highland Ave., Los Angeles
323-297-0101

 個人的に一番好きなのは「Angelini Osteria」のピッツァですが、この店は以前「シネマ・イタリアーノ」でご紹介しているので省きました。そこで最初に登場するのは「Pizzeria Mozza」、元「LaBrea Bakery」のオーナー・シェフであるナンシー・シルバートンが、2006年、マリオ・バターリとジョー・バスティアーニッチの協力を得てオープンしたピッツァリアです(この時点で彼女はLaBrea Bakeryから手を引いていますが、売却の条件としてシルバートンの名前を使うことも含まれていたため、その後も彼女の店であるような印象を持つ人は多くいます)。

 ピッツァの材料はファンネル粉などを使い、ロサンゼルスの住人へ「ピッツァがここまでできる」というだけでなく、「ピッツァはこうあるべきだ」ということを知らしめました。噛み応えがある緻密なモッツァの有名な生地は、数多くの空気ポケットでうねり、活気に溢れたレンガ色の赤いトマトソースと数々の新鮮なチーズが相まって、それはカリフォルニアを表現したイタリアの抒情詩といえるでしょう。

 オープンから12年を経た現在も、ロサンゼルスのピッツァ愛好家へ欠かせない店であるばかりか、今やニューポート・ビーチとシンガポールへも進出しています。なお、以前「蛸に魅かれて」でご紹介した「Osteria Mozza」は、シルバートンがOsteria Mozzaに続いてその北隣へオープンしたイタリアン・レストランです(同じ「Mozza」でも、まったく違うレストラン)。さらにその東隣へは肉料理がメインの「chi SPACCA」を出すのと並行して、Osteria Mozzaのテイクアウト専用窓口も追加されました。

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#1
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#2
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#3
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#4
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#5

 写真は左から「フェンネル・ソーセージ、パンナ、レッド・オニオン、ニラのピッツァ(#1)」、「ボラッタチーズ、スカッシュの花、トマトのピッツァ(#2)」、「クラム・ピッツァ(#3)」、「カプレーゼ・サラダ(#4)」、「ミートボール・アル・フェルノ(#5)」。隣で高級イタリアン・レストランも経営しているだけあって、ピッツァ以外の小物(アペタイザー)も侮れません。

Olio Pizzeria & Cafe
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■Olio Pizzeria & Cafe

www.oliogcm.com
317 S. Broadway, Los Angeles
213-680-0010

 高校で化学の授業のノートをいつも完璧にとっていた生徒、そういう生徒がいませんでしたか? ブラッドフォード・ケントは、ちょうどそういう生徒がピッツァ・シェフへ転身したと思って下さい。カリフォルニア州立大学ロングビーチ校のフード化学学科を卒業したケントは、異なる時間と温度で発酵した3つの異なるタイプからなる生地のレシピを数年間かけて完成させました。オリーブとアーモンドの木材を組み合わせて1,200度に熱したオーブンと組み合わせ、フランスのバゲットをモデルとした生地が誕生するのです。

 古典的なマルゲリータは崇高であり、認証されたバッファロー・モッツァレラとサンマルツァーノのトマトで作られています。また、古典的ないっぽうでケントは様々な冒険も試みており、かつてマンハッタン・ビーチのファーマーズ・マーケットの屋台でタイ・カレー・ピッツァを売っていたことがありました。Olio Pizzeria & Cafeの毎日のスペシャルには、しばしば濃厚なバルサミコ酢で炒めたイチジクやバターナッツの炒めなどの季節のトッピングが含まれています。

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#6
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#7
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#9
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#10

 写真は左から「マルゲリータ・ピッツァ(#6)」、「タスカン・ソーセージ(地鶏のソーセージ)のピッツァ(#7)」、「ミートボール・パルメジャン・ピッツァ(#8)」、「ベジー・カポナータ(#9)」、「ポーチド・エッグ・イン・ザ・ホール。ビアリというピッツァのタネで作ったパンにポーチド・エッグが乗った朝食メニュー(#10)」。

Sotto
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■Sotto

www.sottorestaurant.com
9575 W. Pico Blvd., Los Angeles
310-277-0210

 かつて、そこそこ知られた(私もよく通った)イタリアン・レストランがあった場所へ「Sotto」は2011年にオープンしました。ピコ通りの坂の途中で半地下という立地条件なので、イタリアから輸入されたステファノ・フェラーラ・オーブンをクレーンで運び込むのが、どれだけ大変だったか想像するのは容易です。そこへコスタメサの「Pizzaria Ortica」からシェフのザック・ポラックとスティーヴ・サムソンが参加し、彼らの慣れ親しんだ南イタリア料理は大いに歓迎されました。

 オープン当初からSottoのピッツァは素晴らしかったものの、じっさい時間が経つにつれて改善されてきました(オーブンは、しばしば馴染むまでに時間がかかります)。歯ごたえのある生地の周辺へは、豹の斑点が付いているのが特徴です。

 チャーリー・パーカーやモナリザ同様、完全は不完全でもあります。焼けた木の香りと酵母の軽い香り、自家製の塩漬け牛の頬、もちっとしたリコッタ、新玉ねぎ、フェンネル粉の濃厚な組み合わせが奏でるハーモニー。Pizzeria MozzaやOlio Pizzeria & Cafeのマルゲリータ・ピッツァも素晴らしいですが、ロサンゼルスでNo.1といえば、たぶんこの店のマルゲリータでしょう。最も自由で栄光のあるナポリのピッツァだと思います。

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 写真は左から「マルゲリータ・ピッツァ(#11)」、「グアンチャーレ・ピッツァ。グアンチャーレとは豚の頬肉、いわゆる豚トロを塩漬けにして2〜3週間熟成させたもの(#12)」、「フンギ(きのこ)ピッツァ(#13)」、「クリスピー・オクトパス(#14)」、「スパイシー・クラム(#15)」。3軒の中では、ピッツァ以外のメニューが一番充実しています。

 その他、ロバート・デニーロがオーナーのメルローズにある「Ago」のピッツァも美味しいし、その近くの「Jon & Vinny's」も悪くありません。同じフェアファックス通りをわずか数ブロック北へ行くと「Pitfire Artisan Pizza」と、きりなく思い浮かびます。ちょっと変わったところではイースト・ハリウッドの「DeSano Pizza Bakery」など、イタリアン・ピッツァのイメージとちょっと違いますが、大型の薪オーブン4台を備えた本格的なピッツァリアです。

横 井 康 和      


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