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(1999年9月16日)          




ハリウッド「夏の陣」、総決算

「夏のドレス・リハーサル」といわれる5月下旬の「慰霊祭(メモリアル・デー)」から、夏の終わりを告げる9月の「勤労感謝の日(レイバー・デー)」までの3ケ月足らず、ハリウッドでは毎年メジャー・スタジオや独立プロが凌ぎを削る過激な戦いを繰り広げています。去年の夏は劇場総収益が25億8千万ドルの新記録を打ち立てたかと思いきや、今年はそのまた20パーセント増し、つまり30億ドルを超す「熱い夏」となりました。当然ながら“ファントム・メナス”の貢献度が大きいとはいえ、そればかりじゃありません。一足早く封切られた“オースティン・パワーズ・デラックス”がオープニングの週末だけで5,400万ドルという破格の収益を上げ、“ノッティングヒルの恋人”などは封切り以来5週連続で全館売り切れの“ファントム・・・”で「漁夫の利」を獲たのも大きな原因です。いっぽう、低予算の独立プロ作“ブレアー・ウィッチ・プロジェクト”が独自のマーケティングで成功したり、“ワイルド・ワイルド・ウェスト"、"アイズ・ワイド・シャット"、"アイアン・ジャイアント”など期待されたわりに結果は悲惨な番狂わせも目立ちます。そこで、この夏、主立った映画をザッと見比べてみれば・・・・・・



題 名製作スタジオ封切り日製作予算米国内収益予測額成績
ファントム・メナス20世紀フォックス5月19日1億2千万ドル4億2千万ドル
ノッティングヒルの恋人にユニバーサル5月28日4千2百万ドル1億2千万ドルA−
オースティン・パワーズ・
デラックス
ニューライン6月16日3千3百万ドル2億1千万ドル
ターザンディズニー6月16日1億ドル1億7千万ドルB+
ジェネラルズ・ドーターパラマウント6月18日6千万ドル1億1千万ドル
ビッグ・ダディーソニー6月25日3千2百万ドル1億6千万ドルA−
ワイルド・ワイルド・
ウェスト
ワーナー6月30日1億5百万ドル1億1千5百万ドルC−
アメリカン・パイユニバーサル7月9日1千百万ドル1億ドル
ブレアー・ウィッチ・
プロジェクト
アーティザン7月14日3万5千ドル1億4千万ドルA+
アイズ・ワイド・シャットワーナー7月16日6千5百万ドル5千5百万ドル
ハウンティングドリームワークス7月23日8千万ドル9千万ドルC+
インスペクター・
ガジェット
ディズニー7月23日7千5百万ドル8千5百万ドルC+
プリティー・ブライドパラマウント7月30日7千万ドル1億3千万ドルB+
ディープ・ブルー・シーワーナー7月30日8千万ドル7千5百万ドル
シックス・センスディズニー8月6日4千万ドル1億2千万ドル
アイアン・ジャイアントワーナー8月6日4千万ドル2千万ドルD−





新企画情報

「夏の陣」が終わると、次は秋からクリスマスにかけて「冬の陣」が待ち受けています。そこで封切られる映画は前回の「新企画情報」でもお知らせしました。と同時、次のシーズンを狙った企画が動き始めていることは言うまでありません。さあ、これからどのような映画がクランクインするのでしょうか?


“ステート・アンド・メイン”

小粒ながら魅力のある脚本を書き監督し続けるデビッド・マメット("スパニッシュ・プリズナー")の最新作です。ヒット作“ワッグ・ザ・ドッグ”の脚本を仕上げた直後に書き始め、内容はハリウッド映画のロケ地となった田舎町が遭遇するトラブルを描いたドラマです。ウィリアム・H・メーシー("プレゼントビル")、アレック・ボルドウィン("ワイルド")、サラ・ジェシカ・パーカー("ハネムーン・イン・ベガス")などの演技派を揃え、間もなく(9月中旬)クランクインします。

“ナンバーズ”

ヒット作“マイケル”のコンビ、ノーラ・エフロン("ユー・ガット・メール")監督とジョン・トラボルタが再び組み、今度は田舎町のTVニュースで天気予報を担当する破産寸前のアナウンサー(トラボルタ)が、宝くじ詐欺事件と係わる物語という内容です。10月からニューヨークとL・Aロケを予定しており、ただいまトラボルタの恋人役でTVニュースの宝くじ発表係を演じる女優をキャスティング中。

“エース・イン・ザ・ホール”

彫刻家へ転身した元囚人がFBI捜査に巻き込まれるというブルース・ウィルス主演のアクション・スリラー、10月下旬のクランクインを予定しています。

“ハローマン”

