新企画情報
次々と夏のブロックバスター映画が封切られる中、ハリウッドではこの瞬間も明日のヒットを目指して様々なジャンルの新作が企画されています。
“アストロ・ボーイ”
日本が世界に誇るジャパニメーションの先駆者、手塚治虫原作“鉄腕アトム”のハリウッド版です。実写、CG、アニマトロニックス(ロボット撮影)を組み合わせた斬新な映像となる模様で、ソニー傘下のコロンビアが製作権利を獲得し、2000年クリスマス公開を目指して企画中。
“ホワット・ライズ・ビニース”
殺人事件に書き込まれる大学教授とその妻をハリソン・フォードとミッシェル・ファイファーが演じ、殺害され助けを求める美人大学院生の幽霊は妻しか見えないという一風変わったミステリー。ロバート・ゼメキス監督("フォレスト・ガンプ/一期一会")のもと、L・A(ロサンゼルス)とバーモント州で来月(8月)クランクインします。
“ローラーボール”
ジェームズ・カーン("イレイザー")主演で製作された1975年のヒット映画のリメイク版。すべての暴力行為は法律で禁じられた21世紀社会の花形スポーツとその超バイオレンスがテーマとなり、オリジナル同様、製作監督はノーマン・ジュイソン("月の輝く夜に")ですが、実際21世紀へ突入しようとしている現在、より現実的な社会情勢を盛り込んだ内容となりそうです。
“オー・ブラザー・ホエアー・アート・ソウ”
コーエン兄弟("ファーゴ")製作監督、ジョージ・クルーニー("アウト・オブ・サイト")、ジョン・グッドマン("ブルーズブラザーズ2000")、ホリー・ハンター("リビング・アウトラウド")共演のこの映画は、物語がホメロス原作のギリシャ神話“オデッセウス”に基づき、南部森林地帯を逃走しながら謎の財宝を探し求める脱獄囚3人のドラマで、あの独特のコーエン・スタイルが楽しみです。先月(6月)ミシシッピー州でクランクイン。
“バウンス”
最近、寄りを戻したオスカー女優、グウィネス・パルトローとベン・アフレック("フォース・オブ・ネイチャー")の共演作です。妻の待つわが家へ帰途につく乗客と旅客機の座席を交換したプレイボーイ(アフレック)は、墜落事故で相手の男が死に自分は助かった結果、自責の念からアル中となります。そして1年後、プレイボーイの訪問を受け、良人の死が彼の責任とも知らぬ未亡人は恋に落ち・・・・・・実生活での復縁が話題のアフレックとパルトロー、スクリーン上で「第二の人生」をどう描きあげるか!?
“セル”
自分で演じた実在の歌手“セリーナ”ばりに“オン・ザ・6”CDで歌手デビューを果たし、今秋全米コンサートツアーも決定しているジェニファー・ロペス("アウト・オブ・サイト") の最新作は、昏睡状態へ陥った連続殺人鬼の心の奥深くに潜入した女性精神分析医(ロペス)の葛藤を描いたサイコ・スリラーです。今月(7月)クランクイン。
“ダウン・トゥー・ユー”
ティーン映画ブームの人気スター、フレディー・プリンズ・ジュニア("ラストサマー2")とジュリア・スタイルズ("テン・シングス・アイ・ヘイト・アバウト・ユー")共演のひと味違うSFコメディーで、プリンズ演じる青年の視点から描いた世界と彼自身の心の動きが中心となり物語は展開します。このいわゆるインターアクティブ映画が、はたしてコンピュータ世代の若者層をねらった新ジャンルとなれるかどうか興味深いところです。
“バックカントリー”
ここしばらくヒット作のないアーノルド・シュワルツェネッガーが、国立公園内に立てこもって殺人を繰り返すサバイバリストと対決するアクション・アドベンチャー。最近、ヨセミテ国立公園内で起こった旅行者殺人事件を思い起こさせるリアルなストーリーは、同じくアーノルド主演のダーク・ウェスタン“アウトリッガー”を企画中の大物プロデューサー、メイス・ニューフェルド("セイント"、"将軍の娘")が製作します。
“13デイズ”
以前も触れた'60年代のキューバ・ミサイル危機を背景にしたこの政治的スリラーは、9,000万ドルという製作予算や“時代もの”という難しい要素のため座礁中。製作主演のケビン・コスナー自ら選んだ監督フィル・アルデン・ロビンソン("フィールド・オブ・ドリームス")が創作性の食い違いから降り、フランシス・フォード・コッポラ監督("ジャック")と交渉して断られた後、今はマーチン・キャンベル監督("マスク・オブ・ゾロ")やロジャー・ドナルドソン監督("ダンテズ・ピーク")などと折衝中です。
