L・Aでタイ料理を


 日本でアメリカ料理は不味いといわれていた昔から、ロサンゼルスでは様々な国の料理が食べられました。それも、アメリカへ移住したそれぞれの国のシェフが作っており、フレンチやイタリアンのシェフの多くが日本人だった日本とはだいぶ事情が違います。たとえばアメリカ中どんな田舎でもある中華レストランは、もちろん中国人が経営しており、ロサンゼルスやサンフランシスコ、ニューヨークといった大都会ではチャイナタウンを形成しているのが普通です。

 中華レストランほどの規模ではないものの、ロサンゼルスの住人が昔から馴染んできたオリエンタル料理といえばタイ料理で、40数年前に一世を風靡した「Chan Dara」などラチモント店とハリウッド店の他、ピコ店を拡張する勢いでした。そこで今回は、現在ロサンゼルスで勢いのあるタイ・レストラン3軒ご紹介したいと思います(便宜上、料理の写真へ番号を付けてありますが、これらの番号は店と無関係です)。

Ayara Thai Cuisine
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■Ayara Thai Cuisine

ayarathai.com
6245 W. 87th St,, Los Angeles
310-410-8848

 2004年のオープン以来、この「Ayara Thai Cuisine」は伝統あるタイの家庭料理を提供してきました。オーナーシェフのアンディ・アサパフが育ったのは、バンコクのチャオプラヤー川ほとりにあるりサムセン地区のタイ中華圏コミュニティです。8人の家族を養い、近所の人々へも有名だった母親の料理を手伝ううち、料理とビジネスを学んだ彼にとって有利だったのが、宮殿と川の間という住まいの立地条件でした。それは王室の料理とスパイシーな両方を味わえる家庭料理を形成しています。

 いっぽう、独学のシェフであるアンディの妻アンナはタイ北部の中心部のランパーン市出身で、地元の果物や野菜を調理した家庭で育ちました。Ayara Thai Cuisineの開店以来、ヘッドシェフとしてキッチンのリーダーであり続けたのが彼女です。自家製のハーブをレストランの料理へ使用することで家族の伝統を守り続け、過去に食べた料理だけでなく、それぞれの季節特有の新鮮な食材だけでのインスピレーションで作った料理を生み出してきました。

 今日、アンディとアンナの家族の伝統は守り続けられ、彼らの娘ヴァンダを通して第三世代へ発展しています。4年間タイで生活し、仕事をしてきたことで、ヴァンダは古い家族のレシピを学ぶことができました。親戚と一緒に料理をした彼女が、Ayara Thai Cuisineでシェアするため持ち帰ったのは、それらの古いレシピと新しい味です。

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#1
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#4
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#5

 写真は左から「ソムタム(#1)」、「マッシュルームがエクストラのトムヤム(#2)」、「パッタイ(#3)」、「カオパット(#4)」、「ペナンカレー(#5)」。

Lub2Eat Thai Bistro
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■Lub2Eat Thai Bistro

www.luv2eatthai.com
6660 Sunset Blvd., Los Angeles
323-498-5835

 シェフのシダは2011年にカリフォルニア州パサディナのコルドン・ブルーから一級の名誉学位を取得することで、その料理への情熱が証明されました。彼女はまた世界的に有名なビバリーヒルズ・ホテルのポロ・ラウンジで料理チームの一員として働き、いくつかの貴重な経験を積んでいます。また、子供の頃から料理を愛し、最愛の90歳の祖母から多くの秘密のレシピを学ぶことに多くの時間を費やしました。

 もう1人のシェフ、プラはシダと違ってコミュニケーション・アートの学士号を取得し、タイの映画業界で幅広く活動していたのですが、そんな彼女を運命はロサンゼルスへ導くのです。彼女の料理に対する情熱が育まれたのも、家庭環境と無関係ではありません。祖母がタイでレストランを経営していた他、母親はプーケットの5つ星ホテルへレストランを出して成功しており、そのチーフ・シェフは父親でした。たとえば、「Luv2eat Thai Bistro」のカニカレーが有名なのは、それが何世代にもわたって受け継がれてきた秘密のレシピのおかげでなのです。こうしたプラの名物料理ばかりでなく、彼女は焼くのが大好きで、そのデザートでも知られています。そんなプラとシダがこの店をオープンしたのは2014年10月のことです。

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#9
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#10

 写真は左から「ソムタク(#6)」、「トムヤムクン(#7)」、「パッタイ(#8)」、「蟹入りのカオパット(#9)」、「パイナップル・ダック・カレー(#10)」。

RockSuger Southeast Asian Kitchen
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■RockSuger Southeast Asian Kitchen

www.rocksugarkitchen.com
10250 Santa Monica Blvd., Ste 654, Los Angeles
310-552-9988

 「RockSugar Southeast Asian Kitchen」の場合、タイだけでなくベトナム、マレーシア、シンガポール、インドネシアの料理を提供しています。しかし、フュージョン料理と違って、この店の豊富なメニューの各料理が、それぞれの国の本物なのです。涎の出そうなインドのサモサから美味しいベトナムのシェイク・ビーフまで、スパイス溢れる料理は訪れた人を世界の隅々へ誘(いざな)ってくれます。店内のベーカリーで焼いたカラメル・バナナ・カスタード・ケーキと暖かいココナッツ・ドーナツを含むシグネチャー・デザートも、この店の大きな魅力です。

 RockSugar Southeast Asian Kitchenは、アジア料理で使用される食材に由来する名前を取って、レストランの経営者であるデヴィッド・オーヴァートンと、ニューヨークで腕を磨いたシンガポール育ちのシェフ、モハン・イスミルによってオープンしました。母親が作っていた家庭料理の記憶に触発されたモハン・シェフは、「Spice Market」、「Tabla」、「Blue Hill」など、ニューヨークでも有数の東南アジア料理店での豊富な料理体験を活かし、東南アジアの精神と本物の風味を捉えています。

 モハン・シェフが年数回帰京するのは、新しいインスピレーションを得て、伝統との結びつきをなくさないためです。ロサンゼルスへ戻るたび新しい材料を紹介し、RockSugar Southeast Asian Kitchenのメニューを新鮮で革新的なものにする新しいレシピを作成しています。2016年、彼がアメリカの人気TVチャンネル「フードネットワーク」のコンテスト番組へ出演した時は、シンガポールで育ったレシピを彷彿とさせる麺料理で番組のホストを打ち負かしました。

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 写真は左から「ソムタム(#11)」、「トムヤムクン(#12)」、「チキン・パッタイ(#13)」、「カオパット(#14)」、「グリーン・カレー・チキン(#15)」。

 やはりレストランは流行り廃りがあるだけに、冒頭で触れたChan Daraはオリジナルのラチモント店のみ健在ですが、もはや40数年前の活気はありません。ニューヨークでも同じような状況で、モハン・シェフが働いていたSpice MarketとTablaは閉店し、Blue Hillのみが健在という現状です。

横 井 康 和      


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