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(1999年5月16日)          




働き虫

"パルプ・フィクション”で奇跡のカムバックを果たして以来、休みなしと思えるほど頻繁にスクリーンへ登場し、今や1本で2千万ドルのギャラを稼ぐスーパースターがジョン・トラボルタです。セットでの評判はハリウッド随一といわれるほど、その気どらない性格や人への思いやりが「Aリスト」の中では群を抜いています。前作“民事訴訟”の落ち着いた演技が印象深い彼の新作は、将軍の娘を巡る殺人ミステリーで来月(6月11日)封切りの“将軍の娘"、イギリス人監督サイモン・ウエスト("コン・エアー")によるパラマウント作品です。キャスティングや脚本の変更からクランクインが大幅に遅れたため、ジョージア州サバンナのロケは日本より湿気が高くて虫の多い猛暑の中で行われました、湿地帯での撮影は決して快くありません。臭気漂う沼地を蛇が這い、加えて竜巻や雷などの自然現象と戦いながら撮ったシーンは「汗と熱気の結晶」であると、友人の撮影助監督が漏らしていました。また、暇さえあれば歌ったり踊ったり、かつての主演ミュージカル“グリース”の歌まで披露するトラボルタのサービス精神は、そんな時こそ本領を発揮します。突如として雷雨に襲われ、ビショ濡れのスタッフ300人が避難したのは、かつて奴隷たちが寝起きした綿農園のプランテーション・ハウスです。そこで、パイロットである自分の「飛行武勇伝」をユーモアたっぷりに話し、スタッフの疲れを癒します。そんな彼がトム・クルーズと並ぶ自己開発セミナー「サイエントロジー」の啓蒙者であることは有名です。そのサイエントロジーの創設者でSF作家の故エル・ロン・ハバードが書いた“バトルフィールド・アース”の映画化は、長年トラボルタが暖めてきた企画でした。一時は実現が危ぶまれながら、ようやく独立記念日休暇明け(7月5日)のクランクインまで漕ぎ着けた“バトル・・・”は、現在キャスティングに入っています。登場人物へ巨人や手足の長い奇想天外な宇宙人が混ざっており、オーディションを受ける俳優は演技を試されるばかりでなく竹馬で歩かされたり、かなりユニークなキャスティングだとか!





チーズ!

「100万ドルの微笑み」などといわれるハリウッド・スターのスマイルですが、そのポイントとなる「歯並び」について、大スター御用達で有名なビバリー・ヒルズの歯科医ラリー・ローゼンソールは、こう説きました。「唇はカーテン、歯茎は場面(シーン)、歯は俳優であり、この3つが上手く調和しないと笑顔は映えない」・・・・・・さて、彼から「治療が必要」と診断されたされた大スターの処方箋は、どのような内容なのでしょうか?

トム・クルーズ

前歯数本が唇の中心に位置しておらず、糸切り歯も尖り過ぎ。歯の上からキャップ状の薄い材質をかぶせて整形する「ベニヤ」で前歯を中心へもってゆき、全体的に歯の先端を四角くすれば、彼のセクシーなイメージは一層引き立つ。

メグ・ライアン

笑うと歯茎が丸見えで、個々の歯は小さすぎる。それらを少し大きめの楕円形にすれば歯茎は隠れ、また彼女の楕円形の顔とマッチすることで、よりチャーミングなイメージが。

デンゼル・ワシントン

全体的に重い感じの歯並びと、前歯が大きすぎて、色は不自然なほど白い。ベニヤでサイズをもう少し小さく自然な黄白色にすれば、もっとナチュラルで魅力的な笑顔となる。

普通の人は、なかなか気づかないローゼンソール医師の指摘ですが、今度3人の主演作を見る時は、これらのポイントを意識するとおもしろいかも? ちなみに、クルーズの最新作“アイズ・ワイド・シャット”が7月16日全米公開(8月日本公開)、ライアンは“ユー・ガット・メイル”が日本公開中で12月には“ハンギング・アップ”が全米公開、ワシントンも9月日本公開の“マーシャル・ロー”の後は“ラザラス&ハリケーン”が12月全米公開の予定です。