「ハロー(空洞)」のタイトルどおり、透明人間になれる薬を巡るSFスリラーです。4月からL・Aで撮影は始まっていながら、主演の女医を演じるエリザベス・シュー("リービング・ラスベガス")がワークアウト中、アキレス腱を傷めて手術を余儀なくされたため、今はスケジュールの調整中。

“シッピング・ニュース”

ピューリッツァー賞を受賞した小説の映画化で、当初主演を予定されていたジョン・トラボルタが「創作上の見解の相違」から降り、その後釜として製作のアーウィン・ウィンクラー("アット・ファーストサイト")はビリー・ボブ・ソーントン("シンプル・プラン")へ白羽の矢を立てました。しかし、ソーントンが自ら監督したマット・デイモン主演作“オール・ザ・プリティー・ホース”の編集に追われているため、クランクインは今年の暮れ頃となる見込み。これまたピュリッツァー受賞作“アンジェラの灰”の映画化で手腕を発揮したローラ・ジョーンズが脚本を担当します。

“トータル・フィアーズ”

トム・クランシー原作“ジャック・ライアン・シリーズ”といえば、いまやハリソン・フォードの看板シリーズです。この新作(原作の邦題「恐怖の総和」)は、これまで同様メイス・ニューフェルド("将軍の娘")がプロデュースし、現在ロバート・ゼメキス監督作の控えるフォード待ち。ただ、1年1作主義のフォードですから、クランクインは2001年に持ち越されるかもしれません。

“アンコンディショナル・ラブ”

キャシー・ベイツ("パーフェクト・カップル")扮するシカゴ在住の主人公が、殺害された憧れの歌手の葬式へ出るためロンドンに赴きます。そこで、じつはゲイだったアイドルの素顔を知るばかりか、彼の愛人(ルーパート・エベレット)と会って大騒ぎ・・・・・・というコメディー。“ベストフレンズ・ウェディング”でエベレットのゲイっぽさを上手く演出したP・J・ホーガンがジェリー・ザッカー("ゴースト・ニューヨークの幻")と共同で監督し、真犯人を捜しながらゲイへの偏見を反省する中年女性像を描くこの映画は来月(10月)クランクインします。

“サウス・オブ・ヘブン・ウェスト・オブ・ヘル”

1907年のスペイン独立戦争直後、一緒に育ちながらギャング一味となり果てた家族へ戦いを挑む保安官の勇気の物語です。“スリング・ブレイド”の演技が好評だったカントリー・ウェスタン歌手ドワイト・ヨーカムの初監督で、出演はビンス・ボーン("サイコ")、ピーターとブリジェットのフォンダ親子、“スリング・・・”でヨーカムを演出したビリー・ボブ・ソーントンらの豪華キャスト、目下アリゾナ州で撮影中。

“デュース”

いま売れまくっているアダム・サンドラーが製作総指揮のこの映画は、うだつの上がらぬ家庭用フィッシュタンクの清掃人がジゴロへ華麗な変身を遂げる「サンドラー・パターン」のコメディーで、サンドラーとはTV番組“サタデーナイト・ライブ”の同期生ロブ・シュナーダー("デモリションマン")が主演し、12月10日の封切りを予定しています。

“バーティカル・リミット”

クリス・オダネル("バットマン&ロビン")、ビル・パクストン("シンプルプラン")、スコット・グレン("目撃")主演、マーチン・キャンベル("マスク・オブ・ゾロ")監督の山中で起こる犯罪を描いたスリラー。来月(10月)始まるニュージーランド・ロケを目指し、主演の3人は現在オーストラリアでロッククライミングの特訓中です。

“ベートーベン3”

ご存じセントバーナード犬が主役のドタバタ・コメディー第3弾。今回は家族とアメリカ縦断旅行に出かけたベートーベンの繰り広げるアドベンチャーで、先月(8月)の上旬クランクインしました。

“シップ・ロック”

離婚したばかりの黒人教師がインディアン居住区の学校へ赴任し、女子バスケット・ボール部の監督としてチームを全米チャンピオンに仕立てあげる「ロッキ・パターン」の成功物語です。独立プロ作“スモーク・シグナル”で注目された新進インディアン監督クリス・アイヤーは、この映画を先住民族の観点から捉えようと意欲を燃やしています。現在、ローレンス・フィッシュバーン("マトリックス")かウェスリー・スナイプス("ブレイド")の主演で企画中。

“ジュラシック・パーク3”

15億ドルを稼ぎ出した「恐竜シリーズ」の新作へスピルバーグが係わっているのは当然ながら、トム・クルーズ主演作“マイノリティー・レポート”の監督で追われているため原案を錬るのが精一杯、
監督にはジョー・ジョンストン("ジューマンジ"、"オクトーバー・スカイ")を抜擢し、脚本担当の新人クレイグ・ローゼンバーグと綿密な連絡を取りながら、年明けのクランクインを目指して準備は着々と進んでいます。

“ネイビー・ダイバー”

黒人で初めて米海軍の深海ダイバーとなった実在の人物、カール・ブラッシャーの勇気と冒険を描いたドラマ。キューバ・グッディング・ジュニア("エージェント")とロバート・デ・ニーロ2人の演技派が共演し、オレゴン州ポートランドをフロリダ州に見立て、先月(8月)から撮影中です。




アクション・プロデューサー!

