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(1999年5月1日)
新企画情報
“シャフト”
"イン・アンド・アウト”や“トゥルーマン・ショー”などの大物プロデューサー、スコット・ルーディン製作によるこのパラマウント作品は、'70年代の「ブラックスプロイテーション・ブーム」の火つけ役となった黒人探偵アクション“シャフト(1971年)”のリメイク版です。リチャード・プライス("クロッカーズ")の書き下ろした新しい脚本を、ジョン・シングルトン("ボーイズン・ザ・フッド")が監督、シャフト役は“スターウォーズ・エピソード1/ファントム・メナス”でも主役の1人、サミュエル・L・ジャクソン("交渉人")が渋く演じ、主題歌はもちろん「低音の魅力」でオスカーを受賞したアイザック・ヘイズが再び登場します。製作費4千万ドルをかけたレトロ調の期待作は8月頃クランクインの予定!
“アンダー・サスピション”
オリジナルはフランス映画“検察官(1981年)”で、名優ジーン・ハックマンが8年前に製作権を獲得しました。今年の暮、カリブ海でクランクインするアメリカ版は、彼が“許されざるもの(1992年)”でも組んだモーガン・フリーマンの共演企画として、いま脚本化が進んでいます。ハックマン演じる知能犯の医師と、フリーマン演じる刑事の追跡ドラマを、ハリウッドを代表する演技派2人はどうこなすのか楽しみです。
“ダンジョンズ&ドラゴンズ”
コンピュータ・ゲームの好きな人ならお馴染みのタイトルどおり、人気絶頂のヒット・ゲームを映画化したもので、製作は“ダイハード・シリーズ”や“リーサル・ウェポン・シリーズ”のアクション・プロデューサー、ジョエル・シルバー。ゲームのキャラクターが繰り広げる冒険と挑戦をテーマに、CGを駆使した“モータル・コンバット”風の大型アクション・アドベンチャーは、チェコのプラハで5月2日にクランクインします。
“ハワード・ヒューズ”
映画プロデューサー、航空業界のパイオニアとして伝説上の大富豪ハワード・ヒューズを描いたこの伝記映画は、以前「ラスト・タイクーン」で紹介したのをご記憶のかたがおられるかもしれません。製作権を持つ大物プロデューサー、アーノン・ミルシャン("L・Aコンフィデンシャル"、"交渉人")の製作会社ニュー・リージェンシーは、異常なまでの潔癖性で隠遁生活を送った晩年のヒューズでなく、若干19歳の時にハリウッドへ乗り込み、20代半ばで“ヘルス・エンジェルス”を監督したエネルギーあふれるハンサムなプレイボーイ、ヒューズの青春時代に焦点を当てた企画を考えているようです。以前からヒューズの大ファンであるレオナルド・ディカプリオが興味を示しているほか、監督はTVシリーズ“マイアミ・バイス”で一世を風靡したビジュアルの名人マイケル・マン("ヒート")が候補にあがっています。
“ハウ・ザ・グリンチ・ストール・クリスマス”
かのスース博士が書いたコミカルな童話を、博士の未亡人から製作権を獲たユニバーサルが映画化。クリスマスを台無しにしようと企てる主人公グリンチ役はオスカー・オミットで同情をかったジム・キャリー、“エドTV”や“身代金”のロン・ハワード監督で、来年の感謝祭休暇を狙い、この夏クランクイン!