カムバック

ペニー・マーシャルといえばトム・ハンクスの初期主演作“ビッグ"、実在の女性プロ野球リーグを描いた“プリティ・リーグ"、ロバート・デニーロ主演の感動作“レナードの朝"、ホイットニー・ヒューストンの魅力を活かした“天使の贈りもの”などで鋭い演出技を見せ、今では兄のゲーリー・マーシャル("プリティー・ウーマン")と並ぶ大物ディレクターとして活躍中です。その彼女も、遡ればゲーリーが監督を務める'70年代の代表的TVシリーズ“ハッピー・デイズ”から派生した人気番組“ロバーン&シャーリー”の主演女優として1976年から1983年まで一世を風靡しました。最近、彼女が頭を痛めているのは、自ら温めてきた企画“ジミー・ブラドック物語”へ大手スタジオが示す反応ぶり。大恐慌時代の偉大なボクサー、ブラドックの自伝ドラマを、ペニーとしては無名の新人を起用して製作したい意向なのです。しかし、ギャラが2千万ドル級のスターでなければ受け入れようとしないスタジオ側は、そんな意向を完全に無視したため、嫌気がさした彼女は企画を断念してしまいました。一方、兄のゲーリーが企画している“ロバーン&シャーリー”映画版への主演には意欲を燃やし、役者へ本格的なカムバックを考えているとか。また、ペニーがL・Aレーカーズのファンであることはよく知られており、本拠地フォーラムへ行くと、ジャック・ニコルソンなどとコートサイドで陣取って熱狂的に応援する彼女の姿をよく見かけます。ともあれ、ミミ・リーダー("ピースメーカー"、"ディープ・インパクト")、ベティー・トーマス("ドクター・ドリトル")といった女流監督の台頭に大きく貢献したペニー、今は来年の封切りを目指して'60年代の人気TVシリーズ“タイムトンネル”映画版の準備中です。





オスカー、その後

アカデミー賞を受賞あるいはノミネートされた結果、それまでの方向性がガラリと変わることは珍しくありません。そこで、今年のオスカー・レースを賑わせたスターたちが、今後どのような企画へ主演する予定なのか探ってみましょう。


最優秀主演男優


大番狂わせで受賞し、その熱いエネルギーがアカデミー受賞式の話題をさらったロベルト・ベニーニは、またまた主演脚本監督を務める次作のアイデアを練り始めています。休暇宣言をしたイギリス人俳優イアン・マッケレンと対照的なのが多忙をきわめるトム・ハンクスで、12月にはホラー神様スティーブン・キング原作、フランク・ダラボント監督("ショーシャンクの空に")作“グリーン・マイル”が封切られる他、ここしばらくはロバート・ゼメキス監督("フォレスト・ガンプ/一期一会")と再び組んだコメディー“キャスト・アウェイ”の撮影中。アカデミー受賞式へ髭面で登場したのも、この映画で孤島に難破した男を演じているためです。その後、“トイ・ストーリー2”の声優や、マーチン・スコセッシ監督作“ディーノ”で生前のディーン・マーチンを演じるなど、ぎっしりスケジュールが詰まっています。また、生涯功労オスカーを受賞したエリア・カザン監督へ拍手さえしようとしなかったニック・ノルティーは、ブルース・ウィルスとの共演作“ブレックファスト・オブ・チャンピオンズ”で女装を好む中古車セールスマンを演じる他、競馬がテーマのドラマ“シンパティコ”はジェフ・ブリッジズ("ビッグ・リボウスキー")との共演です。そして、この夏封切りの“ファイト・クラブ”でブラッド・ピットと共演するエドワード・ノートンは、初の監督作“キーピング・ザ・フェイス”の準備に入っています。

最優秀主演女優


最優秀主演女優賞の受賞で一躍ハリウッドのトップ女優となったグウィネス・パルトロウは、“イングリッシュ・ペイシェント”のアンソニー・ミンゲラ監督作“タレンティド・ミスター・リプリー”がこの秋公開です。共演はマット・デイモンと、オスカーを競った友人のケイト・ブランシェット。また、かつての婚約者ブラッド・ピットと共演するはずだった“デュエット”が最近撮り終わったばかりで、こちらは二転三転の末、新人スコット・スピードマンがピットの代役として起用されました。監督はオスカー・ナイトでグウィネスをエスコートした父親のブルース・パルトローです。そして、8月4日から15日までは有名なマサチューセッツ州ウィリアムスタウン・シアター・フェスティバルで上演されるシェイクスピア劇“お気に召すまま”のロザリン役も決まっています。一方、ノミネートでオーストラリア演劇界の名を高めたのが上記のケイト・ブランシェット、“タレンティド・・・”の他、飛行管制センターをめぐるブラック・コメディー“プッシング・ティン”ではビリー・ボブ・ソーントン、ジョン・キューサック("真夜中のサバナ")と共演しました。また、7月封切りのオスカー・ワイルド原作“アイデアル・ハズバンド”でミニ・ドライバー、ルーパート・エベレット("ベストフレンズ・ウェディング")と共演します。グウィネスが受賞スピーチで「不世出の大女優」と称えたメリル・ストリープは、この夏封切られる“50バイオリン”でバイオリン教師を演じる以外、これといった予定がなく、受賞者グウィネスを酷評した「負け惜しみコメント」で評判を落としたフェルナンダ・モンテネグロは、故郷ブラジルで舞台芝居の稽古中です。そして、イギリス人女優エミリー・ワトソンは、ティム・ロビンス監督("デッドマン・ウォーキング")による、1930年代が舞台の“クレイドル・ウィル・ロック”へ出演するほか、この秋封切られるベストセラー小説“アンジェラの灰”の映画化版では、不幸な母親アンジェラを演じます。

