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(1999年3月16日)          




【特集その1】

'98年度オスカー・レース先行馬

2月9日にアカデミー賞候補が発表された結果、今年はそれぞれ13部門と11部門でノミネートされた“恋に落ちたシェイクスピア”と“プライベート・ライアン”が一騎打ちの様相です。いよいよ数日後へ迫るアカデミー授賞式を記念して、今回は前回の“オスカー情報"、"ゴールデン・ルール”に続く3つの特集記事をお届けしましょう。まず最初が「ハリウッド最前線」恒例のオスカー・レース予想、さあ今年も昨年度同様100パーセント的中するかどうか!?

プライベート・
ライアン
スティーブン・
スピルバーグ
イアン・
マッケレン
グウィネス・
パルトロー

作品賞

戦争映画の一騎打ちと目されていたこの部門ながら、13部門でノミネートされた“恋に落ちたシェイクスピア”が奮闘し、行方は混沌としてきました。もっとも、芸術性が勝った“シン・レッド・ライン”や、これまでの統計からオスカーへ不向きの「外国語」で「コメディー」というダブル・ハンディを背負った“ライフ・イズ・ビューティフル”は、ノミネートそのものが勝利といえるかもしれません。最後は自由のために戦ったヒーローたちのドラマ性が、コメディー嫌いのアカデミーの体質も手伝い、栄冠を勝ち取りそうな気配です。

    本命馬:“プライベート・ライアン
    対抗馬:恋に落ちたシェイクスピア
    大穴馬:“エリザベス

監督賞

感動のストーリーテラーとして、また驚異的な興行収益でも群を抜くスピルバーグ、そして老若男女を問わず人気を博すヒップなコメディーの演出で手腕を発揮したジョン・マダンに加え、作品賞からオミットされた秀作“トルゥーマン・ショー”でジム・キャリーの繊細な演技を引き出し、独自の世界を描きあげたピーター・ウィアーの接戦となります。投票の際はアカデミー・メンバーからの尊敬度が決め手となるでしょう。

    本命馬:スティーブン・スピルバーグ("プライベート・ライアン")
    対抗馬:ジョン・マッデン("恋に落ちたシェイクスピア")
    大穴馬:ピーター・ウィアー("トゥルーマン・ショー")

主演男優賞

フランケンシュタイン映画で有名な実在のゲイ監督を描いた独立プロ作品の主演が光るイアン・マッケレン、魂の美しさを独自のスタイルで表現したトム・ハンクス、人生の闇を見てしまった人間の心の襞を演じて好評のニック・ノルティー、その3人へ票は集まると思います。ロベルト・ベニーニの場合“ライフ・・・”がコメディーであり、エドワード・ノートンは“アメリカン・ヒストリーX”の人種差別主義者という役柄がマイナスになりそうです。ジム・キャリー("トゥルーマン・ショー")とジョン・トラボルタ("民事訴訟")の完全オミットは意外でしたが、これは演技部門のノミネートへ投票する俳優仲間が2億ドルスターに対して抱く反発心の現われかもしれません。

    本命馬:イアン・マッケレン("ゴッズ&モンスターズ")
    対抗馬:トム・ハンクス("プライベート・ライアン")
    大穴馬:エドワード・ノートン("アメリカン・ヒストリーX")

主演女優賞

人間味溢れる演技でエリザベス一世の冷酷なイメージを変えたケイト・ブランシェット、不幸な最期を送る天才チェリスト役が印象深いエミリー・ワトソン、シェークスピアを恋の虜にしてしまう演技も華麗なグウィネス・パルトローの三つ巴の戦いとなり、どう展開するかは微妙です。そこへ、珠玉のブラジル映画“セントラル・ステーション”での渋さが光るフェルナンダ・モンテネグロや、“ワン・トゥルー・シング”で演じた臨死の母親役も素晴らしいプロ中のプロ、メリル・ストリープが小差で追随しています。

    本命馬:グウィネス・パルトロー("恋に落ちたシェイクスピア")
    対抗馬:ケイト・ブランシェット("エリザベス")
    大穴馬:エミリー・ワトソン("ヒラリー&ジャッキー)