“ミッション・トゥー・マーズ”
人類初の火星探検飛行隊の冒険を描いたSFスリラー大作です。第一次火星探検隊は地球へ危険信号を送信した直後、消息を断ち、彼らを救出すべく第二次探検隊が送り込まれ・・・・・・物語もさることながら、最初の監督ゴアー・バービンスキー("マウスハント")は予算や感覚の相違を理由に降り、代わってサスペンスの天才ブライアン・デパルマ監督("ミッション・インポッシブル")が起用されたことで話題騒然の企画です。
“シュリンク・イズ・イン”
精神医(シュリンク)から分析治療を受けるカップルの巻き起こす強盗騒ぎがテーマのロマンチック・コメディー。主役のカップルはヒット作“スクリーム”の共演をきっかけに婚約中のコートニー・コックス(TV映画"フレンズ")とデビッド・アーケット("アットホーム・ウィズ・ウェバーズ")が、それぞれパニック癖のある女流旅行作家と極端な心配性の男性を演じます。リチャード・ベンジャミン("ミルク・マネー")の監督で、つい先日(4月末から)クランクインしました。
“モスマン・プロフェシー”
妻の死がきっかけとなり新聞社を辞職した記者は、ウェスト・バージニア州の田舎町で起こった不可思議な現象を追い始め、宇宙人来訪の事実を突き止めます。1960年代、じっさい起こった現象をジョン・キールという人物が捜査し、これはその実録に基づく“Xファイル”風のSF映画。リチャード・ギア演じる熱血レポーターが、UFOの目撃、突然の超能力や「蛾人間(モスマン)」で悩まされる住人をインタビューしながら謎解きをするサスペンス・ドラマです。
“アート・オブ・ウォー”
来年、続編も製作される“ブレイド”のオリジナルでアクション・ヒーローの地位を確立したウェスリー・スナイプスが、主演以外にプロデューサーも兼ねています。彼の役は世界規模のテロリスト軍団から脅かされる国連の危機を救う正体不明の男で、得意の空手シーンが盛り込まれていることは言うまでもありません。製作費が3千万ドルの大型アクション・スリラー、監督は一連のジャッキー・チェン映画で知られる中国人アクション監督スタンリー・トング("レッド・ブロンクス"、"ポリス・ストーリー3&4")が起用されました。
“エリン・ブロッコビッチ”
クルーズ、フォード、キャリー、トラボルタなどのA級スターと並び、ジュリア・ロバーツが女性で初めて2千万ドルのギャラを稼ぐ話題作。彼女ギャラは共同製作のユニバーサル(国内配給)とソニー(海外配給)が折半するそうです。映画の内容は、環境汚染の被害による訴訟という難しいケースを自力で裁判闘争へ持ち込み、堂々勝利を勝ち取る実在の弁護士秘書を描いた法廷ドラマで、“アウト・オブ・サイト”のスティーブン・ソーダーバーグが監督を務めます。
“ホエン・アイ・フォール・イン・ラブ”
"フォエバー・フレンズ”の原作者アイリス・レイナー・ダートによる新作の映画版で、出版されたばかりの小説のみならず、脚本も彼女自身が書き上げました。頭脳明晰でウィットに富んだ下半身不随のコメディー作家が主役のこの恋愛ドラマは、ユニバーサルの製作で、主役候補として名前があがっているのはロビン・ウィリアムス、ビリー・クリスタル、ニコラス・ケイジなど。
“ブレス・ザ・チャイルド”
キム・ベーシンガー("L・Aコンフィデンシャル")演じる主人公が、麻薬中毒患者の母親から捨てられた甥を妹に代わって育てながら、麻薬の魔力との戦いへ巻き込まれてゆく心理ドラマです。監督はチャック・ラッセル("マスク"、"イレイザー")、カナダのトロントで今月(5月)中旬にクランクインします。
“キーピング・ザ・フェイス”
"アメリカン・ヒストリーX”でオスカー・ノミネートされ、ブラッド・ピットとの共演作“ファイト・クラブ”を撮り終えたばかりの若手実力派エドワード・ノートンが、今度は監督に初挑戦という意欲作。無二の親友であるカトリックの牧師(ノートン)とユダヤ教の牧師("メアリーに首ったけ”のベン・スティラー)が、同じ女性("エドTV”のジェナ・エルフマン)を恋してしまうロマンチック・コメディーで、ニューヨーク・ロケは間もなくクランクインの予定です。
映画の撮影現場といえば、思い浮かぶのは「カット!」の一言です。しかし、同じカットも使い方次第で随分言葉の響きが違ってきます。撮影現場で聞く威勢のよさと比べ、予算の場合は「カット」という言葉を聞いて元気が出る人は少ないでしょう。最近発表された去年(1998年度)の総体的なハリウッド・スタジオの収支決算報告を過去4年間と比較して、まず気がつくのはそれ、つまり製作予算のカットです。また、このデータをとおして、いろいろな面でハリウッドの舞台裏が窺(うかが)えます。
ハリウッド版リストラ?