最優秀監督

日本のロケハンまで敢行した“メモワール・オブ・ザ・ゲイシャ”や、長年暖めてきた航空界のパイオニア、チャールズ・リンドバーグの自伝映画と、延期された企画が目立つスティーブン・スピルバーグ監督は、いよいよトム・クルーズ主演作“マイノリティー・レポート”へ本腰を入れ始めました。2080年が舞台となったこの大型SFスリラーは、ハリウッドの2大勢力初顔合わせで話題騒然。また、数々のハリウッド・コメディーを検討中のロベルト・ベニーニ以外、受賞式に顔を見せなかったテレンス・マリック、ピーター・ウィアー、ジョン・マッデンといったノミネート監督たちは、敗戦の傷を癒しているところなのか、鳴りを潜めたままです。




「マトリックス」とは?

4月の公開興行収益が3,400万ドルと、先月末“エントラップメント”に追い抜かれるまでは本年度の最高記録を維持してきたのが“マトリックス”です。「マトリックスとは何?」と聞かれ、うまく説明できないほど斬新な内容がSFアクションの新境地を開いた感さえあり、観客の度肝を抜く特撮でいわば「経験する映画」という新しいジャンルを生みだしました。また、当初は5月の封切り予定を“スターウォーズ・エピソード1、ファントム・メナス”との鉢合わせを避けるため1ケ月早めたことも、成功の理由かもしれません。主演のキアヌ・リーブスと、バル・キルマーが降りて代わりに抜擢された共演者ローレンス・フィッシュバーン("イベント・ホライゾン")の存在感や、香港武道映画の殺陣(たて)師を起用した空中バトルなどは、かつてない感覚で観客の視覚へ迫ってきます。しかし、これらのシーンが完成するまでには、なみなみならぬ苦労があったのです。1997年秋、出演者はオーストラリアでオリンピック強化訓練並の「戦闘キャンプ」へ参加するのですが、当時キアヌはヘルニアの手術を受けたばかりでした。にもかかわらず、この企画を5年間温めてきた監督ワチャウスキー兄弟("バウンド")の熱意に打たれた彼が、首かせ(ギブス)を着けたまま2ケ月間、ロープで宙吊りのガン・ファイトや、無重力状態のファイト・シーンなど過酷なトレーニングへ精を出し、あざだらけでキャンプの全行程を終えます。クランクイン当初は日増しに膨れ上がる特撮効果予算へ顔をしかめていたワーナーブラザーズ側も、間もなくワチャウスキー兄弟が撮影場面のダイジェスト版を見せてからは、200カットを予定していた特撮場面を415カットに増やし、90日の撮影予定期間を118日まで延長するほど気合いの入れようでした。予告編で特に凄いのが、身体を後ろへのけぞって銃弾を避けるキアヌのアクション・シーンでしょう。この場面をイメージどおりリアルに表現するため、なんと2年を費やしたとか!・・・・・・まず、最初のステップは後方へ倒れる主人公(キアヌ)をスタント・ダブルの演技でビデオ録画し、それをコンピュータにインプットした上で、3DイメージおよびCGI(つまりコンピュータで作った)アニメとして仕上げます。続いて、あらゆる角度から狙える120台のスチール・カメラを積んだ大型クレーンと、ムービー・カメラ2台で囲まれた撮影スタジオで、グリーン・スクリーンを背景にキアヌ自身がスタント用のマットへ倒れるシーンの入念な撮影です。これをコンピュータで先ほどのCGIアニメと重ねた次は、背景として屋上のバーチャル・イメージを挿入し、さらに、のけぞったキアヌの横をかすめる弾道がデジタル・アニメーションで書き加えられて仕上がります。かかった費用は75万ドルといえば、このハイテクを駆使した作業がどれだけ大がかりであったかおわかりでしょう。数学用語の「行列/マトリックス」または「母胎」という意味のタイトルからして不可思議なSF大作、封切り以来、1億4千万ドルの全米興行収益をあげ、なおも快進撃中です。自信を持ってお薦めする「SFアクションの金字塔」ともいうべき“メイトリックス”を、ぜひお見逃しなく!!




(1999年5月16日)

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