“テキサス・レンジャー”
超過激なアクション・ウェスタンで一世を風靡した故サム・ペキンパ("ワイルド・バンチ")監督作として企画された、ジョン・ミリウス("今そこにある危機")脚本の本格的ウェスタン。テキサス・レンジャーズといえば「勇敢な荒くれ男たち」のイメージが強い一方、罪もないメキシコ人を標的代わりに射殺するなどの蛮行でも知られる西部開拓時代のスキンヘッド的存在でした。この作品はテキサスをメキシコから解放した彼らの栄光の歴史を描いた「ヒーローもの」で、人気TVシリーズ“ドーソンズ・クリーク”のティーン・アイドル、ジェームズ・バンダー・ビークが主演します。
“パビリオン・オブ・ウーメン”
名作“大地”の著者パール・バック女史の小説を映画化したこの映画は、日清戦争時代の1937年を背景に、ウイレム・デフォー("アフリクション")演じるアメリカ人宣教師とヤン・ルー扮する中国女性との恋物語です。本格的な中国ロケが行われる予定。
“パーフェクト・ストーム”
以前、
ブックマークでご紹介したベストセラー小説をバリー・レビンソン("レインマン")製作、ウォルフギャング・ピーターソン("Uボート")監督、ジョージ・クルーニー主演という豪華メンバーで映画化、嵐に遭遇した漁船の恐怖を生々しく描いています。先月(6月)マサチューセッツ州の小さな漁村グラウスターでクランクインしたところなので、来月(8月)母校マサチューセッツ大学院の同窓会へ出席するついでに、セットを覗(のぞ)いてみるつもりです。
“クルー”
'60年代にキザでならした年老いたギャング仲間が巻き込まれる殺人事件を面白おかしく描いたドラマ。バート・レイノルズ("ブギーナイツ")とリチャード・ドライファス("陽のあたる教室")が、いつも機嫌の悪い2人の老人ギャング・ボスを演じています。製作はドリーム・ワークス、7月9日からフロリダ州南部の避寒地でクランクイン。
“バースデー・ガール”
ニコール・キッドマンがロンドン在住のロシア人メイル・オーダー花嫁役で主演、去年ロンドンで撮影の予定ながら、良人(トム・クルーズ)や子供たちとの長期にわたる別居生活を拒んだキッドマンのため、製作スタジオのミラマックスは急拠スケジュールを調整し、家族同伴で6月からクランクインしました。
“ラスト・プロデューサー”
“ブギーナイツ”で見事なカムバックを果たしたバート・レイノルズが主演監督を兼ねる独立プロ作品。長いキャリアの最後を飾る映画製作へ意欲を燃やす業界ベテランの姿を描いた物語で、レイノルズの他、オスカー男優ロッド・スタイガー("夜の大捜査線")、ジュリア・ロバーツの彼氏としても有名なベンジャミン・ブラット、ローレン・ホリー("ジム・キャリーはMr.ダマー")なども出演しています。
ユニバーサルの巻き返し
“パーフェクト・カップル"、"ブルース・ブラザーズ2000"、"ジョー・ブラックをよろしく"、"ベイブ:都会へ行く"、"アウト・オブ・サイト”などの期待作が立て続けに転け、そこへシルバー会長、ビオンディ・スタジオ総責任者などが辞職すると、昨年度のユニバーサル・スタジオは悲惨な暮を迎えました。そして、今年こそ起死回生を期しながら“バイラス”や“エドTV”が不振で、第1四半期は9,700万ドルの赤字決算となり、今年も先行きが危ぶまれていたところへ、5月4日に封切られた“ハムナプトラ・失われた砂漠の都”はその週末だけでなんと4,400万ドルを稼ぎ出したのです。“スターウォーズ・エピソード1”と公開日が重なることを他のスタジオは敬遠していた中、逆の戦法をとったのが功を奏して“ハムナプトラ・・・”はたった17日間で収益が1億ドルを突破します。調子づいたユニバーサルは、当初6月18日の封切りを予定していたジュリア・ロバーツ主演作“ノッティングヒル”を28日へ変更し、全米2,745館で公開するや8,000万ドルを売り上げる勢いです。このロバーツ演じる映画スターがヒュー・グラント演じるロンドンの古本屋に恋するロマンチック・コメディーは、「今年最高のデート映画」というキャッチフレーズで“スターウォーズ”飽きした映画ファンへアピールする可能性があるでしょう。昨年暮の“パッチ・アダムス”で辛うじて1億3千万ドルのヒットを飛ばしたユニバーサルも、それ以前は1977年度の“ロストワールド”から続けて19本が不発という不名誉な記録を作っているだけ、“ハムナプトラ・・・”の成功は大きかったと思います。