1995年 1996年 1997年 1998年 米国内総収益 54.9億ドル 59.2億ドル 63.7億ドル 69.5億ドル 劇場チケット売上 12.6億ドル 13.4億ドル 13.9億ドル 14.8億ドル 平均チケット価格 4.35ドル 4.42ドル 4.59ドル 4.70ドル 平均製作予算 3,640万ドル 3,980万ドル 5,340万ドル 5,270万ドル 平均宣伝広告費 1,770万ドル 1,980万ドル 2,220万ドル 2,530万ドル
1997年と比べ、去年の平均製作予算は5,270万ドルと1.3パーセント減少した以外、すべての面で上昇気流といえそうな数値ですが、物価の上昇率など考慮すべき要素はいくつかあります。たとえば、1997年の平均製作予算が前年比で34パーセント上昇したのは、“タイタニック”のメガヒットが大きく貢献しており、その2億ドルを差し引くと事実上は1991年以来「予算のカット」が続いているのです。昨年も“アルマゲドン(写真)"、"ゴジラ”といった映画は膨大な製作予算で平均値をつり上げ、前年度より13パーセント増えた2,530万ドルの宣伝広告費がTVの人気番組でCMスポット価格を高騰させる大きな原因となりました。一方、明るい面を見ると、米国内総収益は9.2パーセント増え、いよいよ70億ドルの大台に近づき、劇場チケットの売上も6.7パーセント増え、過去40年間で最高記録を出すと、アメリカ人の映画好きが加熱していることを物語っています。今年のデータは今のところ去年より8パーセント減少のスランプが囁かれているハリウッド業界とはいえ、5月の“スターウォーズ・エピソード1、ファントム・メナス”が封切られると一気にぶり返すかもしれません。話題のDVDやインターネット業界と組んだ市場戦略は相変わらずの勢いであり、16館以上の映画館からなる総合劇場「メガプレックス」が昨年は2,300館が新しくオープンしているということは、まだまだ「大型スクリーン」で楽しむ映画の魅力が廃れる心配はないようです。それどころか、統計上アメリカ人の28パーセントが最低月1回は映画館へ赴き、こうした常連ファンが入場者総数の83パーセントを占めるほど「映画大好き国」のアメリカ! また、年齢別の人口比は16歳から24歳の49パーセント、25歳から34歳の22パーセント、35歳から44歳の16パーセント、45歳から54歳の15パーセントが平均月1回は映画館に行きます。この日本だと考えられない数値が「映画大国アメリカ」を象徴していると思いませんか!?