去年このページでご紹介した「アクション映画の帝王」ジェリー・ブラックハイマーは、いま長年あたためてきた企画“リメンバー・ザ・タイタンズ”と取り組んでおり、デンゼル・ワシントン主演で今月(9月)クランクインします。この映画は“ビバリーヒルズ・コップ"、"ロック"、"クリムソン・タイド”など、「ポップコーン・アクション」と呼ばれるこれまでの典型的なブラックハイマー路線とは一線を画すドラマ性が、もっぱらの評判です。'60年代後半、バージニア州の高校で人種差別廃止を意図した最初の人種混合フットボール・チーム誕生と、それを率いる監督2人の葛藤を描いた物語は実話に基づき、現在ワシントン扮する黒人監督と敵対しながら、やがては一丸となってチームを勝利へ導く白人監督役のキャスティングが行われています。お得意の爆破シーンもなく、「スポーツに国境はない」を地でゆく内容だとか! その代わりというわけでもないのですが、完成間近の車泥棒を扱ったニコラス・ケイジ主演の大型アクション“ゴーン・イン・60セコンド"、やはり今月(9月)クランクインする“コヨーテ・アグリー"、マイケル・ベイ監督("ロック"、"アルマゲドン")、ランドール・ウォレス脚本("ブレイブハート")の第二次大戦開戦当時を背景にした“テネシー"、トニー・スコット("エネミー・オブ・アメリカ")の監督で実在のコンピュータ・ハッカーと連邦保安官(マーシャル)の犯罪スリラー“テイクダウン"、そしてジョン・タートルタブ("フェノミナン")監督の“ナショナル・トレジャー”と、お馴染みの「爆破アクション企画」は目白押しです。





噂の続編?

このところハリウッドでこれといったオリジナル企画がないのは、相変わらずの「続編ブーム」へ反映されており、裏返せばその風潮が原因となっているのかもしれません。ともあれ、ハリウッドの水面下ではそういった続編企画の噂が絶えず、期待できそうな「噂の企画」をいくつか拾ってみましょう。まず、ワーナーブラザーズのバットマン・シリーズは、そろそろ方向転換が必要なだけに、新作“バットマン5”はいろんな噂が飛び交っています。一昨年あたりは年老いたバットマンをクリント・イーストウッドが演じると噂され、去年の“ソルジャー”で転けるまではカート・ラッセル起用説が本命視されていました。最近の噂はメル・ギブソン扮する新バットマンが再びジャック・ニコルソン扮する悪役ジョーカーと対決するという、やや眉唾ものです。もっと信憑性のない「噂の続編」としては、封切り間もなく社長を辞任へ追い込むほど悲惨な成績だったユニバーサルの“ベイブ2/都会へ行く”にも懲りず、“ベイブ3”が2001年を目指して企画中。あるいは、オリジナルでニコラス・ケイジが演じたリップリー役へ歌手クリス・アイザックを抜擢し、デビッド・リンチ監督抜きでこの秋クランクインするといわれる“ワイルド・アット・ハート2”や、期待できそうなのはブラウン博士がUFO遭難事故を引き起こす“バック・トゥー・ザ・フューチャー4”あたりでしょう。また、おかしな死人のトロピカルな冒険を描いた“ビートルジュース・ハワイへ行く"、あのメリン牧師役を名優マックス・フォン・シドーが再度演じる“エキソシスト3”などの噂も聞きます。もう少し新しいところでは、オリジナルから5年後のエイリアン戦争を描いた“インディペンデンス・デー2"、例のゴム男が2人に分裂する“マスク2”はジム・キャリー以外の主役候補で企画されているという噂です。その他、モーリー・リングウォルド、アンドリュー・マッカーシー主演で'80年代にヒットを飛ばしたティーン映画の続編“プリティー・イン・ピンク2"、シルベスター・スタローンが監督主演を務める“ロッキー6"、コンピュータの世界を描いた'80年代のSFヒット作をピクサー・スタジオ("トイ・ストーリー")の手で蘇らせた“トロン"、ジョージ・ロメロ監督のクラシック・ホラー“ナイト・オブ・ザ・リビング・デッド/ゾンビの誕生”の続編、竜巻を風船爆弾で事前に防ぐという“ツイスター2"、中でも僕の期待するのはハリソン・フォードが再び登場するSFハードボイルド“ブレードランナー2”といったところ・・・・・・さあ、これらの噂はどこまで実現するか!?




(1999年9月16日)

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