その他、エディー・マーフィー主演作“ライフ”が好調で、ヒット気流に乗って上昇を続けたいユニバーサルの期待を担うのが、7月9日封切りのティーン映画“アメリカン・パイ”です。当初7月23日封切り予定のエディー・マーフィー、スティーブ・マーチン共演作“ボーフィンガー”を8月13日へ延期してまで公開スケジュールを組み替えたほどの自信作であり、夏の「スリーパー(大穴)ヒット」候補作といえるかもしれません。また、親会社シーグラム社の社長ブロンフマン会長自らテコ入れした8月6日封切り予定のSF“ミステリー・メン"、8月末封切り予定のブレンダン・フレーザー("ハムナプトラ・・・")主演作“ダドリー・ドゥーライト"、9月中旬封切り予定のケビン・コスナー主演野球映画“フォー・ザ・ラブ・オブ・ザ・ゲーム"、10月初旬封切り予定のデンゼル・ワシントン主演スリラ−“ボーン・コレクター"、11月初旬封切り予定のジム・キャリー主演作“マン・オン・ザ・ムーン"、11月末封切り予定のアーノルド・シュワルツェネッガー主演SF大作“エンド・オブ・デイズ”と、まだまだ続くのです。1995年、松下電器からユニバーサルを買収したシーグラムが、以来、清涼飲料業界からエンターテイメント業界への推移を図っていることは、最近ポリグラムを買収してレコード業界に殴り込みをかけたことでもわかります。そのシーグラムが今までの「続編路線」から一歩進んだ映画作りで、老舗ユニバーサルの再興へ力を注いでいる結果は・・・・・・
「ディズニーがママを殺しちゃった!」
ディズニーの新作アニメ“ターザン”は先月(6月18日)封切られたばかりですが、古くは“バンビ"、"白雪姫"、"シンデレラ"、"ピーターパン”から“フォックス・アンド・ハウンド"、"ポカホンタス"、"ライオン・キング"、"ノートルダムの鐘”など一連の作品を見比べてみると、どれも共通点があります。ターザンの両親は乗っていた船が沈んで亡くなり、他の主人公は親がいないか、いても死んでしまうのです("ノートルダム・・・”のような行方不明という場合は、いないのと変わりません)。親の死を乗り越えて生きてゆくのが人間を含めた動物の宿命であり、親なしで力強く生きるディズニー・アニメの主人公たちは確かに立派です。しかし、その部分だけを見比べてみれば、つい「あまり親を殺さないで!」と、ディズニー企画部のかたがたへお願いしたくなりませんか?
フラワー・チャイルド
“E・T”の愛くるしい子役から見事ハリウッドA級スターに変貌を遂げたドリュー・バリモアは、このところ連続殺人鬼の餌食("スクリーム")、シンデレラ風おとぎ話のヒロイン("エバー・アフター")、ファーストフードのレジ係("ホームフライ")、清純なウェイトレス("ウェッディング・シンガー")、高校キャンパスへ逆戻りするジャーナリスト("25年目のキス")と、幅広い役柄を精力的にノンストップで演じてきました。彼女の製作会社「フラワー・フィルムス」がプロデュースした“25年・・・”は過去13週間で5,300万ドル以上を売り上げており、そろそろ一息つくかと思いきや、売れっ子ドリューの勢いたるや止(とど)まりそうな気配がありません。コロンビア製作で'70年代の人気TVシリーズを映画化したリメイク版“チャーリーズ・エンジェルス”の美女探偵軍団へ抜擢されたのをはじめ、やはりコロンビア製作のペニー・マーシャル監督作“ライディング・カーズ・ウィズ・ボーイズ”では、養子に出した息子を想う若き母親役を演じる予定。その他、現在ドリュー主演作として企画されているのが、不思議な玩具屋で働く魔力を持った女性の活躍する20世紀フォックス作“ミスター・マゴリアムズ・ワンダー・エンポリアム”や、名作“オズの魔法使い”の少女ドロシーの玄孫娘と魔法使いの子孫が対決するワーナーブラザーズ作“サレンダー・ドロシー"、また20代の娘3人と母親の愛情を描いたニューライン作“ミー・アンド・ザ・ガールズ”などです。若手の人気女優としてばかりか、プロデューサーとしても辣腕を発揮するドリューは、今やスタジオの間で引っ張りだこの存在となっています。ハリウッドの人気子役といえば意外と悲惨な結末を辿(たど)ることが多い中、ドラッグや結婚問題を克服して着実にスター街道を歩むドリューの今後へ、ますます期待したいものですね!
(1999年7月1日)
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