1903年にフランスのルミエール兄弟が発明した3D映画は、1950年代の全盛期(65本製作)を経て、今やロサンゼルス、グランドキャニオン、日本の長崎ハウステンボスなどでお馴染みのIMAXが主流となりました。しかし、5月6日のオープンを間近に控えたユニバーサル・スタジオ・ハリウッドの“ターミネイター2/3D”は、これまでの概念を打ち破る画期的な3次元アトラクションと、もっぱらの評判です。一般公開に先駆け、映画関係者を迎えた試乗会(プレミア・ライド)が先日開催され、さっそく体験した結果は・・・・・・
T-2/3D特別プレミア・レポート
内容
順番を待ちながら見る8分間の「イントロ」と、700人収容の劇場で見る12分間の「本編」で構成された3D映画へ、生身のスタントマンの演技や巨大なサイボーグ、風、霧、煙、光などの臨場効果、ローラーコースター顔負けの激動する座席、自動小銃の耳打つ音響といった様々な要素が巧みに組み合わさった世界は究極の「バーチャル・リアルティー」です。登場するのは映画でお馴染みのT1000サイボーグを改良した新型のT1000000、その直立姿勢もさることながら、蜘蛛のような手足を伸ばして観客の視界へ躍り込む3Dの迫力が圧巻といえるでしょう。基本的なコンセプトは、2年前フロリダのユニバーサル・スタジオに作られたものと同じですが、より進んだ最新のハイテクを取り入れる一方、マンモス劇場の外壁へ入場者の緊張感を誘うキャラクターを描いたり、出口ではT−2ストアとレストランが待ちかまえる設計に、一層の商業性を感じさせます。
筋書
現代にタイム・トラベルした正義のターミネイター(シュワルツェネッガー)が、やがては地球軍の指導者となる若き日のジョン(エドワード・ファーロング)を連れ、再びサイボーグが殺戮を繰り広げる未来へタイム・スリップします。そして、人類を絶滅の危機から救うべく、彼らはサイボーグを操る組織スカイネットに戦いを挑むのです。
仕掛け人
"アビス”の特撮効果でオスカーを受賞したジョン・ブルーノ、“ジュラシック・パーク”他の特撮で知られるスタン・ウィンストン、ターミネイター生みの親ジェームス・キャメロン監督の3人が、その才能を結集してこのアトラクションを作り上げました。通常、固定したカメラでなければ撮れないような3D場面を、特殊なコンピュータ・ソフトと重量が200キロもある特注カメラを使い、激しく動きながら焦点のぶれない画期的な映像を生みだします。
映像
フィルムは映画の撮影で標準的な35ミリの代わり65ミリを採用し、フレーム数も秒速24駒を30駒まで増やした結果、普通の映画と比べて4倍の鮮明度が実現しました。CGを受け持ったキャメロンの会社「デジタル・ドメイン」は、“タイタニック”の特撮効果でオスカーを受賞したのが有名です。その技術者の話だと、65ミリで高速フィルムの複雑かつ膨大な撮影データを活かすため、通常より10倍以上の労力をかけなくてはならず、彼らをして一大事業だったとか!
3D
観客が悲鳴をあげながら身体をかわそうとする3Dインパクトは、スクリーンを自在に出入りする登場人物の臨場感がキーポイントでしょう。抵抗なく溶け合う映像とライブの演技は、それなりの苦労があって実現しました。スムーズな演出のため、わざわざ雇われたのは日本でも有名なマジシャン、デビッド・カッパーフィールドで、舞台の下に隠したローラーコースターの線路へハーレイのバイクを取り付け、前代未聞の3D効果を発揮しているのも彼が考案したアイデアの1つです。
特殊効果
凍結したサイボーグT1000000の飛び散るシーンでは、降りかかる破片を避けようと反射的に動き回る観客へ、天井の放射口から冷たい霧が吹きつけられます。また、座席の上の放射口からは、ミニ・ハンター・キラーズと呼ばれる殺人サイボーグの虫が観客を襲うシーンで暴風が吹き出し、48個のスピーカーから鳴り響く爆音と共に臨場感を高める仕掛けです。そのリアルさは、観客が目の前の出来事を現実と錯覚するほど強烈で、クライマックスの数分たるや、表現しようもありません。観客を取り囲む3つのスクリーンは、それぞれ幅150メートル、高さ70メートルの大きさがあり、そこへ6台の映写機を駆使して映し出される映像は、完全に頭を吹っ飛ばします。
なお、今月のヨコチン・ページでお届けする記事(アーティクル)にも登場する“ターミネイター2"、その新しい3Dアトラクションはユニバーサル・スタジオ提供のウェブサイトを覗(のぞ)けば、より雰囲気がおわかりいただけるでしょう。しかし、こればっかりはご自分で醍醐味を味わっていただかない限り、おもしろさの伝えようがありません。製作費6千万ドルを注ぎ込んだ新世紀のアトラクション、ハリウッドへ来る機会があれば、ぜひお見逃しなく!!
(1999年5月1日)
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