【特集その2】

オスカー、影のドラマ

主演のカール・マルデン(左)と
ビビアン・リー(中央)を相手に
"欲望という名の電車”を演出
中のエリア・カザン監督(右) 
本番を目前に、ここしばらく各賞のレース展開や女優陣の華やかなデザイナー・ドレスなどが、ますます話題を集める一方、映画業界では1つの事件がもっぱら論議の的となってきました。というのは、映画界へ生涯功労した者に対する“ライフタイム・アチーブメント賞”が、今年は89歳の巨匠エリア・カザン監督へ授与されると決まったことに端を発します。冷戦最中の1952年、アメリカ政府が「赤狩り」の証人として下院反米活動調査委員会へ召還した人間は多く、その1人がギリシャ系アメリカ人のカザンなのです。当時、共産主義者の仲間を名指しで公表した暗い過去故、以後、アカデミー監督賞受賞作“波止場(1954年)”や“欲望という名の電車(1951年)”など数々の名作を世に出しながら、ハリウッドからは“裏切り者”の烙印を押され、たえず冷たい視線を浴び続けてきました。彼はまた、前述の作品以外、やはり監督賞でオスカーを射止めた“紳士協定(1947年)"、"ベビイドール(1956年)"、"草原の輝き(1961年)”と、その時代タブー視されていたテーマへ焦点を当て、現実感のある作風を初めてハリウッドに持ち込んだ監督としても知られています。演出が厳しく非人情とさえ言われるカザンは、“ブルックリン横町(1945年)”で子供が泣くシーンを撮るため13歳の子役を脅かし、その子役ペギー・アン・ガーナーは当時最年少のアカデミー最優秀子役賞に輝きました。また、不朽の名作“エデンの東(1955年)”で犬猿の親子を撮るため主演ジェームス・ディーン独特の「ボソボソ喋り」が不満な父親役レイモンド・マッセーを焚きつけ、2人を険悪な仲にするなど、いい作品のためなら自分は悪役もいとわない情熱家です。1945年から1963年の18年間、彼の映画へ出演した俳優の、なんと24人がオスカーにノミネートされ、そのうち受賞者は9人います。今年、演出家としての金字塔を打ち立てた伝説的な監督である彼の功労賞が決まったのは、未だ根強い反感を持つアカデミー・メンバーへ、“波止場”で最優秀助演男優賞を受賞し、“欲望・・・”でもノミネートされた名優カール・マルデンの強力なアピール・キャンペーンが功を奏したからです。当日、壇上でカザンは「47年来の詫び」を入れるかどうか、そして満場の観客が恒例の「拍手喝采(スタンディング・オベーション)」を贈るかどうか、業界ばかりか視聴者も興味津々のていで見守っています。ただ、1988年に出版された自伝を見る限り、「赤狩り」の恐怖や証言したことへの罪悪感に言及するだけで、ハリウッドを追われた同業の犠牲者へはいっさい謝罪せずじまいの前歴から、受賞のスピーチも「誤り」のゼスチャーが見られそうにはありません。また、アカデミー側が賞のプレゼンターで「ハリウッド左翼」として名高いロバート・デ・ニーロ、マーチン・スコセッシ監督コンビを起用したのは、当日予想される根強い反カザン感情を抑える意向があったからです。影のドラマはどのようなエンディングを迎えるのか、なにとぞ21日のオスカー・ナイトをお見逃しなく!





【特集その3】

オスカー模様

「オスカー特集」最後のトピックは、3月21日の本番を控えた候補作や候補俳優にまつわる裏話です。


"ライフ・イズ・ビューティフル”(イタリア)

外国映画として初の7部門ノミネートは、1982年度の“Uボート(ドイツ)”と翌1983年度の“ファニーとアレクサンデル(スウェーデン)”がそれぞれ6部門ノミネートの記録を更新しました。また、同じ年に最優秀外国映画と最優秀作品賞の両方でノミネートされた外国映画としてはアカデミー史上2作目です。1969年度の“Z(フランス、アルジェリアの共作)”がダブル・ノミネートされた時は、最優秀外国映画賞のみを受賞しています。

ロベルト・ベニーニ("ライフ・イズ・ビューティフル")

主演監督脚本と1人3役の全部門ノミネートは“レッズ(1981年)”でのウォーレン・ビューティー以来の快挙です。

メリル・ストリープ("ワン・トゥルー・シング")

今回11回目のノミネート数はジャック・ニコルソンと並ぶ史上2番目の記録で、キャサリン・ヘップバーンの12回に迫っています。もし彼女が3度目の主演オスカーを射止めた場合、イングリッド・バーグマン、ウォルター・ブレナン、ジャック・ニコルソンと並ぶ偉業達成となり、最高記録はやはり4回受賞したヘップバーンです。

フェルナンダ・モンテネグロ("セントラル・ステーション")かロベルト・ベニーニ(ライフ・・・)

