京都でとんかつを


 今回は日本人なら誰でも馴染みがあるとんかつを取り上げました。昔ながらの洋食屋で定番のとんかつとはいえ、日本人が考案したメニューです。明治32年(1899年)、洋食屋「煉瓦亭」で「ポークカツレツ」というとんかつに通じる名称で、豚肉を揚げた調理方法が見られました。そして昭和4年(1929年)、洋食屋「ポンチ軒」で現在のとんかつと同じような調理方法が登場します。そんなとんかつの京都にある店を3軒選んでご紹介しましょう(便宜上、料理の写真へ番号を付けてありますが、これらの番号は店と無関係です)。

熟豚(じゅくとん)
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■熟豚(じゅくとん)

www.facebook.com/tonkatujyukuton/
京都市山科区竹鼻西ノ口町57-1
075-595-0295

 山科の府道117号線の東側、三条通と愛生会山科病院との間に「熟豚(じゅくとん)」があります。外観はすっきりとしていて飾り気のない佇まいで、店内は白を基調とした清潔感漂う雰囲気です。とんかつが中心のメニューは一品料理も充実しており、定食を注文した場合、とんかつと八代目儀兵衛の米を炊き上げたご飯、豚汁、豚肉の佃煮、香の物がついてきます。ソース類は、甘口ソース、濃口ソース、醤油、粒マスタード、塩、そして2種類のドレッシングが卓上へ並んでいるのをお好みで選んで下さい。

 肉そのものは、例えばロースかつの豚肉なら主に京丹波高原豚が使われており、きめ細やかな柔らかい肉質でしっとりとしています。また、この店の売り物である超特上リブロースかつの豚肉なら伏見の熟成肉卸「中勢以」で3〜5週間熟成した宮崎産の「南の島豚」が使われており、揚げ方は薄っすらピンクのレア仕上げ、脂身はサラサラで肉のキメが細かく、この厚みからは考えられないほど柔らかです。

 京都でどこのとんかつが一番美味しいかと聞かれたら、迷わずこの店を挙げるでしょう。ただし、とんかつも豚汁もオーナーシェフは丁寧に作ってくれるいっぽうで、他の店より時間がかかるのは覚悟しておく必要があります(オーダーして出てくるまで15分〜20分)。もともと、熟豚は同じ山科の御陵にあったのが、去年の10月、ここへ引っ越してきました。御陵の頃はもう少し狭く、従業員が少なかったので、30分待たされることもざらでした。加えて着席するまでの待ち時間を入れると、忍耐力のない方へはあまりお薦めできなかったのが、今では少し改善されています。

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#1
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#2
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#3
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#4
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#5

 写真は左から「特上リブロースかつ(#1)」、「最初に出てくる豚肉の佃煮と香の物(#2)」、「豚汁。奥の小皿は粒ありマスタードと塩(#3)」、「各種ソースとドレッシング(#4)」、「海老フライと一口かつ(#5)」。豚肉の佃煮はテイクアウト用のパッケージがあります。

かつくら
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■かつくら

www.katsukura.jp
京都市中京区三条通寺町東入ル石橋町16
075-212-3581

 三条通りと新京極通りの角にある「かつくら」は、オーナーシェフが1人でしこしこと作る先の熟豚と違って、オープン以来せっせと支店を増やしてきました。そういう意味で熟豚とは正反対の店です。オーダーすると、まずごまの入った茶碗大のごますり器が出てきて、それをすりつぶした上にタレを入れるという独特のスタイルは、この店が成功した理由の一つだと思います。

 油は植物を原料として精製された白絞(しらしめ)油を使用したコレステロール・ゼロのオリジナル・ブレンドです。加えて、窯焼きパンをくだいて作るパン粉は肉の旨みを包み、ふっくらと揚がります。かつと相性のいい付け合わせのキャベツも、季節ごとの旬に合わせたキャベツを選び、国内の各産地から取り寄せているそうです。そのノンオイル・オリジナルゆずドレッシングは、国産のゆずをたっぷり使用しています。そして、決めてとなるのがオリジナルとんかつソース、赤ワインをたっぷりと使い、りんごとナツメヤシを加えてまろやかさとコクを引き出している他、りんご、チャツネ、プルーン等の果実をふんだんに使用。あるいは、11種類のスパイスをブレンドした濃い口ソースが選択できます。ご飯は、よりヘルシーで安心な麦ごはんです。

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#6
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#7
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#8
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#9
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#10

 写真は左から「ヒレかつ(#6)」、「最初に出てくるタレ用の胡麻(#7)」、「各種ソースとドレッシング(#8)」、「味噌汁(#9)」、「ジャンボ海老フライとヒレかつのコンボ(#10)」。

恵亭
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■恵亭

www.takashimaya.co.jp/kyoto/restaurant/japanese/09.html
京都市下京区四条通河原町西入ル真町52 京都タカシマヤ7F
075-254-3435

 京都島屋の7階にある「恵亭」は和幸の系列店ですが、スタンダードの和幸と比べればやや高級感を出した店構えです。メニューへは定番のとんかつ定食のほか、季節メニューのカキフライと組み合わせせた膳も人気があります。この店の大きな特徴といえば、定食へついてくる京漬物のレベルが高く、しかもキャベツやご飯と同じくお代わり自由。中にはその漬物が狙いという客も少なくありません。京漬物は4種類あり、それぞれ味が違っており、メインのとんかつを待つ間、お代わりをしたことは何度かあります。

 キャベツのドレッシングはゆずとゴマの2種類用意されているのが、何度もお代わりをする方へは嬉しく、また、ご飯も侮ることが出来ないほど美味しく炊けています。ただ、メインのとんかつは決して不味いというわけではありませんが、あんなに美味しい漬物を脇役とすれば、ちょっと寂しい。もち豚と少し高い鹿児島黒豚は、それぞれ甘みと柔らかさの違いがわかるものの、残念ながらいずれも標準的なレベルです。しかし、和幸の系列店としては決して侮れません。

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#15

 写真は左から「とんかつ(#11)」、「京漬物4種。おかわりは自由(#12)」、「各種ソースとドレッシング(#13)」、「シジミの味噌汁。これか豚汁を選択できます(#14)」、「牡蠣フライ(#15)」。

 あと、市役所駅前から近い「とんかつ山本」や「とんかつ豚ゴリラ」、そしてとんかつと限りませんが「洋食おがた」も行ってみる価値はじゅうぶんあるでしょう。

横 井 康 和      


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