どちらか1人が主演賞を受賞した場合、外国映画の主演俳優では1961年度の“ふたりの女(イタリア)”でソフィア・ローレンが受賞して以来の栄誉となります。

ケイト・ブランシェット("エリザベス")かジュディ・デンチ("恋に落ちたシェイクスピア")

別の映画で同じエリザベス女王1世を演じた2人が主演女優賞と助演女優賞にノミネートされた珍しいケースです。




ハイテク・ワークアウト

ハリウッド・スター御用達のトレンディーなスポーツ・ジムが数あるL・Aで、とりわけ話題の“クランチ・ジム”は以前ご紹介したのを憶えておられるかたがおられるかもしれません。創設からわずか2年の現在、ニコラス・ケイジ、エリザベス・シュー、ベン・アフレック("恋に落ちたシェイクスピア")、レニー・ゼルウィガー("エージェント")といったスターお気に入りの溜まり場で、先日、新しい企画の準備中に知り合ったブレンダン・フレージャー("ジャングル・ジョージ")から誘われ、サンセット大通り8000番地のクランチをふらりと訪れました。ハイテク感覚のジムは、中へ入るやインテリアのカッコよさと運動に励む人々の真剣さがまず目を引きます。スターの溜まり場というイメージからはほど遠い雰囲気の中、パーソナル・トレイナーとマン・ツー・マンで朝を流すオスカー俳優ケイジの姿も見え、映画の印象より遙かに逞しい肉体から発散する空気がエネルギッシュです。ユニークなのは、お馴染みのライフサイクル(固定自転車)のハンドル上部へ小型コンピュータが設置され、トレーニングとネットサーフを同時にできるシステムや、少人数用の特別シミュレーション・チェンバーでは、標高1,800メートルの環境を設定したトレーニングなどが体験できます(かなりの体力は必要ですが)。数あるエキササイズ・クラスはそれぞれ画期的なもので、人気があるアフロ・ブラジリアン・クラスやゴスペル・エアロビック・クラスともなれば、生(ライブ)のドラム演奏や合唱隊の教会音楽を使ったハードな1時間です。ワークアウトの後は、当然ジュース・バーなどが華やかな社交場と化し、とくに挑発的で官能的なシャワー・ルームは、広い廊下から中がぼんやり見えるように設計されています。曇りガラスで仕切った壁へ映る妖しげな影(シルエット)・・・・・・ハリウッドという場所柄、“to see and be seen (見て見られるため)”やって来る人は多いのかもしれませんね!?





ルネッサンス・マン

いろいろこなす器用な人のことを「ジャック・オブ・オール・トレード」といいますが、1人で映画の製作、監督、主演、脚本など幅広く活躍する人をハリウッドでは「いくつも帽子をかぶる人」、「ガイ・ウィズ・メニー・ハッツ」とも呼び、その代表例がスティーブ・マーチンです。これまで“愛しのロクサーヌ"、"L・Aストーリー/恋が降る街"、"サボテン・ブラザーズ”などの主演ヒット作は脚本を書いており、役者としてもコメディーばかりでなく“花嫁のパパ"、"バックマン家の人々"、"スパニッシュ・プリズナー”などで繊細な演技を披露しています。現在、TVシリーズのクリエーター・プロデューサーという「新しい帽子」をかぶったマーチンが意欲を燃やすコメディー企画“アクティング・クラス”は、大手ネットNBCの製作で俳優を目指すニューヨークの20代の若者たちをコミカルに描いたシリーズ番組です。マーチンの指揮の下、シリーズ化を決定するための試作を兼ねたパイロット(シリーズ第1弾)が製作へ入っている他、1960年のヒット作“エンターテイナー”のリメイク版では、タイトル通り、ラスベガスのエンターテイナー役を演じる予定ですが、前述のTV企画のため、こちらのクランクインは来年末まで延期されました。一方、今月末(3月26日)封切りが予定されている“オウト・オブ・タウナーズ”のリメイクでは、ゴールディー・ホーン("ファーストワイフ・クラブ")と都会へ出て戸惑う田舎者のカップルを演じ、7月に封切られるフランク・オズ("イン・アンド・アウト")監督作“ボーフィンガー”は、エディー・マーフィー演じるアクション・スーパー・スターを隠し撮りする映画プロデューサー志望の変わり者役のマーチンが脚本も書いています。まさしく「七変化」の活躍は現代の“ルネッサンス・マン"、TVスクリーンで彼のクリエイティブな「業師」ぶりが、どこまで発揮されるか楽しみです。


巨匠スタンリー・キューブリックの冥福を祈る

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(1999年3月16日)

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